14話
テクラとの文通でのやり取も数を重ね、少しずつお互いの事もわかるようになってきた。
最近知ったのは、テクラは4月生まれで図書室へも時々足を運ぶと言う情報だ。
マリアも同じ4月生まれで親近感が増し、図書館ですれ違っているかもしれない事を想像するのがとてもロマンティックで楽しい。
テクラは筆まめなのか、最近は返信後5日ほどでテクラからの返信が届く。
文通が始まった頃のマリアのテンションはとても高かったが、今はだいぶ落ち着き穏やかな気持ちでやり取りができている。
『リアへ
最近は暑くなってきたけれど、体調に変わりない?
わたしは暑さに少し参っているよ。
そう言えばリアはどんな食べ物が好き?
この間、歩いていると氷菓子を見てリアは好きな・・・などと考えていました。
私は時々無性に甘い物食べたくなるけれど、男一人でお店になかなか入れなくて、我慢することが多いかな。
学園の周辺で男が入ってもおかしくなさそうなお店があったら教えてください。
法陣局の応募も締め切られて、後は1ヶ月半後の試験を待つばかり。
今、専門分野の試験部分の詰め込みを頑張っているけれど、既に頭がパンクしそう。
でも、目標のために珍しく頑張るよ。
もし、リアが嫌でなければ、私が合格したら直接おめでとうと言ってほしい。
そして、甘い物一緒に食べに行ってほしいです。
テクラ』
『テクラへ
私も暑いのは苦手!でも、楽しい事はたくさんあるよね。
海とか行けば楽しいだろうなと思いながら、毎年行ってないです。
私も甘い物大好きだよ!もちろん、氷菓子も。
フルーツのシロップが甘くて、冷たくて美味しいよね。だけど、あの行列に並ぶ事が億劫でなかなか腰は重いです。
男性の入りやすそうなお店なら、オフィス街にある煉瓦造りのコーヒショップはどうかな?
あそこは珈琲にこだわっているらしくて、男性客が多いけど珈琲に合うスイーツを手作りしていて、女の子からも隠れた人気があるよ。
私は行った事ないけど、友達が教えてくれました。
詰め込みも大詰め、私は応援することしかできないけど頑張って。
この間、問題集を開いてみたけど私には難解でした。
あの問題を一問でも解けるのがすごいね。
もちろん、私も直接おめでとうと伝えたいな。
その時は、女の子の多い入りにくそうなお店に行けたらいいね。
私が一緒なら入りにくく無いでしょ?
返事も勉強の息抜きのときとかでいいからね?
全く返信が来ないと寂しいけど、今が大切な時なのは知ってるし、無理しないでください。
リア』
マリアはいつも通り、返信が来た3日後の朝にマッチングボードの横にあるポストに投函した。
ここ最近は、ゼフィサスも忙しいみたいで姿を見ることは減っていた。
マリアの図書当番の時には図書室へとやってきて、何か一生懸命勉強している様だった。
ゼフィサスの進路をマリアは聞いていないが、優秀だと聞いているのでそれなりに競争率の高そうな職種を目指しているのだろう。
知り合いがとは言っていたが、医療魔法の本を読んでいたのでそっちの分野かもしれない。
図書室が閉まってから、マリアは片付けがある。
それが終わって鍵を閉めると、本を片手に待っていたゼフィサスと一緒に帰る・・・と言う流れが、できつつあった。
もちろん、ゼフィサスも忙しい3年のためマリアの当番の日に必ず来ると言うわけではないが、なぜだかマリアが当番の日に高確率でいるのだ。
本人はたまたまだと言っていたが、そんな偶然があるだろうか?
「せんぱぁ~い!」
手紙を投函後、速足で講義室は向かっていると、透き通った声が廊下に響く。
とても大きい声だったため、マリアも思わず立止まって辺りを見回した。
すると、見覚えのある金髪の美少女がマリアの方に猪突猛進してきた。
ぶつかる一歩手前で、その美少女は止まる。
マリアは自分のことだと思わず少々驚きはしたが、相手に見覚えがあり同じ委員会の後輩だったため、まったくの初対面というわけでは無い相手であった。
しかし、相手の雰囲気が友好的な感じでは無く、マリアは彼女に呼び止められる理由の心当たりは1つしか思い浮かばなかった。
「シルヴィアさん?おはようございます」
「先輩!」
礼儀は必要だろう。
マリアは挨拶をしたがそれに対する挨拶はなく、か弱そうな見た目とは反した大きな声が響く。
「は・・・はい?」
「なぜ、ゼフ先輩と一緒に時々帰っているのですか!?」
「ちょ、声が大きいよ」
知り合いの名前が出て、予想が当たっていた事が直ぐに分かった。
(当たってほしく無かったな・・・)
校内ではそれなりに有名なゼフィサスの名前をこんな廊下のど真ん中で、周りに注目してください!と言うような大声で出すあたり、シルヴィアは肝が据わっているのだろう。
まだ、愛称を知らない人の方が多いためそこだけは救いであるが、マリアがやんわりと注意してもシルヴィアは止まらない。
「ゼフ先輩に相応しいのは私!だから、ゼフ先輩に近寄らないでください!」
どこか演技がかった口調に、シルヴィアの目は微かに潤んでいる。
「落ち着いて?ちゃんと話は聞くから・・・」
「そうやって逃げるんでしょ!?」
「逃げないよ、ただ此処は人目がありすぎるから・・・」
マリアは落ち着かせようと、ゆっくりと落ち着いた口調で喋りかける。
「中庭にでも行こう。そこでゆっくり話を聞くから・・・ね?」
マリアは人目を気にするあまりそう提案した
すると、シルヴィアの悲しそうな表情が待っていました!とばかりに華やぐ。
「なら、今日の放課後に中庭の池のほとりのガゼボに来てもらえますか?」
(やられた・・・)
マリアからの提案のため、承諾するしかない。
廊下でマリア達の様子を見ていた人々はマリアに対し同情の表情を向けてくる者、好奇な目で見てくる者、嫉妬からくる憎しみを向けてくる者など様々だ。
逆にシルヴィアにたいして同情の目で見てくる者もいるあたり、人の心のうちは本当に計り知れない。
そして、野次馬は野次馬でしかなく、仲裁に入ってくる者もいない。
トラブルに巻き込まれるのは誰だって嫌だろう。
マリアだって逆の立場の場合は然りである。
「わかった」
「もちろん、一人で来てくださいね~。約束破るのも無しですよ」
マリアはこの場で承諾した。
拒否でもしようものなら大声で泣き出していたかもしれない。
シルヴィアの思惑や性格などなにも分からないマリアは1日、憂鬱な一日を過ごすこととなった。
シルヴィアが消えるとマリアも仕方なく、気が乗らないまま講義室へと向かう。




