第24話 6月17日 嫌な空虚
水曜日。
真昼は、帰宅途中でコンビニへ寄った。
弁当。
お茶。
それだけ。
少し前までなら、
味噌汁用の何かを考えていた気がする。
でも今は。
部屋へ帰っても、
何もない。
その前提へ、
少しずつ身体を戻そうとしている。
真昼はレジ袋を提げたまま、夜道を歩いた。
風が冷たい。
住宅街は静かだった。
二〇三号室。
鍵。
ドア。
静か。
冷たい空気。
真昼は部屋へ入り、明かりをつける。
何も変わっていない。
テーブル。
ソファ。
加湿器。
メモ。
全部そのまま。
なのに。
部屋だけが空っぽだった。
真昼はコンビニ袋を置き、ソファへ座る。
静か。
冷蔵庫。
外の車。
それだけ。
天井を見ても、
何も返ってこない。
その時。
ふいに、真昼は立ち上がった。
気づけば。
点検口の下へ立っている。
真昼はそこで止まる。
何をしてるんだ。
本当に。
でも。
数秒後。
真昼は脚立を持ってきていた。
ガタ。
小さい音。
真昼はゆっくり脚立へ上る。
点検口。
白い板。
少しだけ埃っぽい匂い。
真昼はそこへ手をかける。
開けるのは二回目だった。
最初は、
恐怖で手が震えていた。
でも今。
違う意味で、怖い。
真昼はゆっくり板をずらした。
ギ、と小さい音。
暗い。
静かな天井裏。
懐中電灯を向ける。
木材。
配線。
埃。
そして。
何もない。
真昼はしばらく動かなかった。
本当にいない。
毛布も。
荷物も。
生活の痕跡も。
全部なくなっている。
真昼はライトを持つ手へ、少し力を込めた。
「……どこ行ったんですか」
掠れた声。
返事はない。
当たり前なのに。
真昼はそのまま天井裏を見つめ続ける。
静か。
空っぽ。
誰もいない。
その光景を見た瞬間。
真昼の胸の奥へ、
妙な感覚が広がった。
安心じゃない。
恐怖でもない。
喪失感に近かった。
真昼はゆっくり点検口を閉じる。
ギ。
小さい音。
脚立を降りる。
静かな部屋。
真昼はソファへ座り込み、しばらく動けなかった。
その時。
ふと視線がテーブル端へ向く。
小さいメモ。
歪んだ字。
それだけが、
“誰かがいた”
証拠みたいに残っていた。
真昼はゆっくりそれを手に取る。
そして。
気づけば、
胸元へ引き寄せるみたいに握っていた。




