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魔王様、支配してください!  作者: 春花
堕天使ラファエルとの戦い
21/24

オージャンの戦闘準備

 今回の話で久しぶりにX組が全員集合します。集合したところで…感はありますけどね。

 その時、木々の向こうからネフィとガロウが息を切らして登場した。よっぽど急いだのだろう。


「オージャン!」


「ホントにオージャンだ!」


「まずはジャンヌに回復魔法かけてやれ。体力が持たないぞ」


 駆け寄ろうとしていたネフィの前で、オージャンが指し示す。そっちでは蹲ったジャンヌが胸元を強く掴んで呻いていた。慌ててネフィは駆け寄ってすぐに回復魔法をかけた。


 ガロウは興奮のあまりオージャンの胸ぐらを掴み、


「今まで何をやってたんだよ!」


 激昂の音量にオージャンは顔をしかめてから、


「命を狙われたからな。邪魔になりそうな余を排除して、何か大がかりなことが起きそうな雰囲気を感じた。だから念のためここら一帯に余の紋章を書いていた」


「おまえの紋章って何なんだ?」


「余の魔力を強めてくれるのだ。それによって闇の結界を張ったり、余の存在を強くしたりすることができる。聖痕さえなければ、紋章を使って余の最終形態を見せられるぞ」


「え、遠慮する」


 落ち着いたオージャンの話を聞いて、スルスルと彼の胸元からガロウの手が離れる。


「でも、オージャンは魔力が使えないんじゃなかったのか?」


「アステリアに協力してもらい、余の魔力を体内から抽出する方法を探し当てた」


「そんな方法があったのか?」


「余の血に魔力が混ざっているのは経験で知っていた。その血の中から魔力だけを抽出して、血は体に戻して……よく分からないが、血小板献血と同じだと言っていた」


「へ~」


 献血経験がないガロウもよく分からなかった。血小板献血とは血液から血小板だけ分離させ、抜いた血液をまた体に戻すのだ。大体一時間ぐらいかかる。


「で、今までどこにいたんだよ? 学園長の家? オージャンが生きているのを知ってたのは学園長だけか?」


「そんな分かりやすいところにいるわけがないだろう。シャルマルあたりに気づかれたら一戦交えるのは不可避だぞ」


「そりゃそうだ」


 考えるだけ恐ろしいと、ガロウはしきりに頷く。


 そして、オージャンは簡単に白状する。


「余が生きているのを知っていたのはアステリアと数名の医者、そしてグリアスだ。なぜなら余は、女子寮の『〇一三』号室にいたからな」


「は~!?」


 真っ赤な顔のジャンヌがガロウとの間に割り込んできて、オージャンの胸ぐらを掴んで顔を間近に近づける(ジャンヌの治療を終えたネフィは、次にレシャールの回復に入る)。


オージャンは「何度胸ぐらを掴まれるのだ」と脱力する。


「息が荒いぞ」


「なんだか体が熱いから! ってか、それより今のどういうこと、マジで!」


 ガクガクと前後に体を強く揺らされ、オージャンは答える隙がまるでなかった。だからその代わりに、


『ケ~ケッケッケッケ! わ~たしと、魔王様が~同棲してたって話。魔王様って激しいんだぜ~。強引に押し入ってきて、有無を言わさず私を押し倒して、嫌と言えないようメチャクチャエロエロにされた~! ケ~ケッケッケッケ!』


 グリアスの話を聞いて、ジャンヌはピタリと止まった。前世持ちの彼女だが、生前は聖女と言われていたのだ。そういった男女間の営みに関する知識も経験もないのだろう。


 無垢な反応を見せるジャンヌの手を、オージャンはやんわりと外し、


「ウソを言うな。メチャクチャだったのは貴様の部屋だろ。宿賃代わりに掃除してやったらあっさり了承しただろ」


『いい嫁だった~!』


 こめかみに怒りマークをはりつけたジャンヌは、羊のぬいぐるみを掴み取り、破りかねない勢いで左右に引っ張った。まあ、グリアスはぬいぐるみに憑依しているだけなので痛みなど感じず、『ケ~ケッケッケッケ』と笑っているが。


「何でグリアスの部屋なんだ?」


 ガロウが質問を引き継ぐ。


「あそこがこの島で一番、人が立ち寄らない場所だからだ」


 納得してガロウは頷いた。


『ところで~、目覚めのキスはど~だった~?』


「キス?」


 キョトンとしたジャンヌは、口に意識が向かう。口中に血の味がするのに気づいた後、グリアスがぬいぐるみの手でオージャンの口を示す。彼の口の端からも血が流れている。


 関連に気づいたジャンヌが真っ赤になったが、それを問いただす暇がなかった。


「おい貴様ら。逃げる用意をしておけ」


 とオージャンが空を見ながら言ったが、遅かった。風の塊となって高速で落ちてきたラファエルはX組の面々――というより、オージャンだけを視界に入れて睨みつけてくる。その激情に染まった視線を心地よさそうに感じて、オージャンは笑みを見せる。


「なんだ貴様、まだ生きていたのか。随分としぶといな、さっさとナンバーズにやられてこい」


 犬猫にやるように、オージャンはシッシッと手を振った。


「私は上級第一階級の熾天使だぞ! 人間程度にやられはせん! それより貴様、コソコソと逃げ回りよってからに」


「余の場所も分からずフラフラする貴様が悪い。大体にして、敵の本営も分からず突撃するなど将にあるまじき短絡行動だと思うがな。余はちゃんと貴様の場所を見抜いたぞ。将としての格が違うな」


「ぬかせ! 見つけたからにはもう逃がしはしない!」


 ラファエルは掌中に小さな竜巻を作り出す。


「ガロウ。シルファザードをしっかり振っていたか?」


「おう!」


 すでに魔剣を手にするガロウが大きく振りかぶる。


「サイクロン!」


 ラファエルが放った竜巻とガロウが剣を大振りしてくり出した竜巻がぶつかり合い、周りの木々をなぎ倒すほどの暴風を巻き起こした後、二つとも消滅した。


 人間と力が拮抗したことに、ラファエルは声もなく驚愕した。


「ふ、武器の出来がいいからな」


「それって自画自賛?」


 シルファザードの原材料を知っているネフィが、小さめにツッコんだ。彼女はレシャールの回復を終え、次はキネマの回復に入る。


 ガロウは魔剣を構え、ラファエルと睨み合う。だが、睨み合っているだけで神経が削られるのか、早々にガロウの頬に汗がつたい出した。そんな彼を慮って、


「こちらから攻める必要はない。適当に流して時間が経てば援軍が奴の背後を強襲する」


 オージャンが言ったが、インカムからアステリアが伝えてくる。


『堕天使がそちらへの道を阻んでいます。もうしばらく時間がかかりそうです』


 それを聞き、オージャンは面倒そうに髪をかきつつため息をはく。


「くくく、頼みの援軍とやらはどうした、魔王!」


 分かって聞いてきてやがると、オージャンは舌打ちした。


「どうするのよ、オージャン? 下手に近づけばアイツ、マジで心臓を止めてくるし」


「心臓を?」


 言われてオージャンは思い出す。大した外傷もないジャンヌの心臓が止まっていたことを。


 次にオージャンはラファエルの恰好を見て、片眉を上げる。


「貴様、フラフラ飛んでいて人間から攻撃を受けなかったのか?」


「ようやく気付いたのか。意外に勘が悪いな、魔王。バカなんじゃないのか?」


 ここぞと罵倒してくるラファエルにオージャンはカチーンと来たが、とりあえず黙る。調子に乗らしたほうがペチャクチャと話してくれそうだと思ったからだ。


「私ほど癒しに精通している天使はいない! 自己の傷を超スピードで再生させるなど造作もないわ! よって、人間ごときに完璧な私の肉体を傷つけることなどできない! そして当然人体についても知り尽くしている! 私にかかれば一撃で死に至らしめることも、死なないように切り刻んでいくことも、素手で解体することも可能だ!」


 癒しとは真逆の言動に、オージャンの背後で何名か短く息を呑んだ。


 ラファエルはオージャンへと手を向け、


「こちらからも問おう、魔王よ! 貴様、こんなところで何をしている! その聖痕からどんな使命を受けてこの場にいる!」


「気づいたらこの世界に飛ばされたのだ、使命など知るか。だが貴様を見て分かった。貴様の企みを見過ごせば世界が崩壊しかねないから、余が来たのだろうな」


「くくく、この島を拠点にすることすらお見通しか……やはり神は偉大だ! そして私を無視できなかったのだ! 私のことを考えて行動を起こしてくれるとは――歓喜だ!」


 ラファエルは己の体を強く抱きしめ、天を仰いで涙を流している。


 その様子に、女性陣は背中に寒気を感じて超引いていた。


 そうやってラファエルがトリップしている間に、


「ああいう輩の相手は任せるし、マジで」


 と、ポンッとジャンヌはオージャンの肩に手を置く。


「貴様、余は大魔王だぞ。もっと出し惜しめ」


 そう一応言うが、ため息を吐きつつオージャンは頭をかく。


「とは言え、余しかいないか。余の内臓は魔力が通っているので、そう簡単に機能不全に陥ることはない。だが、さすがに第一階級相手に魔力無しではキツイ。ということで」


 ……………………。


「え、なにこの状況」


 クラスメイトによって、ネフィはオージャンの背中に負んぶされる形でくくりつけられた。


「簡単な話だ。奴の攻撃を余が喰らう度に貴様が回復魔法をかける。単純にいえば、奴の超速再生と貴様の回復魔法の勝負だ」


「絶対負けるって!」


「分かり切っていることを自慢げに言うな。スズメの涙でも無いよりマシだと思っているだけだ」


 そして、下手に巻き込まれないようにクラスメイトは下がる。それを見捨てられたと錯覚して、ネフィは顔に斜線を作る。


「っていうか、私が狙われたらどうするのよ! 心臓止まるんでしょ!?」


「貴様の復活スピードだけは余も認めている。大丈夫だろ…………たぶん」


「不穏で聞き捨てならない言葉がついた! 試してみたくない!」


 耳元でうるさいネフィにオージャンは顔をしかめ、


「そう言えば貴様、堕天使と人間のハーフらしいな?」


「え? なんで、なんで知っているの? そしてどうしてこの状況で聞くの?」


「だからこその復活スピードなのだろうが…………余ですら全く気付かなかった。天界の血を引く者でも俗世にまみれるとこうなるのだな」


 どこか憐れんだ目でオージャンは後ろに目をやった。


「いやいやいや、今は関係無いでしょ! 色々と誤魔化そうとしているでしょ!」


「無能のくせに察しがいいな。では言うがここで活躍しなければ貴様、最早見せ場は無いぞ? この一月何をやっていたか言ってみろ」


 そこを言われると弱るしかできないネフィは、閉じた口を波立たせる。


「はい、時間切れだ」


「へ?」


 ネフィの間の抜けた声が漏れた時には、ラファエルが二人の眼前に迫っていた。

 ついにきた~! 無能だ無能だ言われていたネフィが活躍できる場面が! ま、期待はされていませんが。しかし最終決戦だというのに負んぶとはマヌケな恰好。

 次回はオージャンの本領を発揮しまくります。楽しい戦いになるでしょう。そして、神によって送り込まれた理由がついに判明します。

 あ、決着もつきます。

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