↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/48

第4章:汗の結晶

 深夜の『黒鉄堂』。

 暖炉の火だけが赤々と燃える店内に、レクスは静かに戻ってきた。

 ガザルはカウンターで古い斧を研いでいたが、レクスの姿を見ると、小さく鼻を鳴らした。


「おいおい、幽霊のお出ましにしちゃあ、ずいぶんと泥臭いな。生きて帰るとは思わなかったぜ」


「親父の目利きのおかげさ。この大剣、見た目よりずっと頑丈だった」


 レクスは背中の大剣を机に置き、懐からボロ布に包まれた『氷液の髄木』を取り出した。机の上に置かれた瞬間、冷気が薄く広がり、ガザルの手が止まる。


 ガザルは眼帯のない方の目を細め、無造作に木片を掴み上げた。親指の腹で表面を強くこすり、匂いを嗅ぐ。


「……ほう。三階層の『根の処刑人』を仕留めたか。口先だけの狼じゃなかったわけだ」


「いくらになる? そいつでまた、しばらく食いつなぎたい」


 ガザルは木片を机に放り、腕を組んだ。


「銀貨二十枚。これが上限だ。お前が素人なら金貨一枚と言って騙してやるところだが、その手の肉刺(まめ)に免じて、職人としての適正価格を出す」


 銀貨二十枚。今のレクスにとっては大金だが、彼は首を横に振った。


「銀貨十五枚でいい。その代わり、条件がある」


「……ああん? 安くしろってのか? 耳が腐ったか、兄ちゃん」


「残りの五枚分で、この大剣の重心を少し削って、俺の体格に合わせて調整してほしい。それから、迷宮の四階層に関する『まともな噂』を教えてくれ。命を売る準備はできている」


 ガザルはしばらくレクスを睨みつけていたが、やがて低く笑い声を漏らした。ドワーフの分厚い手が、レクスの肩を叩く。


「ハハッ! 目先の金より、次の生き残り方を選ぶか。気に入った。その取引、乗ってやるよ」


 カウンターに、鈍い音を立てて十五枚の銀貨が並べられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。