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2人のセレナーデ  作者: 素直
2. till the death do us part
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4/10

ep.3 苦悩

ガバガバ設定&歴史考証はご愛嬌です。

今回の話のような短編が30くらいまで続きます。

まだ執筆中なので終わりはいつやら⋯

木曜日の夕方に許可証は切れた。

窓口の貼り紙には、週2回の文字が。私はその2日のうち、1日を通訳の呼び出しに使ってしまっていた。

その1日が更新の日に重なったようで、誰のせいでもないのが、私をさらに悩ませた。

金曜の朝、長い人の列の末に並ぶ。時間が経っても、名前は呼ばれなかった。

呼ばれない理由も係の男は言わなかった。印紙、人員、昨日の残り、どれも大した理由にはならない。何をするにも許可が必要で、それを持たない私は、何者でもない存在だ。街を歩くのにも、仕事をするのにも理由がいるのか?いい加減、うんざりだ。






控室の扉を半端投げやりに閉めると、カノープスは何か聞きたそうにこちらを見つめた。と、同時に私の手元の用紙を見た。期限切れの日付。私の機嫌より、そちらのほうが急を要する。


「ああ、切れてるんだね。」

「列に並んだが、残念ながら無駄足だった。」

「僕が書くよ。

 貴方がいなくなるのは困る。し、この部屋が寂しくなると、何も手につかないよ。」



私は窓の方を向いた。窓の外を見つめているのだが、ぼんやりとしていて、何の景色が見えているのか、よく理解できない。カノープスの、ペンを滑らせる心地良い音が聞こえる。






何気なく、音のする方を見てみると、通行証の様式を引き出しから出していた。よく見ると、倉庫の臨時通行用とある。


「僕では、残念ながら許可証本体の更新はできないからね。臨時だよ。今日限りの。」


流れるように記入している。

けれどその途中で、ペン先がある1行に止まった。

目的地の欄。これさえ書き終えれば、ポラリスは今日一日を生き延びることができる。同時に、カノープスが書いた、という1日分の痕跡が残ってしまう。

もれなく、曹長が黙っていないだろう。そう何度も繰り返せば、疑念として、残ってしまう記録なのだから。





僕の首を絞めるか、彼を間接的に、死なせることにするか。どちらを先に殺すかためらって、決められずに、紙の表面にインクが溜まる。

紙に黒い点を残した後、カノープスはその先をもう一度目的地の欄に移した。より近くの倉庫に書き換えた。遠くの目的地へ書く大きな嘘の勇気はなかった。しかし、近場では夕方にはまた切れる。

切れても、今日は乗り越えることができる。


たとえ、彼のためだとしても。僕が彼のそばにいることが一番なのだから。



インクが乾くのを待つ間、僕らは何も話さなかった。書類を読むことも、会話も。






「これで、今日は通るよ。」

「明日もまた?」

「今日だけでいい。明日はまた、考えよう。」

「君にそんなことさせてはいけない、ということくらいは私にも分かる。」



カノープスは紙を差し出す。渡す手の、その手から目を離せないまま、ポラリスは受け取った。紙の端には黒色の点のようなものが見えるが、彼の葛藤の名残を消そうとは思わなかった。



ゆっくりと扉に歩みを進める。閉まる直前、ポラリスのかすかな声が聞こえた。

「助かった。ありがとう。」

ドイツ人とポーランド人は会話してはならない。

ポーランド人から決して話しかけてはならない。

そんなくだらないことを思い出す。



聞こえてはならないなんて。









夕方、検問でその紙は一度開かれた。開いた兵士は、中佐の書いた、上の方の字を見た。ちらりと一瞬、私の顔を見ると、私に紙を返した。安堵と罪悪感が入り混じったものを感じる。紙をコートの内側にしまうと、ゆっくりと歩きだした。






カノープスの書いた文字が温かく感じた。翌朝には冷え切ってしまう、それが。

またぬくもりを与えてやらなければならない、それが。




























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