ep.6 雄たけび
愛国心についてはこれから語っていく予定です。
ノープの過去回は愛国がテーマでもあります。
そのうち2人の過去編も載せたいですね。
人々にとって喜ばしいことが、僕にとってもそうであるとは、なかなか言い切れないものだ。
控室にはラジオが置いてある。
昼の放送は、ドイツ軍の戦果だった。通りの行進よりも壮大に、雄弁に、声は前線の成果を読み上げている。たまたま、ラースが来ていたときだった。彼は明らかにその声に気を取られつつあった。
僕はペンを置いて、目元に手を当てた。いい加減、この手の話には気が滅入る。戦争を続ける限り、仕方のない事なのだが。押しのけたペンの横で、その小煩い箱に手を伸ばした。電源を切りたかったが、つまみを回して音量を下げた。愛国と疑惑の二文字のためだけに、僕は消せなかった。落ちた声は、まだ勝利を高らかに読んでいる。
廊下に、軍靴の音がした。恐らくは曹長だろう。彼は入ってはこなかった。ラジオの音は、外にもわずかに漏れ出ているだろうに。ラースは僕を見つめた。僕は何ともなしに、彼に微笑んだ。
「なぜ?私は問題ない。」
「僕がいたたまれなくなっただけだよ。それに、大して聞きたくもないしね。」
「猿芝居でも、疑われないためには必要だ。」
「分かっているよ。」
「あの電話の前の君を、否定してもいいのか。」
僕は書類を机の端に置いた。
「僕が今大切にしたいものは、もうあの国には残っていないんだ。僕は変わった。二度と手に入らないものは、もう必要ない。」
彼は押し黙った。ラジオの声はいつの間にか、聞こえなくなっていた。彼はまた書類に目を落として、僕も仕事に戻った。
窓の外からはまた西日が差し始めていた。今日はそれを、眩しいとも、温かいとも感じなかった。
今日の午後は不自然に長かったと思う。
誰のためだろうかは、知り得ないけれど。




