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魔王様、支配してください!  作者: 春花
堕天使襲来
15/24

オージャン死す

 今回の話でようやく話が半分まできます。あとは最後に向けていくだけです。

 オージャンはスマホを懐にしまい、降ってきた十数の光球を避ける。


 第五階級の堕天使はずっと直上に陣取り、光球を撃ちこみ続けている。準戦闘区域の道は幅が取られているので民家にこそダメージはないが、道路はボロボロになり、電柱も倒れてひどいありさまになっている。


「対空攻撃組! どうにかしてアイツを撃ち落とせないのか!?」


 オージャンが目をやるのは、四角いブロックの氷だ。


「あれほど上空にいられると、わたくしの炎では避けられる可能性が高いですことよ」


「申し訳ありません。現在お嬢様をお守りするのに手一杯で」


 氷の中にはレシャールとキネマがいる。とんでもない硬度のようで、氷に光球が当たっても多少削られるだけでビクともしていない。


「おい、グリアス」


 と、頭に乗っているぬいぐるみに話しかけるが、返事は無い。疑問符を浮かべて掴み取ってみると、グッタリとして生気……というのも変だが、彼女の気配を感じなかった。どうやらトンズラしたようだ。どこかからか『ケ~ケッケッケッケ』という、陰気な高笑いが聞こえてきそうだ。


 イラついたオージャンは舌打ちし、そこらにぬいぐるみを捨てた。


「オージャン!」


 駆けてきたガロウが大きく呼びかけた。


「遅い!」


「わり! ところで魔剣ってどう呼ぶんだ!?」


「来いと命じろ! 魔剣シルファザードを!」


 新たな魔王の配下に、すぐさま堕天使は腕を振るって光球を集中的に浴びせた。数十という光球が次々と着弾し、粉塵が激しくまい上がる。その煙が下から吹き上がった風で消し飛んだ。


 風が止むと、ボコボコになったアスファルトの中に直径三十センチほど無事な場所があった。そこに立っているガロウの右手に魔剣が握られている。


 彼の右手首には剣から伸びた黒い布が巻きつき、茜色の刀身は喜んでいるように輝いていた。


 自分が無事だったことに、ガロウは戸惑いつつも走り出す。


「ちょ、この剣の能力とか――ってか、さっきのなんで、俺無事なんだ!?」


「後だ後! まずはダウンバーストだ!」


「なんだよそれ!?」


 知らないゲームの必殺技を言われた感じで、ガロウは訳が分からなかった。


 空中にいる堕天使はガロウの持つ剣に危険なものを感じ、


「シャイニングスター!」


「バカの一つ覚えが!」


 数十の光球が降ってくるのを見て、オージャンはニヤリと笑い、


「ガロウ! その場であそこへ向かって剣を振り抜け!」


 言われるまま、ガロウは光球に向かって剣を横に振った。すると、横殴りの風が吹いて光球がぶつかり合い、大多数を消滅させた。


「これ、オージャンが使った方がいいんじゃねえの!?」


「そしたら貴様の武器がないだろ! 金がないのだから、聖剣を買い戻すとか余は無理だぞ!」


 赤貧になったことを堂々と公言する魔王が面白く、レシャールは肩を震わせて笑った。


 少なくなった光球をオージャンとガロウは軽々と避けつつ、


「俺に武器が無くったって! 使い慣れているオージャンがやれば倒せるだろ!?」


「たとえ成果が上がるとしても、余だけでやっても意味が無いのだ! みなでやっていかなくては先が無い!」


 ガロウの背後に回ったオージャンが、背中から腕を伸ばして彼の手を取る。


「今回だけは余が教えてやる! 次までに振り込んでおけ!」


 剣先を下に向け、右回りで半円に動かして上段に持ってくる。そして両手で柄を握らせ、思いっきり振り下ろして叫ぶよう言って、オージャンは離れる。


「ダウンバースト!」


 掛け声と共に、ガロウは剣を一閃させた。すると、凄まじい勢いで風が上から地面にぶつかり始めた――下降気流だ。


 空を飛んでいた堕天使はもろに風を喰らい、空に留まっていられず勢いよく地面に叩きつけられた。


 風は数秒で止み、すぐさま堕天使は起き上がろうとした。が! 体が不自然なほど動かなかった。


『ケ~ケッケッケ。か・な・し・ば・り』


 いつの間にかオージャンの右腕に引っ付いていた羊のぬいぐるみが、這いつくばる堕天使へ嗜虐的な笑い声を送る。


 その金縛りで動けなかったのは一瞬だが、その一瞬で、堕天使の四肢に弾丸が撃ちこまれて凍りつく。


 さらに、マンホールから飛び出したジャンヌが、上からランスで堕天使の胴体を貫いて地面に打ち付けた。


 そして、全員が堕天使から離れると……レシャールから堕天使までの射線上に邪魔するものは何もなかった。


 レシャールの右手に渦巻くように炎が集まり、


「インフェルノアブソリュート!」


 手が突き出されると同時に火炎の奔流が放たれ――凄まじい轟音の余韻と熱気だけが残り、堕天使の姿は消えていた。


「うわ~、俺達だけで中級第五階級を倒したのとかって初めてだな」


「ってか、ガロウ遅くない? マジで」


「しかも、いいとこ取りですものね」


「でも、最後のトドメはレシャールだっただろ」


「お嬢様の技量を考えれば当然です」


 敵を倒したことで和やかな雰囲気になっていたが……突如、上から飛来してきたものがオージャンの背後に落ち、右腕を彼の首に回し、左腕を脇に回して羽交い絞めをする。


「邪魔さえ入らなければ、魔力が封じられている魔王を殺すなど簡単なこと!」


 オージャンからは見えなかったが、背後にいたのはボロボロに焼け焦げ、胴体に穴が空いた堕天使だ。レシャールの業火を喰らいながら、四肢の氷が溶けた時に無理やり腹のランスを引き抜き、空に飛び上がっていたのだろう。


 その瀕死であるはずの堕天使の傷が、信じられないことだが徐々に治っていく。胴体の穴ですら、肉が蠢いて塞がろうとしている。高い再生能力を持つようだ。


 みんなはすぐに身構えたが、堕天使が「動くな!」と言ってオージャンの首に回している腕に力を加える。ただ、オージャンは不愉快にムッと口をへの字にし、


「大魔王だ。触るな、不愉快だ」


 首に回されていた太い腕をオージャンは右手で掴み、肉に指を食い込ませて無造作に引きはがした。そして、逆上がりをするように足を振り上げ、堕天使の顔面を蹴った。その顔面を強く踏んで、左腕を引っこ抜く。


 クラスメイトが唖然としている中、オージャンはたたらを踏む堕天使と向かい合う。


「余が魔力頼みのか弱い魔王と思われていたとは憤激ものだな。余を誰だと心得る? 大魔王だぞ」


 突然の反撃にパニクった堕天使は、衝動的にオージャンに飛び掛かった。


 骨が砕かれる鈍い音が響き、オージャンの拳が堕天使の頬に深くめり込んだ。堕天使の首がヤバイぐらい回り、相手を見失ってフラフラと前進して膝をついた。


 オージャンの一撃で立ち上がれなくなった堕天使に、トドメを刺そうとジャンヌが突進す――その瞬間、堕天使の体内から光が溢れ、瞬間的に巨大な光の球ができた。その光に接したところは消失し、あの堕天使がいたところを中心に球形の跡が残った。


 堕天使の間近にいたオージャンは助けたジャンヌを抱きかかえ、キネマはレシャールを抱え、ガロウは一人で球形の範囲外にいた。


「自爆技とは芸が無いですね」


「いや、ビビったって!」


「自爆? ふん」


「てか、オージャンマジで強いじゃん!? どうして戦わないの!?」


 なにを言っているんだとばかりに、腕が塞がった状態で肩を竦める。


「ラスボスである余が自ら出向くなど追い詰められている証拠だからな。出し惜しんで当然であろう。逆に言えば、余が戦っていない時は余裕がある時だから安心しろ」


 間近で「安心しろ」と言われ、ジャンヌはお姫様抱っこされている状態に気づいて、顔を染めて「早く下ろしてよ!」とせっつき、


「あら、お可愛いこと。外身を派手に着飾ったところで、やっぱり本質は乙女ですことね」


 オージャンの胸を手で押していたジャンヌはピタリと止まり、彼に抱っこされたままキネマに下ろされたレシャールの方を見て、


「はあ? 意味わかんないですけど、マジで。胸に栄養やるぐらいなら、体を健康にしたらどうなの、アンタ」


「強がらなくてもよろしいですことよ、聖女様」


「強がりってなに? お嬢様と違ってアタシはけっこう男を知ってるし!」


「へ~。それはそれはですこと」


 ニヤニヤと笑うレシャール。もう後に引けなくなったジャンヌは、オージャンの首に手を回して引き寄せるようにして抱きつく。自分の胸が彼の体に当たっていることも自覚して、耳まで真っ赤になる。


「ど、どうよ」


 オージャンの耳元で震えた声を出す。彼はダシに使われ、ほとほと呆れたような顔をしているが。


 シャッター音が聞こえ、ジャンヌはオージャンに抱きついたまま顔をぎこちなく後ろに向けた。


 すると、レシャールが微笑ましい顔をしてスマホを構えていた。


 ジャンヌは瞳を潤ませて、口をわななかせて――オージャンは鼓膜が破れないのを祈った。


「消せえええぇえ~!!」


 オージャンから飛び離れたジャンヌがレシャールを追いかけるが、レシャールはヒラリヒラリとかわしていく。


 そんな時、ガロウの携帯にネフィから連絡が来た。おそらく、オージャンに連絡をしたのに出なかったのだろう。


『みんな! 学園の方も堕天使が撤退したって!』


 それを聞いて、男性陣が安堵のため息をついた。


「終わったか」


『ううん。今夕ご飯のカレー作っているから早く戻って手伝って』


 ガクンッと、体に一気に疲労を感じて重くなった。


 サポートの仕事はまだまだ残っている。


 こうしてX組全員で一つのことを成し遂げた。



 オージャン達と戦っていた中級第五階級の堕天使は、玉座の前で跪いて自分が得た情報を玉座に座る方に伝えていた。報告を聞いて、玉座の堕天使は鷹揚に頷く。


「なるほど。腐っても魔王ということか。魔力がなくてもそれほどの力があるか」


「はっ!」


「ご苦労だったな。だが、その顔はどうした?」


 聞かれて、第五階級の堕天使はビクリと体を震わせた。そして錆びついたようなぎこちなさで顔を横に傾けて、部屋のいたる所にある鏡の一つを見る。そこに映っている自分の顔面は、オージャンの拳のせいでまだ歪んでいた。


「私の前によくその醜い顔をさらせたものだな」


「こ、これは! 一刻も早くご報告をと――」


「黙れ。私は醜いものが嫌いだ。顔に傷がついた者など神に愛される資格はない」


「お、お待ちください! ラファエル様!」


 玉座の堕天使――ラファエルが指を弾くと、堕天使の足下から竜巻が発生し、それに切り刻まれて一片の欠片も残らなかった。


 それからラファエルは玉座を下り、壁にかかっている鏡の前に立つ。その鏡に手を触れると、映っている像が変わった。


 ラファエルは鏡の向こうに短くテレパシーを送る。


〈褒美が欲しければ、何をすればいいか分かっているな?〉




 そして、オージャンが副委員長になって十一日目の木曜日。彼は死んだ。

 完! という訳ではないんですけどね。オージャンは死んだようです。そこらの話は次回にしますね。

 オージャンはワンマンでなく、みんなに責任と自覚を芽生えさせるつもりだったようですが、それでどうやってオンザバージを回避するつもりだったんでしょうね。

 ついにやってしまった。鬱憤を晴らすように上司を殺してしまった……まあ、私の鬱憤を晴らしたかったわけじゃないですけどね! スッキリした~!

 オージャンがいなくなってどうなるのか、それではまた次回。

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