十分な働きをしてくれた(銀髪の少女:スーテラ)
――投票時間が終了しました。スキップ:四票 ミーナ:三票
――誰も追放されませんでした。
危ないな。あと少しでミーナが追放されるところだった。
自分で加熱させといてなんだけど、危うく予定が狂うかと思ったわ。
でもミーナにいれた三人には怪しまれるかもしれないわね。なるべく慎重に行動しないと。
そう考えていると、ルファが声を上げた。
「投票は終わりましたが、隊列はどうするんですか? 盾のリョウさんいなくなっちゃいましたけど」
すると、イカサマ三人組のうちの囮役だったシーバが答えた。
「俺かコレドが回避壁をやるしかないだろうな。ダメージは落ちるが、今のミーナに前衛は任せたくない」
その言葉にサティスが続く。
「後衛三人が見張ってくれるだろうし、それでいいんじゃないか?」
更に三人組のまとめ役であるコレドが述べる。
「自己加速があるし、俺が回避壁するのが安定するだろうな。反対意見はないか?」
イカサマはなしって釘を刺したのに、人読みで連携している感じがするわね。
三人のうちの誰が発言すると、他の二人も賛成している感じが見受けられるし。
そろそろこいつらから一人殺しておこうかな。
やっぱりまとめ役のコレドがいいわね。発言力強そうだし。
でも今回ばかりは言っていることがまともなので、賛成せざるを得ない。
結局、彼らの提案通りでまとまった。
前衛が双剣で暗殺術のシーバと、剣で回避壁役をやることになった自己加速スキルを使うコレド。
中衛が投げナイフに急所必中スキルのサティス。
後衛が風魔法のリドル、火魔法のミーナ、シスターで回復魔法と光魔法が使えるルファ、それから弓と伝令術だと偽っている私。
新たな陣形で再開した行軍は、思ったよりも安定していた。
コレドの回避が上手い。
意外な安定性にほっとしたのか、皆から緊張感が少し抜けた気がした。
今が好奇ね。
ミーナ、また利用させて貰うわよ?
ミーナが放った複数の火魔法のうちの一つが、ぐにゃりと軌道を変えてまだターゲッティングされていないモンスターにぶつかった。
当然、そのモンスターはこちらへ寄ってくる。
失態を取り戻そうとしたのか、ミーナが慌てて火魔法を連射する。
それが逆に命取りよ。
私は魔法を発動させて火魔法の軌道をずらし、どんどん別のモンスターを巻き込んでいく。
さて、これくらい巻き込めば目眩しとしては十分でしょう。
増えたモンスターに対処していたコレドに、ミーナの火魔法をぶつけ炎上させた。
そこで一旦回復が止まる。すると、シーバから怒号が飛んだ。
「ルファ、回復!」
「ダメです! 炎が鎮火できないと回復魔法が意味をなしません!」
これは本当のことだろう。回復魔法といっても、既に起こった現象を消せるわけではない。
誰か水魔法を使えるなら違っただろうが、この場にはいないようだ。
それにしても。
ちょっといただけない事が起こっている。
私は、サボろうとしている相方に檄を飛ばす。
『手を抜こうだなんて思わないでね。ここで焦るより、処理した方が確実だから』
その忠告の後、私はミーナに伝令をした。
『もう火魔法は撃たないで。利用されるだけだから』
そこからは火魔法が撃たれなくなり、追加の指示でなんとか乗り切るも、コレドは死亡。
ここでサティスが緊急会議権を使った。
――緊急会議を開始します。
緊急会議権。
基本はボスを倒した後の休憩所でしか追放会議はできないのだけど、戦闘中でなければ一人一回だけ緊急追放会議を起こすことができる。
早速とばかりに、会議を起こしたサティスが問う。
「ミーナの火魔法が変だったの、分かったか?」
皆で頷くと、ミーナが訴えかけてきた。
「私はあんな芸当できないぞ!?」
その言葉に対し、イカサマ三人組の一人、シーバがぼそっとつぶやく。
「風魔法……」
サティスはその言葉を繋いで、下手人を探るように聞いた。
「そうだ。一階の時もああやって誘き寄せたのかもしれない。なぁ、リドル?」
「私はやってませんよ! 第一、風魔法で軌道を変えるなら、なんであんな大っぴらにやらなきゃいけないんですか!?」
よし、目論見通りの流れね。
私が満足していると、ルファが追い打ちをかけた。
「できないとは言わないんですね」
「できるかできないかで言えばそりゃできますけど、メリットがないって言ってるんです! 大方ミーナさんが自分で曲げて、私に罪をなすり付けるために見せつけたんじゃないですか?」
「だから私はそんなことできないと言っているであろう!」
できる、できないと二人で罪の押し付け合い。
私の真の技能はバレていないから、こちらにヘイトが向く事はほぼないだろう。
狙っていた通りの流れだ。
水掛け論になっていたが、ここでサティスが提案をした。
「とりあえず一番怪しいリドルを追放して、それでも終わらなければミーナを追放すればいいんじゃないか?」
その言葉に、熱くなっていたリドルが反論する。
「私達しか疑っていないみたいですけど、そこで黙ってる二人はどうなんですか!? 議論に参加しないところとか怪しいと思いませんか!?」
もうやぶれかぶれね。
私は自分の潔白を証明する為、今までやったパーティーへの貢献を述べた。
まぁ、実際は真っ黒なんだけど。
「私は一階でモンスターの検死を提案したし、今は話せることもなかったから口を挟まなかっただけよ」
私がそう言うとサティスが続く。
「ミーナを庇うような言動をしたから役立たず陣営で繋がっていると思ったが、そういえば検死を提案してミーナがモンスターを釣ったかもしれないと暴いたのはスーテラだったな。忘れてたぜ」
更に残った三人組のうちのシーバが、サティスの言葉を補足する。
「あぁ。今もそうだが、危うくなった時に立て直す指示が的確だ。これが指示のせいで誰か死んでいるなら役立たずだと思うが、ここまで綺麗に立て直されたらパーティー陣営だと思わざるを得ない」
上手く騙されてくれたわね。必死に立て直した甲斐があるってものだわ。
私を落とせないと悟ったのか、リドルはルファへ標的を変えた。
「ならあなたはどうなんですか、ルファさん! あなたは魔法が使えるんですよね? 何か隠してるんじゃないですか?」
それしかないとはいえ、あまりにも杜撰だ。
彼女は初心者らしくほぼ回復しかしていなかったから。
案の定、ルファは冷静に反論した。
「私はそんな魔法使えませんし、仮に使えたとしても魔力がありませんよ? ずっと回復していたんですから。あの数を捌くのに回復に専念していたの、見てなかったんですか?」
「それは……そうですけど」
――残り三十秒。
そのアナウンスにリドルが悔しそうに歯噛みする。ここから挽回できないと踏んだのだろう。
もう諦めて何も言わなくなった。
彼女に追い打ちをかけるように、サティスが言う。
「リドルに投票でいいな?」
よし、リドルを追放したらあとは一人殺して同数決着ね。
相方は目立った事をしてなかったけど、余計なこともあまりしなかった。
それに、ここまで生き残ってくれただけでも御の字だ。
初心者としては十分な働きをしてくれた。
そんなことを考えていると、残り時間が迫る。
――残り十秒。
私はステータス画面を操作してリドルに投票した。
さて、パーティー陣営をあと一人殺す用意をしないと。
――三
――二
――一
――投票時間が終了しました。リドル:五票 ミーナ:一票
――リドルが追放されました。リドルは役立たずではありませんでした。
相方以外の人間はリドルの追放でゲームが終わると思っていたからか、驚いた顔をして固まっている。
私は、小さな声で相方に指示を出した。
『光魔法で目眩しお願い』
相方であるルファが視線を投げてきたので、頷き返す。
最後だからいいけど、道中にやっていたら殺してやるところだった。
落ち着いていないパーティーへ向けて、閃光が走る。
目眩しされている間に、私は弓でミーナを射った。
その途端に身体が透け始め、アナウンスが聞こえてくる。
――役立たず陣営とパーティー陣営が同数となりましたので、役立たず陣営の勝利となります。
――おめでとうございます。あなたの勝ちです。
身体が透けていくなか、七分の一を引いたラッキーガールは、ぽかんとした間抜けな顔をしていた。




