これが子供達に慕われていたシスターの姿!?(スーテラ)
――ゲームを開始します。メンバー総数は八名で、ダンジョンは五層です。このパーティーには役立たずと、役立たずの恋人が紛れ込んでいます。ダンジョンを踏破するまでに役立たずを見つけだし、追放してください。
――それでは健闘を祈ります。
――貴方の立場は『パーティーメンバー』です。
私はパーティーメンバーなのね。
単純に人数比で考えると、ルファもパーティーメンバーになっている確率の方が高い。
勿論彼女が役立たず陣営という場合もあるだろうけど、確率を考えればここは積極的に貢献度を稼いでおきたいところね。
そう思って、私は最初の発言を貰いに行った。
「とりあえず自己紹介させて貰うわね。私はスーテラ。現実ではスカウトをしているわ。武器は弓で、伝令術を使えるの。基本後衛で全体を見渡せるから、指示を皆に飛ばそうと思うのだけどどうかしら?」
私がそう言うと、ルファがすかさずけしかけてきた。
「スーテラさんに質問があります。弓につがえる矢には仕込みをしてあると思うのですが、その効能を教えてください」
なるほど。まずは私の手の内を明かしたいわけね。
素直に応じてやるわけがないけど。
「理由を聞いてもいいかしら? 特にないなら、無闇に教えると役立たず陣営に利用されるから嫌なのだけど」
「私はシスターで、回復魔法を使えるので。間違って味方に当たってしまった場合、効能が分かると素早く解毒できるんです。あ、私の名前はルファといいます。後が詰まるといけないので、自己紹介をこれでかえさせていただきます」
光魔法を隠した?
私がいない場面ならスムーズな自己紹介で技能を一つしか開示しないのは上手いと思うけど、なんで私に怪しまれるような動きをするんだろうか。
とはいえ光魔法を隠されたままだと動きにくい。
何も知らないふりをして引き出しておくか。
「シスターさんなら複数の技能を使えることがあるけど、他にはなかったりしない?」
「そうですね。別に隠したわけではないのですが、光魔法が使えます。スーテラさんとは一度同席したことがあるので覚えていらしたんですかね?」
「そうね。そんなこともあったわね」
私がそう言うと、ルファの顔に笑みが浮かんだ気がした。
「以前の卓の事を引っ張り出すのは若干のマナー違反なので憚られるのですが、勝敗に関わる事なので言わせていただきますね? 以前のスーテラさんは役立たずで、同じように指示出しを申し出ました。その時のように役立たず陣営だった場合、パーティー陣営はかなり不利になります。その記憶がある以上、素直に任せるのは不安なんですよ」
くそっ。光魔法のことを言わなかったのは話の誘導をする為か。こざかしい。私が役立たず陣営かもしれないという印象も植え付けられて、出だしは最悪と言える。
だけどね? そっちがそのつもりなら、私にも考えがあるのよ。
「そうね。私一人で指示出ししたら操っていると思われても仕方ないかもね。なら、ルファも後衛だろうから、隣で私が貴方の指示を聞く。それを私が全体に拡散する。それでどう?」
仕方ないから、貢献度は譲ってあげる。けれど、回復しながら全体を見回して指示を出すなんて芸当ができるかしらね?
利敵行為は禁止だから敵対陣営でないなら直接殺しには行けないけど、指示出しに失敗したら詰めて追放してあげる。
「わかりました。それでいいですよ。あぁ、そうそう。スーテラさんの本当の技能は伝令術じゃないみたいですよ。私が回復魔法以外を使えることもバラしたわけですから、これくらい言ってもいいですよね?」
こいつ! 性格悪いなホント! これが子ども達に慕われていたシスターの姿!?
まるでおあいこみたいに言っているけど、情報の密度が全然違う。
あいつと私はそれぞれ技能の詐称と隠蔽で、少し性質が異なる。
両方ともその技能で悪さするのは一緒だが、あいつは明かしても別に痛くないのに対し、私は明かすことができない。バレると今後かなり動きにくくなるからだ。
今後というのは、一億かかった勝負の事も含めての話。
恐らくあいつはこの勝負自体にこだわりがない。
真の目的は、ここで私の手の内を明かすことだったんだ!
嵌められた。
でもここで素直に伝えるのは悪手だ。
私は多少疑われるのと引き換えに、自分の秘密を守る選択をした。
「そうね。声に関わる技能だけじゃないのはホントだわ。でも信じてもらえないかもしれないけど、今回は伝令術以外使うつもりがない。他の技能を使ったら追放してくれていいわ」
「そうですか。あくまで隠したままでいる、と」
「あなたにも隠しておきたい魔法があるでしょう? 私と一緒に修行した魔法とかね? とはいえ、これ以上内輪の空気でやるのはよくないからここまでにしない?」
「そうですね。では最初の質問に戻りますが、使える矢の種類を教えてもらえますか?」
ちっ。覚えてたか。このままうやむやにできると思ったんだけどな。
これ以上疑いの目を向けられても困るので、私は素直に矢の種類を話した。
「毒矢、痺れ矢、眠り矢、重鈍矢、爆裂矢の五種類ね」
私が答えると、それまで置いてきぼりだった他のメンバーの一人が質問してきた。
「横から失礼。最初の三種類はまだわかるのだが、重鈍矢と爆裂矢というのは?」
「重鈍矢は、その名の通り当たると身体が重くなる矢よ。動きが遅くなるから、敵を時間差で釣りたい時に使うわ。爆裂矢の方は魔法が付与されていて、当たった箇所が吹き飛ぶ。純粋に火力を重視したい時に使うわね」
「なるほど。付与矢も使うのか。それなら私がいくつか付与してあげようか? 私は付与術師だからね。魔法の付与はお手のものさ」
「それなら皆に効能を明かしながら付与して貰える? それと、できればあなたの名前や、他の技能があるなら教えて欲しいわ」
誘導の付与とかされて味方撃ちされたら堪らないからね。
「エリヤだ。あいにく付与しかできない。ただし人物どちらにも付与できる。シスターがいるということは、加護もあるのだろう? 武器の威力がどれだけ上がるか楽しみだね」
話を振られたルファは、臆面もなく提案する。
「そうですね。丁度いいので今皆さんの武器に加護を与えましょうか。それぞれ戦い方を教えてくれると私もエリヤさんも助かるのですが、お願いできますか?」
その言葉に、大盾を背負った大男が先陣を切った。
「俺はシド。シールダーをしている。盾で殴って戦うから、重量を増してくれると助かる」
「盾を重くしたら動きにくくなりませんか?」
ルファの当然の疑問に、シドは大胸筋を張って答えた。
「俺の技能はオールヘイトだ。味方に向かった敵愾心が、全部俺に向かうようになっている。だから弾かれないように重い方がいいんだ。殴りつける威力も上がるからな」
シドの言葉を受けて、エリヤが言う。
「なるほど、わかった。それならあんたの武器には重量増加、あんた自身には筋力増強の付与を施そう。自分の力が増す分には構わないだろう?」
「助かる」
ルファとエリヤは、早速とばかりに付与へ取り掛かる。
先に加護をかけ終えたルファが、話の舵取りをし始めた。
「それじゃあ、次の方」
ルファの言葉に反応したのは、いかにも魔法職といったローブ姿の女だ。
「アタシはシスナ。水魔法と雷魔法が使えるわ。杖には雷属性強化、私には魔力増強をお願い」
第一声で要求を全部言うのね。
気の強そうな人物と言うのは覚えておいて損がなさそうかしら。
「水属性強化はいらんのか?」
エリヤが尋ねると、シスナは無愛想に答えた。
「雷属性の威力を増すためのブースターとしてしか使ってないからね。濡らすだけだから威力はいらないの」
シスナがそう言うと、学者然とした男が会話に入ってきた。
「それなら戦闘に入ったら一旦敵を濡らしてくれるか? 俺の魔法は氷魔法なんだ。濡れていると威力が上がって効率が良い」
「なんでアタシがサポートに回らなきゃいけないわけ?」
「自分が攻撃する時も濡らすのだろう? それなら少し手間をかけるくらい良いではないか」
「仲間に水魔法がかかると誤爆するから嫌」
男とシスナの言い合いになりそうだったので、私は止めに入った。
「それならルファが指示してくれると思うわよ?」
さりげなくルファの負担を増やしてやる。
貢献度は確実に上回られるだろうけど、追放されればそれも関係ないもんね?
そうとも知らず、ルファは提案を快諾した。
「いいですよ。なるべく味方にかからない位置に誘導しますが、強敵と戦う時には多少仲間にかかってもシスナさんに水魔法をお願いすると思います」
「わかったわ。指示を受けるならアタシの責任じゃなくなるだろうしね」
さりげなく責任をなすりつけられる立場になったルファは、その重責を気にしたふうもなく学者然とした男に尋ねる。
「ところで、氷魔法の方はお名前を伺っても?」
「すまない、ゲインだ。よろしく頼む」
名乗ったゲインに、エリヤが確認する。
「ゲインも氷魔法強化と魔力増強で構わないか?」
「ああ、頼む」
しかしなんというか、後衛職に偏ってるな。
そう思って、まだ自己紹介を終えてない二人を軽く見やった。
え、待って待って。
これまずくない?
そりゃ飛び入りだからこういうマッチングもあるけどさ。
私が視線をやったからか、自己紹介の催促だと思った相手は名乗り始めた。
「私はフーガ。銃士をやってる。よろしく」
この人は言葉少なめね。議論だったら捲し立てて押し込めそうな雰囲気だわ。
付与に関わる事だからか、エリヤがいち早くフーガに問うた。
「属性弾は使えるのか?」
「使える」
「何が欲しい?」
「とりあえず全属性十発ずつ」
なんという欲張りセット。
あえて全属性と言うところが少し怪しいかな。
まぁいい。それよりも問題は……。
もう私以外も気がついているらしい。
全員の視線が残る一人に向いた。
「な、なんですか。なんで皆さん怖い顔しているんですか?」
怯えている女の子に、私はとりあえず自己紹介を促す。
「あなたがとても前衛には見えないからね。とりあえず名前と職業と技能をお願いできる?」
「ミラといいます。売れないアイドルやってます。特技は歌って踊る事です」
ミラが気の抜けた自己紹介をすると、シスナがツッコミを入れた。
「売れてないのに特技なの?」
「はう」
ちょっと。ツッコミどころはそこじゃないでしょ。
私は終わりそうな会話に待ったをかけた。
「そうじゃないでしょ。騙されないで。詳しい技能を言ってないじゃない。結局バッファーなの? アタッカーなの?」
「り、両方ですぅ」
「つまり?」
「お、音魔法に職業補正が乗って擬似バッファーができます。でもアタッカーをすると皆さんもダメージを貰うので……」
「攻撃はできない、と」
「そうですぅ……」
気の弱そうなフリしてるけど、わざと迂遠な自己紹介をするあたり、こいつは女狐ね。
下手に押したら逆に喰われそう。警戒しておかないと。
そんなことよりも。
この子が前衛じゃないってことの方が問題で。
空気を察したか、付与術師であるエリヤが皆に尋ねた。
「一応聞いておくが、シド以外で付与があれば前衛できる者はいるか?」
当然ながら全員首を振る。
大して期待もしてなかったのか、エリヤは何も言わなかった。
そっか、やっぱり前衛は一人なのか。
戦略を考えるために、頭の中で全員の情報を整理した。
スーテラ――スカウト、伝令術(嘘)、弓、後衛
ルファ――シスター、光魔法・回復魔法、杖、後衛
エリヤ――付与術師、付与魔法全般、杖、後衛
シド――シールダー、オールヘイト、盾、前衛
シスナ――職業不明、雷魔法・水魔法、後衛
ゲイン――職業不明、氷魔法、本、後衛
フーガ――銃士、技能不明、銃、後衛
ミラ――アイドル、音魔法・支援、杖、後衛




