20 再び旅
ジョルジュの体は心配だが、急ぐ旅なのでそのまま出発準備にかかった。
アリステアが馬を探してくれたおかげで馬車と馬に二人乗りでなんとか旅を進める事が出来た。
私は馬に乗りたかったが色々考慮して……と言うかここだけの話、私達家族はテリウスと御者台に二人は気まず過ぎだろうと無言で同意している。まぁ、向こうもそうだろ。
結局マティウス、私とジョルジュ、そしてテリウスの四人が馬車の中に乗る事になった。待ってよ、私と父さんはずっとテリウスと一緒なの?まぁ……仕方ないけど緊張するなぁ……
ウォルフがいい顔でダリューンと馬に二人乗りで出発だ。羨ましいです。
馬車に揺られながらマティウスはオルガの所での結果を教えてくれた。
「最終的にオルガと私の考えは一致してな」
「何がですか?」
「これは流行病では無いという事だ」
衝撃の結果だ!
「これだけ広がって同じ症状なのにですか?」
「うむ、そこが最後まで悩みどころではあったが、やはり伝染病ではないふしがある」
何か所にもあらわれる同じ症状だか、伝染性が疑われるし現地入りした医術者やその付随する部下達は誰も感染しないのがポイントらしい。
大体が一個の村全滅。リーナの村では二人は助かったが皆に症状がでた日は買付で村に不在だったしその後も罹ってない。
罹ったが助かったのならまだわかるが、いっさい症状が無いのはあまり考えづらいらしい。
「前にかかっていたから、今回はかからないってことはないのですか?」
ワクチンは無いにしても免疫の獲得はあり得るだろう。おたふく風邪など一度かかるとあとは大丈夫だと言われるし。
「まぁ、そういう物もあるが、今回あまり目立つ特徴も無い症状では比べようも無い」
「そうですね、発疹が出るわけでも耳下腺が腫れるわけでもないですものね」
「………………」
マティウスが睨んでる。え、何?焦ってジョルジュを見ると驚いてこちらを見てる。テリウスもだ。ヤバイ、話し過ぎたか!また怪しまれる……
「……そんなところだ。今はその線で考えている。だが、どちらにしても新月魔草が大量に必要になる」
おぉ、スルーされた、大丈夫だったのかな?
「やっぱりオルガの薬湯が効くのですか?」
「あぁ、オルガによると解熱、解毒が主な薬効だがそこに普段は入れない新月魔草を結構入れたらしい」
「結構って?ポーションの素材ですよね、それ位って事ですか?」
「いや、ハイポーションを超える量を入れたらしい。一株分だ」
「え!一株って金貨一枚ですよね?!」
驚愕する私とジョルジュ!マティウスの話によると、オルガはなかなか進まない研究にブチ切れて新月魔草を大量にブチ込んだらしい。
そこにリーナが頭痛がすると言ったから慌ててそれを飲ませた。私もついでに飲まされて、でもそれで助かったのかな。
昼休憩になり、馬車から降りて体を伸ばすとラルクが来てジョルジュを馬車から出してくれた。まだ無理は出来ない。
マティウスはまた難しい顔をして一人で食事だ。テリウスは側にいるけど一緒には食べないしね。私はダリューンと家族と食べる。
「家族団らんに悪いな、俺は一人飯は苦手でな」
ダリューンが人懐っこい顔で加わり、アリステアは見張りだ。
「あの、アリステア様とカーン様が従兄弟だって聞いて驚きました」
「あいつらは父親同士が兄弟でな、代々テンプルウッド家に遣えている。俺の家もそうだ」
「ダリューン様もですか?」
ウォルフが身を乗り出して尋ねる。ダリューン推しらしく目をキラキラしている。
「あぁ、俺の父親と兄はマティウス様の父親、テンプルウッド家当主の護衛だ」
「お兄様がいらっしゃるんですね、ダリューン様よりお強いのですか?」
「なに!?俺の方が強いに決まっている!」
珍しく語気を強める。仲が悪いのかな?
「ヨシ!ウォルフ早く食べろ、やるぞ!」
ダリューンとウォルフは食べ終えると早速鍛錬を始めた。脳筋なのね。
私とジョルジュとラルクはゆっくりと食事を終え一息着いていたがそこへマティウスがやって来た。
「アリア、これを読んでおけ」
そう言って紙の束を渡してきた。私はそれをパラパラと捲る。どうやらオルガの資料のようで新月魔草と薬湯、その他の薬草や薬効、今迄の何件かの流行り病の事が書いてある。
「読めない所があります」
「なぜだ……ラルクは読めるな」
「は、はい、専門用語は無理ですが大丈夫です」
「では一緒に読んでおくように」
マティウスはそう言うと馬車に入って行った。孤独癖なの?
私はラルクに教えてもらいながら資料を読んでみたがやはり細かい所がわからない。補助資料が欲しいです、ただの普通の主婦なので。
「ラルクは薬草の事わかる?」
「まぁ少しはな。薬草の売り物に解熱と解毒はよくあったからな」
「ここに書いてある薬草は一般的な物なの?」
「そうだよ、お前にも飲ませたよ。これは確か、魔物由来の解毒用だ」
「じゃこれは?」
「これは植物由来の解毒用だ」
「どっちも一般的な物?」
「そうだな……何の毒かわからない時に同時に使う事もある」
「なるほど……」
って事はオルガもマティウスも毒だと思ってるのか、でも何の毒か分からないのだろう。
再び馬車を進めるなか、マティウスは無言で顎を触りながら考えているようだ。悩む姿もお綺麗ですね。苦悩する美少年、いや美青年か。私の視線を感じたのか目が会う。
「なんだ?」
「あ、いえ……」
私はチラリとテリウスを見る。やっぱり睨んでるよ、大人しくするか。
「なんだ、申してみよ。今更遠慮するな」
「はい……あのマティウス様は中毒を疑っていらっしゃるのですよね?」
私は思い切って聞く。いいよね、言えって言ったんだもん。
「あぁ……そうだ。オルガの話を聞いてそうだと思った。オルガは病が蔓延する最中、村に入って行ったそうだ」
「そうだったんですか、ではオルガが倒れていたのは病にかかったのではないのですか?」
「疲労だな、ずっと一人で研究していたようだ。病の知らせに村のいたる所を見て回っていたそうだ」
話によれば突然、リーナがみんなが変だとオルガを呼びに来たらしい。
その時はリーナはまだ動けたそうだが、村に着くと倒れた。家に入るとリーナの両親は立ち上がれない状態だった。
オルガは慌てて村長に医術者を呼ぶように言ったが結局それどころでは無くなったらしい。
次々に倒れる村人に薬湯を与えよう必死に新月魔草を取りに行き、作ったが出来上がる頃には貴族が村にいて入れなかったのだ。
その後、様子を伺っていたが村は燃やされ、原因究明も出来る状態ではなかったそうだ。
「だが、オルガの感触として流行り病にしては全員罹患するのが早すぎるらしい」
「リーナの村は50人ほどです」
「あぁ、それが一時間程の間に同時にとは考えられん。本来ジワジワと数日かけて順番に罹るはずだ」
「そうですよね……、それで中毒ですか」
「この事は初めてのわかったのだ。今まで詳細は誰にも聞けなかったからな」
「オルガのお手柄ですね」
マティウスは頷く。本当はオルガを連れて来たかったが断られたらしい。新月魔草の研究をもっと続けたいと。なので、新月魔草の管理と研究を命じてその費用の負担をする事になったらしい。
街に帰りオルガの所へ人手を送り、定期的に新月魔草を首都にあるテンプルウッド家のマティウスの研究室に送ってくるらしい。
迂闊なアリアです。




