ここで彼女に死なれては困る(銀髪の少女:スーテラ)
さて。私が所属する役立たず陣営は、私達と同数になるまでパーティー陣営を減らすか、五階層からなるダンジョン攻略まで私が生き残ると勝ちとなる。
相手のパーティー陣営は、役立たずの私を抱えたままダンジョンを攻略しない事、役立たず陣営に人数を揃えられてパーティーを乗っ取られないようにする事が目標だ。
まぁ、さくっと同数にして勝たせて貰うとしようかしら。
私が最後まで生き残るという方法もあるけど、それはあまりに状況が悶着した場合かな。
まずは一人殺すところからね。
誰も殺さず最終ボスを倒すと、一番貢献度が低い人と役立たずが入れ替わるというルールがある為だ。役立たずに潜伏したままでいられるとゲームとして成立しないからこういうルールがあるらしい。
まぁ、そんなルールがあって私が誰も殺さないなんて万が一にもあり得ないけどね。
最初に誰を殺して、誰を利用するかはもう決めてあるし。
私が勝ち筋を考えていると、魔術師であるリドルが声をあげた。
「では皆さんの自己紹介も終わりましたし、先ほどの立ち位置通りに隊列を組んで進みますか」
さっきはあんまり喋ってなかったけど、進行の主導権は握りたい派なのかな?
まぁいいよ。あんたはたっぷり利用してあげる。
目立ってくれるならコチラとしてもありがたい。
そんな事を考えながら進むと、二、三匹のダンジョンモンスターが現れた。
ここでは犯行を起こさない。
まだ序盤で特に強いわけでもないからだ。
行動を起こすのはボス戦ね。
ボス手前まで近づいてきたので、私は戦闘指示するフリをしながら、相方である役立たずの恋人へ声をかける。
『こちらスーテラ。この階のボス戦が始まったら、開幕の火魔法の後、外れた火魔法の数と同数の取り巻きにちょっかいかけて頂戴。傷つけるなら目立たないようにお願い』
私が声をかけても、反応は返ってこない。
よかった。ここで反応する間抜けだったら邪魔になるから殺してやろうかと思っていたわ。
それくらいの脳はあるみたいね。
ボス部屋にたどり着いたので、ここからが本番だ。
開幕にミーナが遠距離から火魔法を使う。
ここで相方はしっかり仕事をしてくれたらしい。
盾役であるリョウの敵を抱える数が段々と増えていった。
私は本命の魔法を仕込みながら、的確にモンスターを減らすために指示を出す。
『右二匹はコレド一人で対処して。倒さなくても逃げ回りながら時間稼ぎしてくれるだけでいいわ。サティスはなるべくリョウからモンスターを引き剥がすように攻撃して、シーバはサティスに寄り始めた敵へバックアタック。ミーナとリドルは魔法でリョウに寄っている敵を減らして。ルファは回復お願い』
私の指示通りに動き始めるメンバー。
その途端、リョウが火だるまになった。
「リョウさん! 大丈夫ですか!?」
リドルが慌てたように声をかけるも、アピールタイムのスキル効果が残っていたのか、火だるまになっていたリョウは無惨にもボスに殺された。ルファの回復が間に合う間も無く蒸発。
皆の動きが一瞬固まるも、ここで全滅を目指す気はない。露骨すぎるからだ。
私をパーティーメンバーだと思わせるためにも、全力で処理指示を出す。
『ぼーっとしないで! イレギュラーが起きたけど、ミーナ以外はさっきと同じ! ミーナは臨時で壁をして頂戴!』
一瞬崩れたので少し時間はかかったが、予定通りにボスを倒した。
そして、ボス部屋の奥にある休憩所で役立たず追放会議が始まった。
真っ先に声を上げたのはコレドだった。
「焼死なんだから、下手人は一人しかいないと思うが……ミーナ、何か言い訳はあるか?」
すると、ミーナが慌てたように反論する。
「私はスーテラ殿の指示に従って魔法を使っただけだ! 確かに狙いが外れたのはいくつかあったが、断じて味方に向かって撃ってなどいない!」
その言葉に、皆の目が私に向く。
そう、私が仕込んだ魔法によって死んだから、ミーナは殺してない。
まぁ、直接当たるような角度で打つように指示も出してないけど。それを言おうと思ったら、私の疑いを晴らそうとする人が現れた。
「俺はスーテラの指示に従って攻撃をしていたが、集まった敵はすぐにいなくなった。それは皆の攻撃がスーテラの指示通りに集中していたからだと思うが?」
意外にもイカサマ三人組のうちの一人、シーバが私の味方をする。
私が的確に処理指示を出したのが効いたかな。嘘の能力申告もバレてないみたいだしね。
合いの手を打つように、さっき助けてあげた子であるルファが補足した。
「そうですよね。仮にスーテラさんが役立たず陣営なら、すぐに殲滅できるように指示するメリットがないですもんね。できれば遅延させて、あわよくば全滅を狙うはずです」
ルファの言葉に納得の言葉をこぼすイカサマ三人組。
良い流れだわ。
私はダメ押しをする為、用意しておいた策を使う。
「誰がモンスターを引っ掛けたか私が確認できれば良かったんだけどね。でもちょっと引っかかることがあったの。そこで提案なんだけど、釣られたモンスターの死体を確認して、何か手がかりがないか調べてみない?」
私の提案は可決され、議論を保留にして皆で取り巻きモンスターの検死をする事になった。
相方が心配そうな顔をしているのが見えてしまい、舌打ちしたくなる。
まぁ、このレベル帯の人に期待しすぎるのもよくないけどさ。
内心苛立ちながらモンスターの死体を調べていると、コレドが声をあげた。
「おいおい、こりゃどういうことだ? 戦っている時は気がつかなかったが、全部の敵に焦げ跡がついてやがる」
イカサマ三人組の一人であるサティスもミーナに疑いの目をよせる。
「やっぱりミーナが敵を引き寄せて、どさくさに紛れてリョウを殺したんじゃないか?」
「違う! 私はそんなことしてない! 指示通りに動いただけだから、仮に私の攻撃でリョウ殿が死んだのなら、それは私じゃなくスーテラ殿のせいだ! 雑魚敵も大方スーテラ殿が弓で集めたのだろう? その焦げ跡は戦闘中についたものに違いない!」
私が言葉を返す前に、リドルが反論する。
「でも、矢が刺さっていない死体もありますよ?」
相方に釣り役をやらせたからね。
ここでその意図に気がついてくれる相方ならいいけど。私がしばらく様子見していると、ルファが声を上げた。
「私は後衛だったから分かるんですけど、開幕のミーナさんの攻撃がいくつかボスから外れていました。これもスーテラさんの指示だったんですか?」
私が答えようとしたら、ミーナが割って入った。
「いや……それは単に私が下手だっただけだ」
「でも私、知ってるんですよ。その外した数と、引き寄せられた敵の数が同じだって」
ルファのその発言は、状況を決めるに足るものだった。
「なんだと? それは本当か?」
コレドがミーナに詰め寄るも、ミーナは焦ったように否定するだけ。
「そんなの知らないぞ! 外れたのがたまたま敵に当たっただけだろう!?」
いい感じに熱くなってるわね。
もう少し加熱させられそうかしら?
「私、さっきちょっと引っかかることがあるって言ったじゃない? それがルファの言ったことなのよね。気がついていたのは私だけじゃなかったのね。同じく後衛から見ていたリドルはどう? ミーナの攻撃に合わせるためによく見ていたと思うのだけど」
魔術師のリドルは困ったような顔をして、こちらに答える。
「ごめんなさい。私、ミーナさんの着弾した魔法しか見てなかったので、外れたのが取り巻きに当たったかどうかまでは分からないです。でも言われてみれば、外した数が敵の数と同じ気はします」
「そんな、リドル殿まで! 私は誘き寄せてなんかいないのに!」
言い訳するミーナに、コレドが言う。
「俺はやっぱりミーナだと思うが」
「だから私はやってなどいない! スーテラ殿の指示のせいかもしれないだろう!?」
――残り三十秒。
時間が少なくなってきた。ヘイトは十分ミーナに集めたけど、ここで彼女に死なれては困る。
まだ利用できるからだ。私は彼女を二階層まで生き残らせる為、議論の保留を提案した。
「もうすぐ時間みたいね。残り少ない時間で言い合いしても埒があかないし、投票は一旦保留でいいかしら?」
けれど、それはコレドに否定される。
「そんなことしなくてもここでミーナを追放すれば良いと思うんだがな」
あー、ちょっとやりすぎたかな。ここでミーナを追放されたら困るから、私は不自然にならないように庇いに行った。
「ミーナがなんらかの形で利用されていただけだった場合、パーティー陣営の数を減らすことになるから危ないわ。既に一人減っているのだから、ここで追放すると後二人で同数になってゲームが終わる可能性があるのよ?」
あくまでパーティー陣営の視点で話すのが溶け込むコツだ。
さて、これでどうなるか。
一番多く票を集めた行動が優先されるから、ミーナにヘイトを集め過ぎていて彼女が追放された場合は、作戦変更する必要が出てくる。
まぁ、それでもなんとかなる算段はあるけど。
ちなみに同数の場合は再投票。それでも同数になったらその回の投票は無効となる。
もしかしたらスキップとミーナで票は割れるかも。
――残り十秒。
当然、私はスキップだ。
私はステータスを操ってスキップに票を入れた。
――三。
――二。
――一。




