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6.情報集めの手段

具体的にはどうするのが一番か。

硬い石畳の上で足を止め、私は小さく息を吐き出した。


真っ先に思い浮かんだ最適解は、「クエストを受ける」ことだった。

お膳立てされたメインクエストが存在しない以上、自発的に動かなければ何も始まらない。だが、裏を返せば単発の依頼――クエスト自体はこの世界のどこかに存在するはずだ。

建国という途方もない目的を達成するためには、情報はもちろんのこと、生きていくための資金が不可欠になる。

現実世界と同じように何らかの職に就くことも可能なのだろうが、まずはこの世界の法則の根幹を成す「戦闘」というものを経験しておいて損はない。

何より、不特定多数の人間が出入りし、仕事が斡旋される場所には、自然と金と情報が集まるものだ。

つまり、一挙両得となるのでやらない選択肢はない。


「シエル、クエストを受ける場所はあるか?」


虚空に向かって問いかけると、ポンッと空気が弾けるような音を立てて、透き通る羽根を持った妖精が姿を現した。


「はい! クエストを受けるには『集会所』があります! ユーラシア王国では各街に一つは集会所が設けられていますので、探してみてくださいね! ではでは!」


シエルは空中でくるりと一回転し、きらきらと光の粉を撒き散らしながら、三度目の消失を果たした。

必要なことだけを言い残して消える。徹底したシステム的対応だが、今はそれで十分だ。


「集会所、か」


その言葉の響きから、とあるモンスターをハントするゲームを思い浮かべるが、すぐに振り払い、集会所を探し出すため歩き出す。

だが、すぐに己の非効率な思考に気付き、足を止めた。

この広大な街で、外観の予測すらつかない建物を当てずっぽうに探すなど、大幅なタイムロスになることは確定している。


「ちっ、やはり、情報は大事だな……。誰かに聞くしかないか」


頭を抱えつつ、私は大通りを行き交う群衆の中にターゲットを探した。

目についたのは、初期装備の布服ではなく、使い込まれたような革鎧を身に纏うヒューマンの男だった。ある程度この世界に馴染んでおり、装備を整えるだけの時間を過ごしているプレイヤーだろう。

だが、声をかけるにしても警戒は怠れない。


このゲームにPK(プレイヤーキル)が存在している可能性は十分に考慮すべきだ。

普通に考えれば、こうした街中ではシステム的に攻撃ができないようになっているか、あるいは衛兵によるペナルティが強大に設定されているのが定石だろう。

しかし、前提知識が欠如している現状において、希望的観測で動くのはあまりに愚かだ。

万が一の事態に備え、相手の武器のリーチ外――即座に身を躱せる間合いを保ちながら、私は背後から静かに声をかけた。


「すまない、今大丈夫か?」

「ん?」


革鎧の男が振り返る。その顔には警戒よりも、純粋な疑問が浮かんでいた。

百九十センチを超えるユニンの長身と、私の額に生えた一本の角を見上げ、男はわずかに目を丸くする。


「どうしました?」

「集会所を探しているのだが、どこにあるかご存知だろうか」


私が丁寧な口調で尋ねると、男は少し安堵したのか、肩の力を抜いて大通りの奥を指差した。


「集会所なら、そこの道をまっすぐ行くと広場があって、その正面にでかい屋敷みたいなのがあるので、そこが集会所ですよ」

「ありがとう、助かった」

「いえいえ、お気をつけて」


あっけないほど平穏なやり取りだった。

見ず知らずの相手にも関わらず、有益な情報をすんなりと手に入れることができた。

内心の警戒が少しばかり空回りしたことに苦笑しつつ、私は男が指し示した方向へと歩みを進めた。


大通りをまっすぐに進むと、やがて両脇の建物が途切れ、巨大な円形の広場へと出た。

その正面奥に、周囲の石造りの家々とは一線を画す、豪奢で巨大な屋敷がそびえ立っている。

開け放たれた重厚な扉の向こうからは、活気ある喧騒が漏れ聞こえていた。

出入り口付近には、獣の毛皮を持つアニヴェクや、小柄なドワーエル、金属の身体を軋ませるアイットなど、多種多様な種族のプレイヤーたちがひっきりなしに行き交っている。

微かに漂う鉄錆と、乾いた土埃の匂い。


間違いない。あそこが集会所だ。


私は白のロングコートの襟を正し、屋敷を見据えた。

誰かを支配するためではなく、皆が安心して挑戦できる土台を創る。

その理想へ向けた、ここが本当の出発点になる。

胸の奥で静かに燃える熱を確かめるように深く息を吸い込み、私は喧騒の渦巻く集会所の扉をくぐった。

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