それもこれもルファのせいよ(スーテラ)
スーテラ――スカウト、伝令術(嘘)、弓、後衛
ルファ――シスター、光魔法・回復魔法、杖、後衛
エリヤ――付与術師、付与魔法全般、杖、後衛
シド――シールダー、オールヘイト、盾、前衛
シスナ――職業不明、雷魔法・水魔法、後衛
ゲイン――職業不明、氷魔法、本、後衛
フーガ――銃士、技能不明、銃、後衛
ミラ――アイドル、音魔法・支援、杖、後衛
うーん。なにこのパーティーバランス。
これ、シドは相当黒くない限り追放できないわよ。
それに役立たず陣営の隠蔽のしやすさが尋常じゃない。
お互いに罪をなすりつけやすすぎる構成なのだ。
はぁ。これ、パーティー陣営はしんどいわね。
役立たず陣営だったら色々できて楽しかったでしょうに。残念だわ。
とはいえ、すでに私はヘイトを稼いでしまっている。
何かあったら追放されそうだから慎重に動かないと。
そう思っていたら、案の定いきなりピンチが訪れた。
「先程のルファとスーテラのやりとりで少し思った事があるのだが、二人の言動は少し怪しくないか? 喧嘩しているように見えて、実は役立たず陣営として繋がっているのかもしれない」
学者然とした氷魔法使いのゲインがそう言うと、付与術師であるエリヤが反論した。
「それはこの二人を追放するということか? 私は反対だけどな。不確かなまま回復役を失うのは痛手だし、これだけ尖った編成だと指示役も欲しい。あと下世話な事を言わせて貰うと、階数が進まないと賭け金が少なくなる。だから早々に終わるのは少し勘弁して欲しいな」
「それで負けたら元も子もないと思うのだが。まぁいい。いずれ役立たず共は尻尾を出す事になるのだから。それがこの二人の中にいなければいいけどな?」
嫌味たらしいやつね。まぁしょっぱな身内ノリで口論した私達が悪いんだけどさ。
それもこれもルファのせいよ。
負けても構わないと思っているからか知らないけど、行動が後先考えなさすぎなのよ。
情報引き出すにしても、やり方って物があるでしょうに。強引すぎるったら。
私が考え込んでいると、エリヤが進軍を促した。
「納得したなら攻略を始めるか」
……いけない。
関係ない事を考えすぎた。
気を取り直して、ダンジョン攻略に集中しなきゃ。
前一人、後ろ七人という歪な陣形で始まった行軍は、何故かとても安定していた。
理由は単純。火力が高すぎる。後衛がいくら攻撃してもシドのオールヘイトで全部前に行くので、火力管理をしなくていいのだ。
私が戦闘開始の合図を出した瞬間、敵がどんどん溶ける。
なんなら回復がいらないので、途中からルファも攻撃に参加していた。
攻撃魔法もしっかり使えるようになっているわけね。
これは前と同じだと思わない方がいいかも。
そんなことを考えているうちに、ありあまる火力で一階のボスまでたどり着いた。
とはいえ、全てが噛み合っているのは今だけだ。誰かが死ねば瓦解し始めるだろう。
しかし、なんというか……。
「ちょっと、音がうるさすぎやしないか?」とエリヤがぼやく。
そうなのだ。倒すのが早いのはいいのだけれど、雷や銃はおろか、超重量の盾までドカンドカンとやかましい。
戦闘が始まると何も聞こえなくなる。
果たして私の伝令も聞こえているかどうか。
私もルファの指示が聞こえないし、始動だけ決まったらあとは流れで指示を出してしまっている。ルファもそれが気になったのか、指示役についてひとつの提案をした。
「そうですね。これでは私が指示を出してスーテラさんに伝えて貰うのは効率悪いと思います。戦闘途中からスーテラさんが指示出しているみたいですし、私が挟まるのはやめにしますか」
事故った時に責任をなすりつけられなくなるけど仕方ないか。
私に指示権が移って、一階ボス戦に突入。
しかし、ここでシスナが私の指示を無視。
最初に水魔法をボスの巨体にぶっかけ、雷魔法を連打し始めた。
『ちょっと、そんな指示出してないでしょ?』
私がそう言っても、シスナはしらんふり。
その時、事件は起こった。
雷の一条が私たち後衛のあたりに迸る。
光った方を見れば、一つの遺体。
ぼろぼろで、もはや誰のものか分からない。これでは回復魔法なんて無意味だろう。
私は早急に追加指示を全体へ出した。
『雷がメンバーの誰かにあたった! シスナは雷魔法をやめて! それ以外は全力でボス削り! 体力はあと少しのはずだから!』
その指示の二十秒後、一階ボスが倒される。
メンバーを確かめると、エリヤの姿がなかった。あの遺体はエリヤのものらしい。
これで全体の火力は落ちるだろう。
それはそうと。
「シスナ、あんた私の指示を無視したでしょ? 戦闘が始まった途端大火力だして。そのおかげで敵どころかパーティーメンバーまで減っちゃったけど?」
「指示なんてすぐ聞こえなくなるからあってもなくても一緒じゃない?」
「私が指示していたら人は死ななかったけどね」
「音がうるさいんだから指示を聞く気が起きなくなってもしかたなくない?」
シスナの言い訳に、ミラがおずおずと手を挙げた。
「あのー、私の音魔法で騒音軽減できますけど、どうしますか?」
その言葉に、シスナがキレた。
「どうしますか、じゃないわ! できるなら最初からやりなさいよ! 気が利かないわね!」
一番うるさかったの、あんたの雷魔法だけどね。
指示も無視するし。こいつは追放した方が良さそうね。
もう一つ、こいつを追放しておかないと危ない理由があるし。
「あまりにも危ないからシスナは追放した方がいいと思うわ。協調性もないみたいだし」
「ちょっと! なんでアタシが追放されんのよ!」
「あなたがいると、これからもっと被害が出るのよね」
「それじゃあ出力抑えれば文句ない?」
「そうじゃないのよ。あなたの雷魔法と、ルファの光魔法の見分けがつかない。今のも果たしてどっちが殺したんだか」
「ならあっちを追放すればいいじゃない!?」
シスナが憤慨すると、ミラが遠慮がちに声を上げる。
「ひ、一人しかいない回復職と代わりがいる攻撃職を比べるのはおこがましくないですか?」
おどおどしている割に言うことは言うのね。
しかし残念ね。あわよくばルファを追放したくてヘイト向けたのに。
エリヤが死んだ攻撃は、シスナとルファで正直半々くらいだ。
つまりどっちがやったか分からない。
でもこれでルファはかなり動きにくくなるだろう。
仮にシスナが役立たずだとしても、追放誘導したおかげで貢献度は私の方が上だろうし。
シスナとミラが何かしら言い合っているうちに、時間が過ぎる。
――残り三十秒。
「とりあえず、シスナに投票でいいんだな?」
シドに尋ねられたので、私は問いに答える。
「そうね。そしたらもう雷魔法だか光魔法で人が死ぬことはないでしょ」
光魔法と口にしたことが不満なのか、ルファが口を挟んできた。
「私が怪しまれているのは変わらないんですね」
「そりゃあ、だいぶ強い光魔法が使えるみたいだからね。雷魔法に偽装するくらい訳ないんじゃない?」
「まぁいいですよ。私じゃありませんから」
「どうだか」
――残り十秒。
未だぎゃーぎゃー喚いているシスナを尻目に、私はステータス画面を弄って彼女へ投票した。
――三
――二
――一
――投票時間が終了しました。シスナ:六票 ミラ:一票
――シスナが追放されました。シスナは役立たずではありませんでした。




