↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者にも事情がある  作者: 蜜柑缶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/184

70   魔物撃退

 私が魔物の討伐を見学したいと申し出るとピッカリは「とんでもない!危険です、が、そこまで仰るなら」とアッサリ許してくれた。

 どうやら生まれてからずっと屋敷から出た事も魔物を見た事もない世間知らずのお嬢様だと思われているようだな。

 私はちゃんと脚本通りに進んでいるらしく、ピッカリは側仕えに革鎧を用意してもらい身に着けると部屋を出た。

 心配するミラベルとネイトと共に後に続く。もう分かっているがどういう演出のエンディングか気になって仕方ない。


 魔物は開拓中の森の中に出没した設定のようで馬車でそこへ向かう。ピッカリは一応馬上だ。

 現場近くになると何か獣の吠える声が聞こえてきた。


「あれは、パイアですね」


 ネイトがなんの感慨もなく教えてくれた。


「それは強いのですか?」

「えぇ、肉厚でなかなか包丁が入りませんが美味しいです」


 そこ?

 すぐに馬車は止まり私達は外に出る。いくら美味しい魔物でも用心は必要だ。ネイトは私の少し前を歩き、手には剣を構えて油断なく進む。

 少し拓けた場所に数人の騎士達が一頭の巨大な猪のようなパイアという魔物を取り囲んでいた。

パイアはもうフラフラで放っといても倒れるんじゃないかというほど弱っていた。きっと既に騎士達がいくらか攻撃した後だろう。


「ピカリング様!ささ、とどめを!」


 ひとりの騎士がピッカリに長い柄の槍を渡すと彼は大きく頷き「タァー!」っと勇ましく突撃した。当然瀕死のパイアはドッサリと大きな音をたて横転した。


「いやぁ、今回の魔物は大物でしたな」

「素晴らしかったですわ、ピカリング様」


 私は今ほどベールを被っていて良かったと思ったことは無い。多分、目が死んでいたと思う。

 私だけではなくその場のほとんどの人が魂を空高く飛ばしていた時、突然、いま倒れたはずのパイアが立ち上がり最期の咆哮を上げたかと思うとピッカリに向かって突進しだした。


「ウヒィー!」


 ピッカリは情けない悲鳴を上げると横っ飛びに避けた。ピッカリの影で見えなかったパイアはそのまま私の方へ向かってきた。


「フェアリーネ様ぁ!」


 最初に反応したのはミラベルだった。凄い勢いで襲いかかる魔物に対し、彼女は私に覆いかぶさるとパイアに火の魔術を放ったが火達磨になってもパイアは止まらず突っ込んできた。

 ゲ、駄目だ。私また死んだかも。

 そう思った瞬間、物凄い音がしてパイアは目の前から吹っ飛んでいった。数メートル吹き飛ばされたパイアは今度こそこと切れたようでピクリとも動かなかった。


「ちょっと危なかったな」


 ネイトと並んで見慣れた騎士が立っていた。

 なっ!?なんでアリステアがここに?

 私はパイアに襲われた恐怖よりもアリステアの登場に頭が処理落ちしたかのように真っ白になった。


「流石だな、リックス。あの場所から間に合うなんて。助かったよ、俺だけじゃ危なかった」

「いや、余計な事したかもな」


 ネイトはアリステアをリックスと呼び親しげに拳をぶつけ合うとふたりは急いでこちらにやって来た。


「お怪我はありませんか?」


 そう言って私とミラベルにそれぞれ立ち上がらせようと手を差し出した。


「ありがとうございます」


 アリステアに手を借りようとしたがふとベールが取れているのに気がついた。ミラベルが庇ってくれた時に外れていたのだ。

 その場が一瞬凍ったようにシンとしたが、アリステアはすぐに何事も無かったかのように私を助けおこし、再び「お怪我はございませんか?」とニッコリ笑って尋ねてくれた。


「えぇ、多分大丈夫です」


 私が答えるとアリステアはスッと下がっていった。ミラベルがネイトに助けおこされ素早くベールを私に被せると馬車へ連れて行った。

 馬車の中でミラベルは私の体にキズが無いか確かめるとホッとした様子でため息をついた。


「お怪我がなくて良かったですわ。もう大丈夫ですよ、フェアリーネ様」


 ミラベルの言葉を上の空で頷きながら私はアリステアの事を考えていた。

 リックスって呼ばれてなかった?なんでここに騎士としているの?テンプルウッドの護衛騎士のハズよね。なにしてんの?

 疑問が頭の中をぐるぐる回っていると、馬車の外からピッカリが声をかけてきた。

さっきから遠くで「なんでちゃんと一発で死ぬようにしておかないんだ!」と騎士達を怒鳴りつけていたようだがやっと立ち直ったらしい。


「フェアリーネ様、お怪我はございませんか?」


 ピッカリは少し汚れた革鎧をいかにも名誉の負傷のように見せつけながら私に話す。そこからも何かつらつらと続けて話していたが私は相槌も打たずにネイトを探すと頷いてこちらに呼んだ。


「ピカリング様、わたくし大丈夫ですが、少し疲れましたので今日のところは帰りますわ」


 そう言って三人で馬車に乗り込み帰路についた。


「さっき助けてくれた騎士様はどなたかしら?」


 私がすぐに馬車の中でネイトに聞くと彼は仲がいいのか嬉しそな顔をした。


「彼は最近入ったフリーの騎士でいま仕官する主を探しているそうです。とても優秀で見込みがあります」

「そうですか。身元はハッキリしているのかしら?」


 私がアリステアについてさらに聞く。


「はい、もちろんです。ディミトロフ家に一時期とはいえ雇い入れるからにはフリーの騎士でもキチンと紹介状が必要ですから。後で写しをお持ち致しましょうか?」

「えぇ、お願いします」


 ここでディミトロフ家の人員を確保して確認を任されているのはスラットリー子爵らしくネイトは後で屋敷に資料を届けると請け合ってくれた。

 私がそこから口を開かず考えを巡らせていると、ミラベルが襲われたショックとベールが取れてしまった事を気にしているのではないかと気を揉んでいた。


「あの、大丈夫ですわ。フェアリーネ様、すぐにベールを被りましたもの」

「え?あぁ、そうね。リックス様も動じず手を貸して下さったものね」


 私が何とか取り繕うとネイトは感心したように


「いやぁ、あの場でベールが取れてしまったフェアリーネ様に動じずに手を貸すとは、流石リックスだと思いましたよ」


 それを聞いたミラベルは目を吊り上げる。


「どういう意味ですの!」


 白の呪いを気にせず手を差し伸べたリックスへの称賛だと思いネイトに詰め寄った。


「えぇ!?待って下さい。何をそんなに怒ってらっしゃるのですか?」

「フェアリーネ様に失礼ではありませんか!面と向かってそんなことを!」


 ミラベルの怒りがネイトに向けられ、私はため息をつきミラベルをなだめる。


「やめなさい。仕方ないでしょ。わたくしは気にしないわ」


 それを見たネイトはなんの事だか分からないという顔だ。


「なぜそんなにお怒りなのでしょう?リックスが何か失礼を?」


 なんだか話が通じてないようだ。私は呪いに動じなかったリックスを褒めたのだろうとネイトに言った。


「何をおっしゃいます!違いますよ!

ベールが外れたフェアリーネ様の美しいお姿に動じず紳士的に接したリックスに対する称賛ですよ。

フェアリーネ様が馬車に入られてからその場にいた騎士達は皆その美しさを絶賛しておりました。

クラウス様からお聞きしており、皆少しでもそのお姿を目にしたくてこの場を楽しみにしておりましたが……予想以上のお美しさに我々感動しております」


 ……なんて事してくれたのですかクラウス伯父様。

 私は恥ずかしさで目眩がした。

 そこから屋敷まで私はベールの下で恥ずかしさに身悶えながら馬車の中で過した。

ミラベルは上機嫌で、ネイトは私がベールを取らないかと期待した目で見てくるという軽い拷問状態だった。



 夕食後、早速ネイトから資料が届いた。資料によるとアリステアは仕官先を探して転々と流れてきた騎士で特技は身体強化と水の魔術が少し。紹介者は何とカイリン先生だった。人脈なさ過ぎだろと思ったけどすぐにマティウスに繋げてしまうのは私だけだろうか?

 主にアデミンストで行動しているアリステアの顔はここでは全く知れていないらしい。何の為にアリステアをここに越させたのだろうか?しかも偽名まで使って。ディミトロフ家に入り込む気なのか?だったら私が雇ってもいいか。腕が立つのも忠誠心があるのも分かってる。どこに忠誠があるかは別にして。何をしようとしているか探るには側においた方がいい。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。