王都観光
ふっふっふ、軍資金は大量に手に入った。それはもう大量に。
それというのもアイルの【収納】に入れておいた魔石を大解放したところかなりの金額になったのだ。
まあ俺はこの世界の通貨の価値なんてわからないんだが、メイとアイルが爵位が買えるだのどうのこうのと言っていたのでそれなりにはあるだろう。
お金の価値はこれから覚えていけばいいよ。
時間はまだたっぷりとあるんだから。
と言う訳で、どんどん使いましょう! 金にものを言わせて思う存分楽しむんだ!
ギルドで無駄な時間を過ごしてしまった分も取り返さないとな!
といっても今日で使い切るつもりはないが、たとえ使い切ってしまったとしても魔石の在庫がまだ山のようにあるからあまり気にする必要はないけど。
それというのも魔石をすべて換金するよりも先にギルドのお金がそこを尽きてしまったらしい。大変だねーギルドも。(他人事)
さてさて観光をしましょう。
どこに行くのかはまだ決まってないが、そこはメイにお任せということで。
だって俺王都に何があるのか知らないし。
もっと言えばこの世界に何があるのかも知らないし。
というかそれ以前に元の世界でも旅行とか観光とかほとんどしたことないし(せいぜい小中の修学旅行くらいだ)。
で、話し合った結果まずは昼食ということになった。
店に入って食べるのではなく露店で買い食いといった形だ。
さすがに王都というだけあって露店の数も半端じゃない。
串焼きやたこ焼き、お好み焼きなんかがあった。他にもクレープみたいなデザート類もちょくちょく見かける。あくまで地球のそれと見た目が似てるってだけで材料や味が同じとは限らないんだが。
まあそれでも異世界に来て知ってるものが出てきたらそれなりにテンションが上がる。
俺たちは焼き鳥とたこ焼きを購入した。メイのおすすめらしい。
俺たちは近くにあった広場のベンチに腰掛け昼食タイムに入った。とりあえず焼き鳥を一口食べる。
「……美味いな、普通に」
「そう言ってもらえてなによりです!」
うん。普通に美味いよ。美味いん、だけどなぁ~。
なんだろう日本で食べた焼き鳥と全く同じ味がする。
普通に美味しいけど、なんだか新鮮味がないと言うかなんというか。
――まあ美味しいからいいんだけどね。
逆に言えば異世界でも日本にいたときの味が味わえるってことだ。
前にも言ったけど何事もポジティブシンキングが大事だよ。
って、そういえばアイルに作ってもらってた料理って、地球の料理だったわ。
あれ? 俺の食生活日本にいた時と変わらなくない?
しいて言うなら住居も変わらない気がする。
………………うん、これからは《創造主》で生活するの控えよう。
できるだけこの世界のものを使って生活しよう。
そうでもしないとマジで日本にいた時とそんなに変わらないからな。
そんなこんなで昼食を食べ終わった俺たちはこの後の予定を話し合っていた。
「大変なことに気が付きました」
話し合っていると、メイはなんだかデジャブを感じるセリフを言い出した。
「どうしたんだ?」
「王都って特に観光名所とかってなくないですか?」
「いや、俺に聞かれてもわからないが……ないのか?」
「……ないですね。少なくともとくに有名という場所はないです。人気のお店はたくさんありますがどれも同じようなものですので。よく考えてみたら王都って人が多いだけで他の町と特に変わらない気がしまず」
メイは少し困ったように項垂れた。
「そんなこともあるのか。観光名所がないっていうのは少し残念だが、人気のお店があるんならそこに行ってみたいな。それ以外は適当にぶらぶらしながら気になったお店に入るってことでいいんじゃないか? 散策みたいな感じで」
「そう、ですね。そうしましょう!」
「アイルもそれでいいか?」
「……はい」
俺たちはベンチから立ち上がると、街へと歩みを進めた。
というかさっきからアイルの元気がないんだけど!?
せっかくの観光だしアイルにも楽しんでもらいたいんだが……。
そういえばギルドを出たあたりから元気がなかった気がする。
ということはあの忠告のことを気にしてるのか?ってさすがにそんなわけ――――ありそうで怖いな。
それはさておき、せっかくの観光を楽しんでもらうためにはまずアイルが思い悩んでいる原因を解消してやる必要があるな。
「なあ、アイル」
「……どうかなさいましたか?」
「元気がないと思ってな。……もしかしてギルドのことを気にしてるのか?」
俺がそう尋ねると、アイルはすぐに謝罪した。
「……扇様、ギルドではあのような言動をとってしまい申し訳ありませんでした」
「それは……ユリウスにした忠告のことか?」
「……はい。どのような処罰でも受け入れる所存でございます」
やっぱりなぁ、それが原因だと思ったよ。ていうか処罰って、アイルは一体俺のことを何だと思ってるんだよ。
「処罰なんてするわけないだろ? それに、あれは俺のために言ってくれたんだろうし。それを迷惑だとか、余計なお世話だとか、そんなことは一切思ってないから安心していいよ」
「……ありがとうございます。ですが私のせいで敵を増やしてしまったというのも純然たる事実です。これから先扇様にご迷惑のかかるような事態に発展するかもしれません」
なるほど、アイルは俺の敵を増やしてしまったことと、それにより俺に迷惑がかかる可能性を考えて落ち込んでたんだな。真面目というかなんというか。
「アイル。何度も言うが俺はそれを迷惑だなんて思ってないよ。それどころか今回の件に関しては正直よくやったと思ってる」
「……えっ?」
「この際だからアイルには俺のこれからの方針を話しておくよ」
「方針、ですか?」
「そう。俺はこれから先できるだけ多くのことをしたい。この世界を存分に楽しみたい。俺の思い描く理想の異世界ライフを送りたい。その為なら敵くらいどれだけだって作るよ。そもそも敵がいないと面白くないしね。敵キャラのいないファンタジーなんて俺は認めないよ? だから今回の件、俺はアイルに感謝してる。王都のギルドマスター、敵に回す相手としては十分な相手だとは思わないか?」
俺がそう言うとアイルの表情がさっきよりも和らいだ気がした。
無表情なので変化がわかりにくいが、明らかに落ち込んでるっていう雰囲気ではなくなった。
今はそれで十分だ。
「アイル、これからも俺に付いて来てくれるよな?」
「もちろんでございます。扇様のためならばたとえそれがどのような道であろうとお供いたします」
「おう! 頼りにしてるよ」
そう言って俺たちは観光に戻った。
メイが案内してくれた店は全体的に男一人では来にくそうな店が多かったので貴重な体験だった。
アクセサリーや洋服を買ったり、雑貨屋さんに入ったり、街中で上演されていた演劇を観劇したりと中々に楽しめた。
さすがにランジェリーショップに連れていかれたときは焦ったが、それも一応貴重な体験だ。
何といってもアイルの下着姿が見れたのだ。
もうやり残したことはないよ。
本当に最高だった。眼福です。はい。
そんなこんなで王都観光はつつがなく終了した。
明日からはいよいよ学校に編入だ。
学校には寮があるのでメイとは明日の朝でお別れとなる。
まだ出会って二日目だがものすごく長い時間を過ごしたように感じる。
少し寂しい気もするな。
会おうと思えばいつでも会えるが、こういうのは気持ちの問題だからな。
会えようが何だろうが寂しいものは寂しい。理屈じゃないしな。
でも、これでようやく念願だった異世界の学校に通えるんだ。
そう考えるとものすごくワクワクしてきた。
今日は俺眠れるのだろうか? 今から楽しみ過ぎる。




