30.協力者の正体
協力者を探すと言っても、手がかりは一つしかない。
トトと共に逃げ延びた、あの二人の仲間だ。
「なあ、トト。お前と一緒にいた二人は、どこに行った」
私は膝を抱えたままのトトへ問いかけたが、彼女は唇を固く引き結び、横を向いたまま黙り込んだ。
「仲間は……売らない。それだけは、絶対に」
真偽判明の光を向けるまでもなく、その拒絶の強さだけで本気だと分かる声だった。
ラピスも軽く肩をすくめ、それ以上は追及しなかった。
「まあ、予想通りですわね。これに関しては、無理に聞き出すものでもありませんもの」
トトを事務所の壁際に拘束したまま、私たちは再び、彼女を捕らえたあの旧市街の路地へと向かった。
当然、そこには逃げた二人の姿はどこにもない。
だが、ラピスは杖を軽く床に突き立て、目を閉じた。
「――残響探知」
青白い光が地面に広がり、微かに残った魔力の残滓が、点々とした光の軌跡となって浮かび上がる。
「こっちですわ」
ラピスの後を追い、入り組んだ旧市街の路地を進んでいく。
歩きながら、彼女はふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、まだ話していませんでしたわね。わたくしがこの一件を最初から追っていた理由」
「聞かせてもらえるか」
「ええ。実は、仕立て屋の見習いの子に頼まれていましたの。故郷へ発つ、その少し前にね。『最近、近所で人が消える噂がある。怖いから、調べてほしい』と」
「……それで、君は」
「ちょうど暇を持て余していましたし、断る理由もありませんでしたもの」
彼女は軽い口調で答えたが、その横顔には、どこか引っかかるような硬さが残っていた。
光の軌跡は路地を折れ、狭い道を抜け、やがて見覚えのある一角へと二人を導いていく。
蔦に覆われた外壁、静まり返った中庭。
――『蔦の葉亭』。
すべての始まりとなった、あの集合住宅だった。
足を止めたラピスの表情から、すっと血の気が引いていくのが分かった。
「……やられましたわね」
「どうした」
「依頼されたときに、気づくべきでしたわ」
彼女は珍しく、自嘲するように小さく笑った。
「なぜだ」
私が理由を尋ねると、ラピスは何かを言いかけて、途中で口を噤んだ。
その視線が、俺の背後へと逸れる。
「――答えが来ましたわよ」
促されるように振り返ると、中庭の奥から、一人の少女がこちらへ向かって歩いてくるのが見えた。
年の頃は十五、六といったところか。
柔らかな笑みを湛えた、どこにでもいそうな見た目の少女だ。
だが、その足取りには一切の淀みがなく、まるで俺たちが来ることを最初から知っていたかのようだった。
「……誰だ」
低く問うと、ラピスが少女から視線を外さないまま答えた。
「依頼人ですわ。そして――この事件の首謀者……ですわよね?」
その問いを受けた少女は、悪びれる様子など欠片も見せず、ただ、にっこりと笑った。




