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転生者にも事情がある  作者: 蜜柑缶


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30   研究発表

 朝起きると目の前にアリアがいた。


「早く来いって、貴族様が呼んでるからって」

「ふぁ〜い、おはようアリア」

「おはようエマ。エマはどこかに連れて行かれるの?」

「うん?連れて行かれるって誰が言ったの?」

「ガビーさん」


 ガビーがなんで?

 とにかく起きると階下へ行った。アリアは私の手を握りこっちだよと秘密基地の方へ連れて行く。


「今日はここに入って良いんだって、さっき入ったの。植木鉢一杯あったよ」


 そう言いながら得意げに私を引っ張って中に入って行くと中にはみんな揃っていた。


「いったい何をやらかしたんだ?」


 ガビーが嫌そうな顔で言いその横でラッセルはニコニコとし、親指を立てて満足そうだ。


「皆こちらへ、マティウス様がお待ちだ」


 アリステアに呼ばれ秘密基地の奥にある豪華な建物のドアが開けられると昨夜のテーブルでマティウスが書類を広げ何やら書き込んでいた。


 もう働いてるの?それともまだ働いていたの?顔色悪いよ。


「今日から違うやり方で進める。詳しくは……そこのエマに聞くように」


 マティウスの発言にその場に衝撃が走る。なぜこの小娘の?と言う言葉を脳内に直接叩き込んでくるガビーの視線が痛い。それが怖くて顔を反らした先にダリューンがいた。ダリューンは例のニヤニヤ顔をしてる。


「エマが新月魔草の栽培に成功の兆しを見出した。これを全力で支えるように」

「成功のって、何をしたんだ!」


 ガビーが近づくと私の肩を掴み激しく揺さぶる。


「あわわ待って、離して、痛い!」

「やめろ」


 ガビーの乱暴な行動をアリステアが止めに入ってくれる。首もげるから、そんなに激しく揺さぶったら。アリステアの影に隠れてガビーを見上げた。


「落ち着いてください。ただ芽がでただけです」


 ガビーは貴族様を押しのける訳にもいかずグッと拳を握りしめ私を睨む。


「な、ん、の、だ!」


 なんて怖い聞きかただ。私はアリステアの服を握って彼を盾にし背後にまわった。


「新月魔草に決まってるじゃないですか!」

「決まってるって!お前がなぜ関わる!」

「別にいいじゃないですか!やりたいんだから!」


 アリステアをはさんで右へ左へガビーの視線を避けながら私は必死で逃げる。コイツ怖すぎ。ダリューンが見兼ねて私をツマミあげるとそのままマティウスの横に置いた。流石にガビーもここまで来ない。

 ホッとしてテーブルの上を見ると資料が目に入り興味を惹かれる。どうやら最新の薬湯の研究結果らしい。

 怒りに任せたオルガのおおよそのレシピではなく、正確な分量を割り出したいようだ。他の薬草の兼ね合いもあるらしく私には難しそうだな。その他の資料も読もうとするとサッと取り上げられる。


「あぁまだ読んでない」


 つい口走ってしまい、資料を目で追った先にマティウスの顔があった。キラキラして目が潰れそうなかんばせだが、アチラの目はコチラをグッと睨んでる。ヤバイ……


「仕事しろ」


 耳をつままれ、それをダリューンにパスするように向ける。


「痛たた、すみません」


 結局そのまま全員で部屋を出された。


「お前恐ろしい奴だな」


 ガビーが顔を引きつらせて言う。


「本当にね、命がいくつあっても足りない感じだね」


 ラッセルは笑顔で頷く。


「ありし日のアリアを彷彿とさせるね、父さん」

「私もそう思ってたよ」


 ジョルジュとラルクがコソッと話している。ちょっと見てただけなんだけど……いやマズいんだよね。反省しよ。アリアが一人でキョトンとしていた。





「と言う事でここに新月魔草を差し込みます、終わり」


 私の簡潔な説明、まぁ、そもそも説明って程の事でもない作業をやって見せた。詳しいやり方も理由も知らないのでこれが限界です。


「なぜ水だけで?」

「土からの病気が避けれるから、かな?」

「病気って土からつくのか?」

「わかりません」

「わからん物をなぜやらなければならんのだ」

「貴族様の命令だからです」

「ぐぅ……」


 五月蝿いガビーを黙らせて黙々と作業を始めた。作業と言っても数が少ないし、コップに布を被せるだけだ。なのであっという間に終わるとラッセルがおいでおいでして来た。


「なんですか?」

「あれ、日陰でいいのか?」

「そうですね、最初の昼間はベッドの下に入れてましたから」

「あんまり日が射さないとこは葉が伸びんだろ?」

「そうなんです!流石ですね、初めは根っこばっかり伸びました。後で少し日に当てて葉が出たんです」

「ふ〜ん、それで?」

「それだけです」


 そうなのかなぁ、とラッセルはぶつぶつ言いながらコップを眺める。

 お昼になり、お腹空いたねとアリアの手をひきごはんの用意をする為に調理場に向かうといつもと違う食材があった。なんと芽が出たご褒美らしい。

 何作ろうかな、豚肉あるね。たまにお肉がでてもここは塩で焼く肉ばっかりだから蒸すか。

 私は鍋と竹のザルで蒸し器を作り蒸し豚を作った。ハーブ塩で食べよう。


「なんだコレ!柔らかい……」

「本当だ、しっとりしてる」


 珍しがられて思わぬ大好評だった。ガビーも無言でバクバク食べてる。

 へへん、どうだ。

 ここの平民の食事は本当に質素だ。ジョルジュ一家が商売をしていた時はもう少しマシな物を食べていたけど、ここではスープとパンが基本で後は焼いた肉がたまに出る程度だ。蒸し料理ないのかな?スープの中身は野菜と少しのお肉、村なら自分達で採りに行った山菜、キノコ、狩った食用魔物ぐらいだろう。


「一緒に食べると美味しいね」

 

 アリアが楽しそうに言った。時々ジョルジュ達が仕事で一緒に食べれなくて私と二人の時があるからだ。大勢で賑やかなのが楽しいのだろう。そういえば村の人達もまとまって食べるっていってたけど、食堂があるのかな。


「ジョルジュさん。あの、流行病の被害にあった村って全員同じ所で同じ物を食べてますよね」

「まぁ、そうだろうね。私達が仕入れに行ってたところは大きな食堂がある所がほとんどだったからね」

「ジョルジュさん達もそこで食べたんですよね」

「まあ、そういう所と、別に村長さんの家で食べる時もあるよ」

「じゃあアリアはどこで食べたのですか?」

「アリアはいつもリーナと一緒に村の食堂で食べてたね」


 ジョルジュがアリアに問いかける。アリアは頷くがリーナの事を思い出したのか少し寂しそうだ。


「ごめんね、思い出させちゃって」

「うぅん、いーの。あんな病気は早く治せるようになって欲しい」

「貴族様に頼まないとね」

「うん、でも、貴族様怖い」

「え?誰が怖いの?」


 ここでテリウスはまだ見てない。怖い貴族様?


「偉い人がいつも怒ってるし」


 マティウスはいつも無表情だからね。ダリューンもゴツくて怖いらしい。アリステアが一番マシそうだが、だからって仲良くするものでも無いようだ。





 その夜、また夢を見た……離れた所に女の子が寝てる。


 エマなんでしょ?


 ……そうだよ……


 大丈夫なの?


 ……うん、眠い……


 寂しくない?


 ……うん、ここ暖かい……


 寒いとこにいたの?


 ……うん、お休み……


 目が覚めて改めて考えた。小さいエマは今の状況に不満はないようだ。孤児院がよほど酷かったのかな?とにかく落ち着いているようなので私も安心した。アリアは泣き倒してたから大変だった。

 

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