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転生者にも事情がある  作者: 蜜柑缶


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75   学院生活1

 リックスは一身上の都合により里に帰ることになり、アデミンストには連れて行けなかった。ミラベルは大変残念がっていたが当然、無理だ。

 私はスラットリー夫妻に別れの挨拶をし、馬車に乗り込んだ。馬車は森の横の街道を走りアデミンストに向かった。

 色々な事があったけど、ちょっと楽しかったな。そう思いながら馬車の窓から外を眺めていると「フェアリーネ様ぁ、お元気でー!」と叫ぶ声が聞こえてきた。


「え?!なにあれ!見て、ミラベル!みんなが!」


 そこには開拓に携わった騎士や平民達が街道に並んで手を振り、見送ってくれた。

 嘘みたい!カワイイ!こんな事本当にあるの?


「みんなぁ!元気でねぇ!」


 私は貴族の令嬢としては異例ながら、はしたなくも窓から身を乗りだし手を振った。その拍子に被っていたベールが飛ばされた。


「うぉぉぉぉ!フェアリーネ様のお顔がぁ!」

「ふぉぉぉ!お美しいぃぃ!」


 あわわ、恥ず、恥ずかしい。でも……


「お元気で〜!」


 私は片手を頬にあて熱い顔を隠しながらもう片方で手を振り返した。

 なんか青春だなぁ……映画みたい。








 アデミンスト近くの別館に到着した。


「フェアリーネ様、ご両親へのご帰還のご挨拶はどうされますか?」

「そうよね、髪を切った言い訳も考えないとね」


 いつもは別館から出る事は無く、アチラから会いに来てくれていたが私としてはせめて髪が伸びるまで会いたくないがそうも行かないだろう。

 冬の間ずっとスラットリー子爵家にいたし、そこで現場を監督していた事は黙っているとして何を話せば良いのか。

 私が悩んでいるとミラベルが慌てて両親が訪ねて来たと報告してきた。

 待ってまだ何の対策も考えてないんだけど!


「お帰り、フェアリーネ……一体何があったんだ!」


 初っ端からお父様が真っ青になって駆け寄り私の髪を震える手で触った。お母様も顔色を悪くしショックを受けている様子だ。


「これは一体どういう事だ!ミラベル!お前が側にいながらなんて事を!」


 お父様は怒りMAXでミラベルに詰め寄った。


「申し訳ございません」

「お父様、ミラベルは関係無いんです。わたくしが……勝手に切ってしまって……」

「勝手に?どう言う事だ?」


 お父様は怒りがおさまらない様子で私を見る。まだ言い訳は考えてなかった。

 どうしよう~


「えぇっと、か、か、髪の毛がぁ」

「髪の毛が?」

「し、し、白いせいで」

「……それで?」


 お父様は私が白い髪の事を言い出しちょっと複雑な顔をする。ごめんね、私は別に気にしてないんだけど言い訳に利用するよ。


「髪が白いせいで学院にも通えず仕事もさせて貰えないのなら切ってしまえと思ったの」


 一気に言い切り反応を見る。みんな固まってるよ。


「まぁ……」


 シンとした室内で勇気ある第一声はお母様だった。


「そんなに学院に行きたかったのですの?」


 お母様はとっても悲しそうに顔を曇らせる。


「そそ、そうなんです。この間、お父様に学院行きを咎められちょっと自暴自棄になってしまって……」


 私はお母様の助け舟にドンと乗っかり髪をいじいじしながら俯き悲しそうな顔をし上目遣いにお父様を見る。


「ごめんなさい……わたくし子供の様な事をしてしまって……学院に行ったり、お仕事の様な事をしたりして、わたくしがここにいても良いのだと実感出来て嬉しかったのです」

「フェアリーネ……何を言う。お前は私の素晴らしい娘だよ」


 お父様は悲しそうに私の手をとりそのキラキラしいかんばせで見つめてくる。

 久しぶりで目が慣れないよ。まぶしぃー

 私は眩しさで目を瞬かせた。


「でも、お父様はわたくしを人目に晒すのが嫌なのでしょう?」

「それはお前を守るためだよ」

「恥ずかしいのでは無いのですか?わたくしがお父様の娘であることが……」


 私がプッツリと本心ではないかと思われる事をつく。

 ここは貴族社会だ。体裁がすべてなところもある。まして辺境伯程の高位でありながらその娘が呪われているなど耐えられないのではないだろうか?


「何を言い出すのだ!」


 お父様は驚くほどの声を上げ怒りをあらわにする。


「え?」


 予想外の反応に私が驚く。


「誰かがそのような事をお前にいったのかい?」

「いいえ、誰も」


 私は慌てて首をブンブン振る。お父様の怒りは誤解された人が死んでしまう勢いだった。


「ではお前だけの考えなのかい?」


 今度は探るように、疑いの眼差しを向けてくる。


「そうですわ。だってお父様はわたくしをここから、学院から遠ざける為にスラットリー子爵家にお預けになったのでしょう。もう、戻れないのかと思いました……」


 これは半分本当に思ってた。絶対に戻るつもりだったけど。

 私の言葉にお父様はガックリと項垂れた。


「お前にそんな思いをさせていたなんて……私は父親失格だな……」


 おぅ、そんなに落ち込まないで。


「お父様に悲しい思いをさせるつもりはなかったのです。ごめんなさい」


 ごめん、ちょっと言い過ぎたよ。


「インファント様、フェアリーネを学院に通わせてあげれば良いのではないですか?こんなに学びたがっておりますわ。素晴らしい事ではないですか」


 お母様がいっきに畳み込んできた。


「本当ですの?お父様、よろしいのですか?わたくし嬉しい!頑張りますわ。

 絶対にお父様の自慢の娘として恥ずかしくない成績を修めてみせますわ。ミラベル、勉強の用意をして、もうすぐ第三試験ですもの」


 息つく間もなく大喜びの私にお父様は駄目だとは言えなかったようだ。 




 帰り際にお母様が私に一通の手紙を渡してきた。


「これ、実家のお兄様から届きましたの」


 お母様は私を抱きしめコソッと耳元で囁く。


「偉くお気に召されたようで、これから大変ね」


 そう言って帰って行った。

 なに言ってるんだか。アレに気に入られたのは顔だけでしょ。


 私は自室に戻って手紙を開封する。

 そこには私が滞在中に作ったお菓子をスラットリー家で販売する事への許可取りだった。私はまだ商売をする資格が取れていないので内々に売上に見合った金額を支払うというものだ。

 あそこの料理人、大人しそうな顔をして実はガッツリ見てたのね。

 勝手に販売されたとしてもスラットリー家が知らぬ存ぜぬで通そうと思えば出来たかもしれないが、私からまだ何か引っ張れると思っての先行投資だろう。

 ま、いっか。私個人の財産が増えればやれる事もふえるかも。幸い今から経理コースを受けるのだし自分で取引が出来るようになれば公に商売が出来る。

 その時頼りになるのは成功している先輩のスラットリーのアドバイスだ。お父様じゃ頼りない。


 やっと堂々と学院に通えるのだ。この際薬学コースもドサクサに紛れて取ってしまおう。カイリン先生が融通をきかせてくれると言っていたから頼んでみよう……多分、めっちゃ働かされるだろうけど。エイダンにも会えるだろうし、今から楽しみだな。



 数日後、経理コースの第三試験を受ける為に身支度をする。

 私の髪は顎ラインのボブだがベールが取れにくいようにハーフアップに髪を結い、そこへピンでベールを留め顔の部分をめくり上げても後ろへ垂れ下がりよく見ないと髪が短い事は分からないようにした。万が一ベールがめくれた時の予防措置だ。

 鏡の前でベールを後ろにめくって後頭部の隠れ具合を見たがこれって普通にカワイイ。


「ねぇ、ミラベル。これカワイイと思わない?」


 垂れ下がったベールがふんわりと揺れ女子力が上がってる気がする。


「複雑ですけど、確かに。前は長い髪が大人っぽく仕上がってらしたのが、今では可愛らしくなってますわ」


 ミラベルが渋々ながら私に賛成してくれたので上機嫌で馬車に乗り込んだ。

 ちょっと浮かれ過ぎていたかも。





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