第十三話 魔法屋
とりあえずあの後鼓膜破壊寸前で開放してもらえた。
まあみんな打たれ弱いのはコンプレックスというか、課題だし…。
現状どうにかするすべなどないからねぇ。
で、今日は昨日町に出ていない二人が外出、他3人は拠点付近で探索や採取などをすることになった。
まあ妥当だわな。
はー、帰ってくるまで何しようかな…。
***
「道中は何とかなるねー」
「まあ、もとよりINT高いし…まさか魔法一発で消し炭になるとは思わんかったけど」
一方そのころ、2人はようやくフォース国前の門に立っていた。
3人がほぼ回避した戦闘を全て朱夏の超火力と秋白のAIMで正攻法でクリアしていた。
MP切れを起こしたこともあったが、レベルが上がった時に全回復したため、さほど気にしていない。
そのまま門番にあいさつをし、魔法陣をくぐると、他3人から聞いていた通りに街並みが広がっていた。
二人は自由行動することに決め、何かあったらチャットにて連絡することにした。
チャットは、パーティ&ギルドの項目でパーティ、もしくはギルド登録をしたメンバー間で使える昨日のことだ。ゲームで言うならフレンドチャットである。
通話もできるので、文字を打つ暇がなければそれにすればいい。
有り体に言って、朱夏と秋白はあまり趣味が合わない。
他3人はいくらか似通うところもあるが、この二人はその限りではない。
そのため、わざわざ興味のないところに二人で行くよりも、一人ひとり興味のある所に行ったほうが収穫があるはずだ。
「じゃあ16:00にここね」
「りょーかい!」
その言葉と同時に秋白はすさまじいスピードで駆け抜けていった。
その際誰にもぶつからなかったのは、彼の運の良さに起因するだろう。
さて、と朱夏は思う。
自分の興味のある者、それは科学や美術であるが、この世界では存在するもののあまり表立って注目されるようなものではないようである。
科学に至っては、魔法と掛け合わせると強い力が簡単に発揮できるためか、途中で止まっているように感じられる。
実際、自動車はなく馬車。電灯もガス灯の様な見た目をしている。
コンクリートも存在しないっぽい。土魔法とかでコンクリ弄れたら対人戦最強な気もする。
「とりあえず今現在重要なのは魔法か」
そう、魔法のレパートリー増やさないとちょっとやばいのだ。
ついでに他のみんなも魔法使えればいいよなぁと思う。
そうやって歩いていると、一見の古びたお店が目に入る。
"魔法店エリック"
「ふーん…入ってみようかな」
だが、朱夏はその場から動かなかった。
なぜなら、その入ろうと思っている店の前に花束を抱えた青年が右往左往していたからだ。
明らかに不審者である。優しげなイケメンではあるが、挙動がもうアウト。
とりあえず、兵士の人に通報することも考えつつ、朱夏が来ることに気付いていなさそうな彼に声をかける。
「すいませーん、ここで何して」
「ミ゛ッ‥‥。あ、ああすいません。入り口をふさいでしまって…」
なんか変な声出てたけど気にしないでおこう。
それよりも、この人…。
金モールのついた軍服らしき服装に、びしっとした立ち姿。
どこか高級感を感じさせつつも成金ではないとわかる服装。
あら、これ貴族とかのお偉いさんかな?
「あ、えと…大丈夫です。申し訳ないですが、どちら様で?」
そう言うと、「ああ、国外の方ですね」とつぶやいてから、今一度背筋をただし、気持ち花束を背中に隠して、にこやかな笑顔で礼をした。
「フォース国の左大臣を務めさせていただいております、デルタと申します。以後お見知りおきを」
こういうあいさつをされたとき、漫画やアニメ、小説なんかでは主人公が「な、なんだと…」となるのがお約束なのだが、朱夏に関しては、その限りではない。
「え…サボり?」
「最初に会った方だいたいそういうんですよ。僕はただ仕事が終わって鍛錬をする前にお世話になっている人に花を渡しに来ただけですよ」
んー怪しい。
そうは思ったものの、それ以上は踏み込まずに「そうですか」と返した。
というか、普段の行いなんじゃないだろうか、左大臣さん。普通他の国の左大臣はお外で遊ばないと思うんですが。
そうしていると、不意に一つの足音が近づいてきた。
「やあ、左大臣殿…おや、マリアから彼女に鞍替えかい?」
「人聞きの悪い言い方はやめてください。国外の方でしたので自己紹介をしていただけです」
「ふふ、そういうことにしておくよ。俺はカザンだ。よろしく頼むよ、お嬢さん」
お嬢さん…。
その呼び方にはなれていなかったので、反射的に恥ずかしくて顔が赤くなってしまうが、そんなことはどうでもいいとカザンをにらむ。
「私は『お嬢さん』ではなく『波風朱夏』です。以後お見知りおきを」
そうやって握手を求めると、カザンさんは一瞬唖然として、直後ケラケラと笑い始めた。
そして、がっしりとしっかり握手をした。
「うん、こちらこそよろしく。朱夏さん」
なんでこんなに癖強い人しかいないんだろう…と朱夏は思った。




