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第3章:燃えない樹液
静まり返った洞窟の中、レクスは怪物の残骸の前にしゃがみ込んだ。
崩れ落ちた枯れ木のような肉体。その中心部、砕けた結晶の奥に、奇妙なものが埋まっているのを見つける。
「……なんだ、これは」
手を伸ばし、泥まみれの繊維をむしり取る。
引きずり出したのは、大人の握り拳ほどの大きさをした、青白く透き通る木片だった。
植物であるはずなのに、触れると金属のように冷たく、ずっしりとした重みがある。
迷宮の深部でしか採れない稀少素材――『氷液の髄木』だ。
魔力を帯びた冷気を放ち続けるこの木は、一流の鍛冶師が極上の武器を鍛える際、金属を急冷するための特別な触媒として高値で取引される。
ただの武器よりも、こうした「職人が喉から手が出るほど欲しがる素材」の方が、裏ルートで確実に、しかも高く売れる。
「上出来だ。これなら、ガザルの親父への借りを返しても、しばらくは白い飯が食える」
財布の軽さを思い出し、レクスの口元にようやく自然な笑みが浮かんだ。
チート武器で無双するより、明日生き延びるための金。それが、この地獄のような迷宮で掴み取った最初の果実だった。
レクスは冷たい木片をボロい布で丁寧に包み、懐深くへと仕舞い込んだ。
だが、安堵したのも束の間。冷気の匂いに誘われるように、通路の奥から新たな足音が近づいてくる。




