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2人のセレナーデ  作者: 素直
2. till the death do us part
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8/10

ep.7 規制

設定作りの際に舞台をクラクフかルブリンにするかで、かなり迷いました。

ルブリンも古くからの街並みが残る良いところです。


せめてもの抵抗だろうか。


ルブリンの裏通りにはレンガ造りの壁がある。そこには、よくポーランド語で言葉が書き留められている。まさに、民衆の声にならない声、といったところだろうか。

ポラリスは通りかかる度に、その文字を読んだ。通訳しなくてよい言葉というのは、なんと身軽だろう。


しかし、一体いつ、誰が書き直しているのだろうか?

昨日の夜にここを通ったときには、また別の言葉が書かれていたというのに。夜の間に外出しているところを兵士に見られては、ただでは済まないだろう。


もしくは、私のように目にした者たちが、通りすがりに書き込んでいるのかもしれない。










たまたま、カノープスはその朝、倉庫の回り道で同じ通りを通った。

今まで使ったことは無かったが、興味本位で入り込んでみたくなった。

通りの中程までくると、レンガの白い跡に目がいく。どうやら文字か何かが書かれていたらしい。もう既に消されていたので、読み取れなかったが、恐らくポーランド語だろう。










控室でカノープスがふと、思い出したかのように話した。


「貴方の家の近くに、裏通りがあるよね。そこは、よく使ってる?」

「⋯ああ。あの裏通りの壁の文字はよく変わるんだ。」

「僕が通った時には、消えてしまっていてね。なんと?」

「君たちには言えないようなことに決まってる。

 その話を口に出さないほうがいい。」

















夜、ポラリスはその壁の前でもう一度止まった。カノープスと過ごした、どんな時間よりも短かった。目で消された跡を辿って、筆跡をよく思い出した。そうやって、確認して、また角を曲がった。次の朝には、また誰かが直しているかもしれない。






カノープスは翌日、その回り道は使わなかった。目を背けたわけではない。彼らの思いを誰にも口にせず、ただ見覚えるだけ、それがせめてもの、贖いだった。


 









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