27 研究の仲間
洗濯する為にタライを探しているとアリアがこっちだよ〜、と連れて行ってくれた。そこは食事した部屋から出てすぐの所で井戸と干場、洗い場がまとまってあった。ラッセルもついて来てどこからか椅子を持ってきて座ると楽しそうに私達を見てる。タライで洗濯物を踏み踏みしながらアリアと話す。
「エマは友達いる?」
「いないよ」
「私はいたんだけど今はいないの」
「ここに来たから?」
「そう、でも一人は死んじゃったって……」
「そっか……私は一人もいないから、アリアが友達になってね」
「いーよ!なってあげる!」
アリアは泣きそうな顔をしていたが私を見て笑顔になった。子守って事はこの秘密の部屋ってとこに子供は居なくて、他に連れて行けるわけもなくずっと大人が相手をしていたんだろうな。一応、私は子供の内か。庭師の人達の洗濯より断然少ないので早くも洗い終わり絞ると干していく。
その頃にはラッセルの所にガビーがやって来て書類を指差しながらボソボソ相談し建物と反対の木で出来た壁?の方へ消えていった。
そこは建物と言うには何か変で、仕切りのような感じだ。屋根は見えずこちらからは中が見えないようになっているがドアは無い。
「気になる?」
ラッセルは面白そうに聞いてくる。
「はい。なんですか?」
「アッチは行っちゃ駄目なんだよ」
アリアが得意気に言う。するとラッセルがニコニコしながら続けて話す
「あっちはちゃんと言う事が聞ける人だけが行けるんだよアリア。お前はワガママばかりでちゃんと手伝わないから行けないのさ」
この世界では働き出すのも早い。アリアはそろそろ家のお手伝いくらい出来ないといけないが色々あって教える暇もないんだろう。
なるほど、では私がやるか、どうせする事だし。
洗濯を終えると今度はアリアに手伝わせながら色々教えていくことにした。
「アリアは掃除出来るかな?ホウキとか雑巾とかどこにあるの?」
「掃除出来るよ!こっち!」
井戸に置いてあったバケツに水を汲みそれを持って私はまた建物に入って行った。アリアは階段下の道具置きらしき所からホウキを出す。ちょっとアリアには長すぎだが何とか扱えるだろう。
その辺を適当に掃き出すので端っこからしようね、と導いて掃除開始。窓を開けてドアも開けて、二階から一階まで掃き終えるとアリアはもう飽きてきた。
「ねぇもう遊ぼう」
「これやらなきゃ私はここを追い出されるんだよ」
「え!そうなの」
「そう、仕事をしないと他所に行かされるから」
「……じゃあやる」
アリアは驚いてまた手伝いを始め今度は雑巾を持ってくる。絞った雑巾を渡すと適当にふきだすので端っこからね、とまた教える。ちょっと不満気なので私は子供が保育園の頃歌っていた歌を歌いながら楽しい雰囲気を醸し出す。アリアは私の真似を必死にして歌を覚えようとしその勢いで雑巾がけもする。
気が付けばラッセルは居なくて、ジョルジュとラルクが交代でたまに覗きに来ていたが、アリアがちゃんと手伝いをしてるのを見て喜んでるようだった。
「父さん、掃除終わったよ。見て見て!」
「あぁ、凄いね。アリアが掃除してくれてキレイになったよ」
はい、褒めるまでがセットで子育てです。多分、この世界では甘々な子育てだろうけど。だってガビーが苦い顔して見てるもん。
井戸のある所が唯一外遊び出来る場所なので私はアリアとケンケンパや影踏み鬼をして遊ぶ事にした。簡単にルールを説明して二人でキャッキャッしながら遊んでいたが気が付けばお昼前だ。
ご飯の用意だね、と言ってアリアを誘いスープ作り開始だ。野菜を切り、芋の皮をむき、切落しの豚肉があったのでちょっと入れたり、適当に作った。アリアは何とか芋の皮むきをしたのでまたジョルジュに自慢するだろ。
テーブルにパンとスープを並べ終えスプーンを並べだした頃、皆が集まり出した。
「いい匂いだなぁ」
ラッセルが嬉しそうに席に付く。ジョルジュ、ラルクも来て最後にガビーが来た。私が作ったとわかるとちょっと嫌な顔してスープに手をつけない。ハイハイ毒味しますよ、と食べようとすると私が食べる前にこ誰かが食べた。
「美味しいね!」
ラッセルが先に食べ出してた。
「本当だ。美味しいよ」
ジョルジュもそう言ってくる。お二方は警戒心無さ過ぎだと思います。私はスパイ容疑がかかってるんだよ、信じてくれるのはありがたいけど。
結局ガビーも文句言わずに食べていたので不満は無いのだろう。
「ありがとうございます。でもスープだけですから」
アリアは自分が芋の皮むきをしたと自慢しジョルジュに褒めてもらい大満足だ。
そんなこんなで数週間があっという間に過ぎ、皆が警戒心を解き出したのか私のいる前でも新月魔草の話をしはじめた。
「また駄目だった!なぜだろう…」
「土変えて、駄目」
「植える深さ変えて、駄目」
「水を与える加減変えて、駄目」
「日当たり変えて、駄目」
「もお!あと何変えるんだよ!」
ラルクとガビーはイライラしながらあーでもないこーでもないと試行錯誤してるようだ。ラッセルはニコニコしながらその二人を見ている。
「ラッセルさんは何も言わないのですか?」
「彼奴等二人が思い付く事は大体ワシと同じだからね。それにガビーは優秀だから」
「でも一番偉いのラッセルさんじゃないんですか?」
「偉くても仕方ないよ。今までと違う方法を見つけるのは経験だけじゃなくて、発想力だからね」
まぁ、そうだね。私には関係ない、って言うか関係させてくれない。
いつもの仕事をし、アリアの相手をする。今日は朝から曇りがちだったせいか、とうとう昼から雨が降り出した。いつもは壁の向こうへみんな行ってるけど今は食事をしているテーブルに資料を持ってきて仕事をしている。上手く行ってない時って雰囲気がどんよりしてるからよくわかる。また失敗したのかな。
「これも駄目だ。色が変わってる」
「これも根腐れしてる」
ガビーとラルク、ジョルジュは小さな植木鉢から枯れたり病気になったりした新月魔草を取り出すとバケツに掘りこんで次のサンプルを植えていった。
いつくか取り替えるとそれを持って雨の中壁の向こうへ行ったようだ。ジョルジュとラッセルも何やら話し合ってる。
私とアリアは最近始めた字の練習をコツコツ進めていた。簡単な計算も始めたがアリアは計算が苦手なようなので、石を持って来て一個づつ置いて足していったり引いていったりしていた。
「もぉ!わかんない!」
ついに癇癪をおこしてその石を投げ出した。石は壁に当たると偶然さっき失敗した新月魔草を捨てたバケツの中にコロリと入った。
「お、上手いね。もう一度投げても入るかな?」
「え!は、入るよ。見てて!」
飽きて来たようなので遊んだほうがいいだろと、私はアリアを石で遊ばせることにした。
コロン、コロンと入ったりハズレたり。面白そうに遊びだし、手持ちの石が無くなったので私はバケツの所に行くと石を取り出した。中にはさっきの枯れた新月魔草が幾つも入っていたが、二つだけちょっとマシな感じがするものがあったので、手に取るとポケットに入れた。またアリアに石を渡し今度はもっと遠くにバケツを置くと遊ばせた。
「エマは子供の相手が上手だね」
「馴れてるので」
「孤児院で小さい子が多かったのかな?」
「えっ、そうですね」
危ない、私って学習能力希薄だね。ハハッと笑って誤魔化しアリアの相手をした。
やっと夕食も食べ終え、部屋へ戻った。私はポケットから死にかけの新月魔草を取り出すと水の入ったコップにつけた。萎れて少し色が変わってるが、でももしかしたら生きてるかも。根っこが出てきたら可能性があるよね。私もちょっと研究の仲間入りだ。




