私の悪い癖だな(銀髪の少女:スーテラ)
イカサマされた子に過去の自分を重ね合わせてしまったからか、思わず間に入ってしまった。
目立つ為にやったとはいえ、少し衝動的だったかもしれない。私の悪い癖だな。
まぁ、助け舟を出したからといって、あの子がそれに乗れるかは別の話なのだけど。
チャンスを掴めるかは、名前も知らないあの子次第だ。例え敵に回ったとしても、手を抜いてやるつもりはない。
そんな事を考えながら待っていると、頭の中にアナウンスが響いた。
――ゲームを開始します。メンバー総数は八名で、ダンジョンは五層です。このパーティーには役立たずと、役立たずの恋人が紛れ込んでいます。ダンジョンを踏破するまでに役立たずを見つけだし、追放してください。
――それでは健闘を祈ります。
――貴方の立場は『役立たず』です。
私がパーティー陣営に所属すれば五人を勝たせてやれると豪語したけど、まさか役立たず陣営になるとはね。
パーティー陣営の方がなりやすいのに。
まぁ役立たず陣営とパーティー陣営でステータスが変わるわけじゃないから別にいいか。
仲間になる人数が変わるだけだ。私はどちらでも構わない。
さっきの子が勝つには、七分の一を引いて私に相乗りするか、それとも私を役立たずだと見抜いて打ち破るかのどちらか。
役立たずと役立たずの恋人はお互いを認識できるから相方の名前は分かるのだけど、誰が誰だか一致しない。
果たしてさっきの子なのだろうか?
まぁどっちでもいいけどさ。
役立たずの恋人は、死亡しても役立たずさえ勝利条件を満たせば自動で勝利だから、上手く身代わりになる為に目立ったり、私の為にパーティー陣営を殺害してくれる人なら助かるなぁ。
まぁこのレベル帯なら一人でもキャリーしてあげる事はできるけど。
私が死んだら役立たず陣営の負けだから、せいぜい足は引っ張らないようにして欲しいな。
考え事している内に全員揃ったので、会話の主導権を握る為、真っ先に自己紹介しに行った。
「私が誘った勝負だし、まず私から自己紹介といこうかしら。私の名前はスーテラ。現実のパーティーではスカウトをやってるの。武器は弓で、伝令術を使えるわ」
私が言うや否や、先ほどの勝負でイカサマの音頭を取っていた男が不審げに声をあげた。
「伝令術ぅ? そんなの何に使えるんだよ。役立たずっぽい能力だな」
はんっ。やっぱり低レベル帯をカモにしているようなヤツね。言ったことをそのまま信じるなんて才能がないわ。まぁ信じてくれるなら、その通りに演ずるだけよね。
「私の武器は弓だし、後衛をしながら逐一状況をパーティー全体に報告できるのよ? 役立たずが動きにくくなるから、かなり使える能力だと思うけれど。そうでなくとも、現実の高難易度ダンジョン攻略で使えるのに。まさか賭博用仮想ダンジョンしか潜ったことないの?」
ちょっと煽っただけで、男は顔を赤くしている。
言い返してくるかと思ったけど、その前にさっき助けてあげた子が声を上げた。
「まだゲーム始まったばかりなのに、関係ない所で喧嘩しないでくださいよ。さっきのパーティーとほぼメンバー変わりませんけど、一人増えたので改めて自己紹介させていただきます。ルファです。職業はシスターで、回復魔法と光魔法が使えます。よろしくお願いします」
どうしてシスターが追放遊戯なんてやってるのか不思議だけど、まぁ人には色々あるわよね。
そう思っていたのに、私につっかかってきた男が無粋な事を言い出した。
「あぁ? さっきは回復魔法が使えるとしか言ってなかったじゃねぇか。というか、シスターがなんで賭博なんてやってんだ。金が欲しいなら民衆にお説法説いて巻き上げてればいいだろ」
この男、いちいち気に障るような言い方するわね。わざと怒らせて冷静じゃいられないようにする策なのかしら。私も煽ったからあまり人のことは言えないけど、嫌な遊び方する奴ね。
こういうのがいると一緒に遊んでいてあんまり楽しくない。
他の人も嫌そうだけど、顔に出す程度だ。
文句を言わずにいられないのは私だけなのか。
あまりに不快だったので、私は男の振る舞いに口を出した。
「あのね、そうやっていちいち突っかかられると進まなくなるからやめてくれないかしら?」
「こいつさっきは回復魔法を自己申告した癖にろくに使ってなかったんだぞ。シスターってのが嘘だったら、迷惑を被るのは俺達だ」
「あっそ。じゃあ嘘だったらいけないから、私の能力も証明してあげる」
まぁ、申告したのは嘘の能力なんだけど。
でも、能力として申告したからには同じことができる。
私は喚く男を対象に魔法を使い、大きな声を出した。
すると、ヤツは耳を押さえて悶え苦しんだ。ざまぁみろ。
「ふざけんな! 大声で耳元に伝令よこす奴があるかよ!」
「あら? こうやって体験してくれる人がいた方が皆も分かりやすいんじゃなくて? これで私の能力は証明できたでしょう?」
私の能力もいい感じに誤魔化せただろうし、丁度いいデコイだわ。
これに関しては感謝しないとね。
それにしても進行が遅い。まだ二人しか自己紹介できてない。
内心呆れていると、イカサマ三人組のうち、心付けがどうとか言っていた男が口を開いた。
「シスターなら回復魔法はちゃんと使えるんだよな? さっきは切らしていたように思うが」
私に対して何か言うのかと思ったけど、さっきのルファって子に対してなのね。
私が能力の確認をしたから、そのついでって事かしら。
ルファはしどろもどろになりながら受け答えをした。
「……あれは役立たずでしたので」
まぁ観戦者目線でも明らかに回復不足で全滅狙ってるなと思ったからね。初心者だけあって、その辺のヘイトコントロールは下手なのだろう。無自覚でやらかすだろうから、あまり相方にしたくないタイプだ。
「なら今度はしっかりやってくれよ。それから、他に使える魔法もあるんだよな? 確か光魔法だったか?」
今度は手を抜かないようにと、ルファは男に釘を刺されている。この男はパーティー陣営だから、なるべくそちらに有利になるよう動いているらしい。まぁ基本通りって感じね。男の言葉に、ルファが使える魔法を答える。
「実は光魔法は目眩しくらいしか使えないんですよ」
「それだけか。まぁいい。本命はそっちじゃないからな。シスターなら加護は使えるんだよな?」
「まぁ、はい。シスターですから、当然」
「なら皆の分を頼む。攻撃できるなら魔力を温存して貰うべきだったが、回復だけなら上手いこと回せるだろう?」
「回復が少なめになってもよければできますよ」
「ボスを倒したら魔力は回復するだろう? 一階は上手くやりくりしてくれ」
ルファはなんだか嫌そうな雰囲気を醸し出している。
これはたぶん、光魔法は低く見積もっていそうね。恐らく軽い攻撃ならできそうだわ。
ボスを倒したら追放会議ができるのだけど、そこは休憩地点にもなっていて、体力と魔力が全回復する。加護は一回かけて貰えれば最後まで持続するから、燃費が良いのよね。シスターはパーティー陣営にとってかなり重宝する職業だ。
件のルファは、受け答えついでに男へ誰何した。
「わかりました。ところで、新しくメンバー増えたので自己紹介して貰えますか?」
名前わからなかったから助かるわー。
殺すために、なるべく自己紹介はしっかり聞かないとね。
「サティスだ。急所必中というスキルを持っている。武器は投げナイフだ。近接は向いてないから、中衛をしようと思っている」
職業は言わないのね。たぶん三人とも盗賊だとは思うけどさ。後ろ暗いことがあるやつは職業をごまかす傾向にある。まぁ、私も本職を言ったわけじゃないけれど。
そんなことを思っていると、イカサマ三人組のうち、役立たず発見器としてデコイになっていた奴が自己紹介を始めた。
「俺はシーバ。武器は双剣で、暗殺術という背後から攻撃した時に攻撃力があがるスキルを持っている。前衛で戦うが、スキルの性質上、壁役はできない。よろしく頼む」
シーバの挨拶が終わると、私の大声に耳を抑えていた男が復帰したようで、その後に続いた。
「コレドだ。俺のスキルは自己加速。中衛で一撃離脱をしながら戦うつもりだから壁役は他にお願いしたいが、さっきやってくれていた奴いたよな?」
これでイカサマ三人組全員の自己紹介が終わった。
今のところ、このゲームでイカサマをしている様子はない。
コレドの壁役要請に答えたのは、金髪の軟派そうな男だった。
「壁やってたのは自分ですね。戦士のリョウって言います。アピールタイムってスキルを持っていて、敵に狙われやすくなる代わりに攻撃力があがるっす。武器は剣と盾なんで、さっきと同じタゲ取りやろうと思ってるっす」
「頼んだ。前衛が少なめだが、あともう一人近接のやついなかったか?」
その言葉に、赤髪の女性が名乗り出る。
「私だろうか? 私はミーナ。魔法剣士をやっていて、使える魔法は火属性だ。遠距離もできるが、剣術もこなせる。この場合は前衛に行った方がいいだろうか?」
ミーナの問いかけに、眼鏡をかけた女性が声をあげた。
「私は魔術師で風魔法が使えます。ミーナさんに前衛やって貰うのはいいのですけど、戦闘突入時に火魔法を撃ってもらうことはできますか? 私の風魔法で増幅させることができるので」
「わかった」
これでパーティー八人全員の自己紹介が終わった。
名前、職業、能力、武器、立ち位置をまとめるとこうなる。
スーテラ――スカウト、伝令術、弓、後衛
ルファ――シスター、光魔法・回復魔法、杖、後衛
サティス――職業不明、急所必中、投げナイフ、中衛
シーバ――職業不明、暗殺術、双剣、前衛
コレド――職業不明、自己加速、剣、中衛
リョウ――戦士、アピールタイム、剣・盾、前衛
ミーナ――魔法剣士、火魔法、剣、前衛
リドル――魔術師、風魔法、杖、後衛




