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ーーあなたの負けです。(スーテラ)


 ルファに詰められた時はどうなるかと思ったけど、運は私に味方した。

 なぜなら私は手を下してないけど、役立たずの恋人だったのは本当だったから。

 

 相方がどうやって私になすりつけたのかは知らないけど、何かする前に死んだら貢献度が稼げなくて相方の一人勝ちになる。

 まだ挽回のチャンスはあるから、かなりラッキーだった。

 そう思っていた数分前の自分が甘すぎて、もし自分じゃなかったら殺してやるところだ。

 

 なんでこんなことになっちゃったんだろう。

 私は死刑宣告を食らった気分になりながら、一人でもう一グループと合流する。

 相方は生きているからここでパーティーメンバーを一人無理矢理殺せば同数決着になるけど、それだと私の勝ち目はない。

 

 三人も殺した相方の貢献度が高いのは火を見るより明らかだ。

 そして、証拠だけ見れば私がガンツとルファを殺したことになり、詰みの状況が発生する。

 

――緊急会議を開始します。

 

「随分強引ですが、やっぱりスーテラさんが役立たずの恋人で間違いなかったのでは?」

 

 そら、早速詰められた。

 マーキスの言葉に、私は最後の抵抗を試みる。

 

「だとしたら、この会議が始まる前に一人殺して終わらせると思わない?」

「それはそうですけど……」

 

 とはいえ、ここで生き残っても結果は変わらなさそうだ。

 三人も殺されていたら、貢献度で巻き返せない。

 そして、ここで相方の罪を暴露しても、その時点でゲームが終わるので私の勝ち目はどちらにせよ残されていないのだ。

 

 そもそも利敵行為は負けだしね。

 だから、詰み。

 頭では挽回の方法を模索するも、心の方は既に諦めの境地だった。

 諦観の念に苛まれていたその時、サシャがこんな事を言い出した。

 

「これ、少しおかしくないか? スーテラが役立たずの恋人だったら、折角二人を無理矢理持っていったのに、不意打ちでトドメを刺さず、のこのこと姿を表すのは変だ。二人殺したのなら、三人目も殺して貢献度も上回って一人勝ちじゃないか。なんでそうしなかった?」

 

 私はサシャの問答に、力無く答えた。

 

「私が殺したわけじゃないからよ」

「どういうことだ……二人が自死したとでもいうのか」

 

 利敵行為をしたら負けになるので、嫌々でも相方を庇うような嘘をつくしかない。

 

「……モンスターに、殺されたわ」

「二人ともか? そんな馬鹿な話があるか。回避壁とシスターだぞ? そんな簡単に死ぬ訳ないだろう。その時アンタは何をしていたんだ」

「何もしていなかったわ」

 

 サシャは大きくため息をついたかと思うと、話題を切り替えた。

 

「もういい。役立たずを庇っているから話にならん。私達四人の中から犯人を探すべきだろう」

 

 だが、ジェスがそれに反対する。

 

「そんなことしなくても、先にスーテラを追放すれば良かろう。万が一投票先が間違っていた場合、同数決着だぞ」

「まるでパーティー陣営みたいに言うが、アンタが一番怪しいんだぞ。さっきは歩き疲れたとか言って、一瞬私達から離れたじゃないか。その間に何かしたんじゃないのか」

「少し休んでいただけだ。それに、あんな一瞬で二人を殺して戻って来られるわけなかろう」

 

「だが、私達の中に必ず役立たずがいる。状況的にはアンタが黒だ。私の勘がそう言っている」

「堅実にモノを考えられない娘だな。スーテラを追放しなければ、同数決着がありえるのだぞ?」

「そこまで己の勝ちを確実にしたいのか? 私は自分が間違ってなかったという証明のために、アンタに入れる。そうすれば、観客席で見ているスポンサーに有能さをアピールできるからな」

「好きにするがいい。堅実な判断を下せない馬鹿者として見られるだけだろうが」

 

――残り三十秒。

 

 緊急会議は、通常の会議より相談時間が短い。

 二人が言い合っている間にも、時間が尽きそうだ。

 仮にこれでジェスが追放されたとしても、私の負けは変わらない。

 この投票が終わったら、私はアイツの奴隷か……。

 

 仕方ない……こうなった以上は、奴隷になって内部の情報を探るしかないだろう。

 私の上司から、万が一勝負に負けたらそうしろと言われているし。

 上からの命令なら、貞操の一つや二つは捧げねばならない。

 

 嫌だけど、これはもう仕方ないのだ。

 けれど、ルファはなんとか助けてあげたいな。

 彼女自身というよりは、孤児院の子供達を、だけど。

 ルファの事を考えていたからか、ステータスを操作してスキップにいれる寸前、ふいに彼女の声が聞こえた気がした。

 

「ジェスにいれてください」

 

――残り十秒。

 

 投票時間が残り少なかった焦りと、うわの空で考え事をしていたからか、思わず聞こえてきた言葉の通りにしてしまった。

 やば……利敵行為しちゃった。

 

――三

 

 まぁでも、バレないしいいか。

 

――二

 

 誰がいれたかまでは分からないようになっているし。

 

――一

 

 そもそも影響ないだろうし?

 

――投票時間が終了しました。ジェス:三票 スーテラ:三票

――投票数が同じであった為、再投票となります。議論をしなおしてください。


 え? なんで六票?

 私が呆然としていると、ジェスが怒鳴った。

 

「どういうことだ! なぜワシに三票も入る!」

「待ってください。そもそもなんで六票なんですか? 今この場にいるのは五人ですよ!?」

 

 マーキスが疑問の声をあげると、そいつは私の隣に姿を現した。

 

「それは私が生きているから、ですね」

 

 陽炎のように現れたルファは、飄々とした態度で宣った。なるほど。私が教えた隠蔽魔法か。それにしても――。

 

「なぜお主が生きておる! 確かに死んだはずでは!」

 

 ジェスが叫ぶと、ルファは嫌味ったらしく煽るように述べた。

 

「あらあら? なんで領主さんは、私が死んだと確信を持って言えるんでしょう? 別のグループだったはずなんですけどね?」

「ぐっ……」

 

 失言をしたと悟ったジェスは、フェイの煽りに対し何も返さなかった。

 私は彼の失態の理由を知っている。なぜなら――。

 

「理由は単純。あなたが私を殺したから。ですよね? 役立たずの領主さん?」

「……殺したなら、なぜ生きておるのだ?」

 

 ジェスが悪あがきをすると、ルファはとんでもない真実を告げた。

 

「蘇生魔法。この勝負のために覚えたんですよ」

「蘇生魔法、だと……」

 

 蘇生魔法ですって? そんな高度な魔法をいつのまに……。

 でも思い返せばその節はあった。

 救出したメアの服には、明らかに致命傷のような傷跡があったから。

 それにも関わらず無事だった事や、ルファが気を失っていた事にも合点がいく。

 

 私がルファを孤児院に連れ帰ろうとした時、相当な人数回復していたのを見た。

 毎日あれだけの人数を回復していたのなら、そんな魔法を覚えるのは不可能ではない。

 そして私達はまんまと術中に嵌まったのだ。

 

 あれだけの仕込みといい、この戦いに向けて入念に準備していたのだろう。

 そりゃ出し抜かれる訳だ。もう私が助けてあげた頃の面影もないわね。

 

 ここまでやったなら、ちゃんと逆転勝ちしなさいよ?

 負けたら、あなたも私も地獄行きなんだから。

 万が一負けた場合でも、あなたは助けてあげたいけどさ。

 私が思惑にふけっている間も、ゲーム内の状況は進む。

 

「領主さんは、大商人ですよね?」

「そうだが、それがどうかしたか?」

 

 ジェスに問われたルファは、滔々と述べる。

 

「私の亡くなった両親も、商人だったんです。私はすごい商人だと思っていたのですが、彼ら曰く、上には上がいるとのことでした。もっと凄い商人は遠い距離も一瞬で踏破する魔法を使えるようになって、安全に沢山の交易をできるんだ、って。そう憧れるように言っていました」

「その思い出話がなんなのだ?」

「つまり何が言いたいかと言うと、あなたもスーテラさんと同じで、転移魔法、使えますよね?」

「そんなの、どこに証拠があるのだ!」

 

 なるほど。

 このパーティーでは私だけが使えると思っていたのがそもそもの間違いか。

 確かに、スカウトの極地に至る以外にも、習得する方法はあると聞いていた。

 それが大商人だったわけか。

 私の情報収集能力もまだまだ未熟ね。

 

「転移魔法の証明はできませんけど、殺された当人が証言するんですから、誰がやったかは自明ですよね? 当然、投票するのはスーテラさんじゃなく?」

 

 ルファが周りに促すと、サシャが自慢げに乗った。

 

「ジェスだな。やっぱり私の読みは間違ってなかったわけか」

「ならばガンツはどう殺したというのだ! 彼はワシが見つけてきた手練れの剣士だぞ! ワシが勝てる訳がなかろう!」

 

 ジェスの悪あがきにも、ルファは冷静に対処した。

 

「貴方は商人です。そして、私はそんな商人のことに少し詳しい。商人のスキルには、負債を持つものに言う事を聞かせて強制的に返済させるものがあります。そして、皆さんは回復薬をただで貰い、沢山使いました。恐らくそのスキルを使い、ガンツさんを操って自害させた。スーテラさんを残す事でヘイトを向けさせ、自分が投票されないようにしたのでしょう。彼女が口を割ることは、利敵行為にあたりますからね」

 

 ルファの推理に、サシャが口を挟む。

 

「だが、そんな魔法が使えるなら皆殺しにすればよかったのでは?」

「技能には基本的にクールタイムがありますから、連続では行使できないのかと。この議論が終わった頃を見計らって、誰かに行使し、同士討ちをさせるつもりだったのでしょう」

 

 ルファが述べると、皆納得顔だった。

そのタイミングでアナウンスが聞こえてくる。

 

――残り三十秒。

 

「こんな、こんなの認めんぞ! 死んだのにゲームに戻ってくる魔法など、イカサマではないのか?!」

「システムができるって認めているんですから、正攻法ですよ。さぁ、観念してください、役立たずの領主さん。あなたは追放です」

 

 皆ステータスを操作し、投票している。

これだけ状況証拠が揃っていれば、追放されるのは私じゃなくてジェスだろう。

 

――残り十秒

 

 決着、ね。

 私は利敵行為をしたと言われないよう、申し訳程度にスキップへいれた。

 さっきやっているから、後で詰められると思うけど。

 

――三

 

 これで私の負け、か。

 

――二

 

 どっちにしても負けなのは変わらないけど。

 

――一

 

 ジェスに負けるよりかは良い気分、かな。


――投票時間が終了しました。ジェス:四票 スーテラ:一票 スキップ:一票

――ジェスが追放されました。ジェスは役立たずでした。

――役立たずが追放された為、パーティー陣営の勝利となります。

――あなたの負けです。残念でしたね。お疲れ様でした。

 

 負けたのに、不思議と悔しさは湧いてこなかった。

 ただ、ここまでの執念で勝利を勝ち取ったルファを褒め称えたい気持ちでいっぱいだった。

 

 それだけ子ども達が大事だったってことね。

わざわざ家出までして修行にあけくれるなんて、不器用すぎるったらありゃしないわ。

 私も負けたけど、それはジェスにではない。

 

 だから借金奴隷にはならない。

 けれどルファの言うことをなんでも一つ聞くことになる。

あまり無茶なお願いじゃないといいけど。

 私は一抹の不安を覚えながら、現実に戻った。

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