次に目が覚めた時には、私達の運命が決まっている(ルファ)
なんだか悪い夢を見ていたような感覚だ。大事な勝負当日にメアが誘拐されて、彼女が殺されかけるという夢。
……夢? 本当に? それならどこからどこまで?
最近追放遊戯ばっかりやっていたせいか、夢と現実の判別が曖昧だ。
そうだ。勝負はどうなったんだろう。あの夢が夢じゃないのなら、もしかして不戦敗?
それは嫌だな、なんて思っていると、誰かに呼ばれているような気がした。
そして、だんだんと感覚が明瞭としてくる。
そうか。今この時間こそが夢の中だったのか。
意識が現実に引っ張られると、私の周りには人だかり。
見覚えのあるテーブルは、追放遊戯の卓だ。
どうやら私は賭場にいるらしい。
誰が運んでくれたんだろうと思っていると、スーテラさんが心配そうに覗き込んできた。
「ようやく起きたのね。お寝坊さん」
「スーテラさんがここまで連れてきてくれたんですか?」
私の質問に、彼女は指ひとつ立てて見せびらかすように振った。
「貸しひとつね」
「返せる状態なら覚えておきます」
手段は定かでないけど、スーテラさんが気を失っていた私をここに連れてきてくれたみたい。
視界の端にはメアもいる。
良かった。ということは、魔法が成功したんだ。
まだ少し身体はだるいけど、仮想ダンジョンに入ればその気怠さもなかったことになる。
私が立ち上がると、スーテラさんがジェスに告げた。
「ルファも起きたみたいだし、早速勝負といきましょうか? ちなみに、これ以上なにかやったらこっちも武力行使にでるから忘れずに」
「わかっておる。が、ワシはなにもしておらんぞ?」
「集めた人間も息がかかっているわけじゃないのよね? こんな事をされると心配になるわ」
「こんな事がなんの事か分からんが、人員に関しては安心せい。今回の勝負は大勢のスポンサーが見ている。有望な働きを見せた者には、気に入ったスポンサーから冒険支援等の契約を持ちかけられる。不正行為を働くと評価が下がるゆえ、そんな事をする輩は居ないと言っていいだろう。大勢が見ている前でそんな事をしたら、信用を失うからな」
「そう。そこは徹底されているのね。安心したわ。じゃあ、改めてルールの確認よ。イカサマはなしで、発覚したら強制的に負け。個人戦であり、三人のうち勝者は一人だけ。チームの勝敗がそのまま個人の勝敗であり、同じチームなら貢献度や死亡順で格付け。そして敗者は勝者の願いを聞かなければならない。あなたの場合は私達を一億の借金奴隷にすることだったわね」
スーテラさんがルールの再確認をし終えると、ジェスが彼女へ問うた。
「それでよい。ちなみに聞くが、お主の願いはなんなのだ?」
「あなた達に願う事はそれぞれ違うから、勝った時に言うわ」
「ならばその機会は訪れないということだな」
「あら。そんなこと言っていいのかしら。勝負の前に小細工したペナルティくらいあってもいいと私は思うのだけど」
本当にね。あんな手を使ってまで勝負に参加させたくなかったなんて。
勝ちに貪欲なのは良い事だけど、限度っていうものがある。私が勝ったらどうしてやろうか。
「ワシは何も知らぬぞ」
ジェスはこれ以上の追求を恐れたか、急くように賭博用の装置に体を預けた。
無効試合になれば私としては助かったのだけど、さっさと始める流れにもっていかれたからどうしようもなかった。
私は卓へ着席する前に、メアに声をかける。
「それじゃあ、観戦席で待っててね」
「ルファ姉、個人戦ってなんのこと? スーテラさんと協力するんじゃ……」
「チャンスを広げるにはこうするしかなかったの。ごめんね」
何か言いたそうなメアをおいて、私も装置に体を委ねる。
しばらくして、強烈な眠気が襲ってきた。
次に目が覚めた時には、私達の運命が決まっている。




