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2人のセレナーデ  作者: 素直
1. without you
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2/10

ep.1 再会

pixivにて掲載済のものを載せておきます。

うーん、慣れないサイトで骨が折れそう。

1938年の冬、ベルリンの受話器はひどく冷たかった。

回線の奥から別の会話が漏れて聞こえた。国際通話は、相変わらず高い。長話はできず、彼に話したいことが積もるばかりだった。


「やあ、ラース、聞こえるかい?」

カノープスがそう言うと、向こうで安堵したような息が聞こえた。


「聞こえる。久しぶりだ。」

「そっちは雪だと聞いたよ。寒がりなのに、大丈夫かい?」

「心配するな。そこまで風は強くない。」

「こっちは昨日の晩から雨だよ。うんざりする天気だ。」


ひとしきり世間話をした。料金のことを考えると、自然と声の調子が速くなるのを感じる。


「それにしても高く付く電話だ。君が元気そうで安心した。」

「明日も掛けるかい?」

「無理しなくていい。また気が向いた時に。」

「貴方は元気そうだね。」

「⋯生きてはいるさ。」


受話器を置くと、机の上の書類と窓の外の陰鬱な景色が視界に戻ってきた。


翌年の夏には電話は掛からなかった。



僕はポーランドに行く。軍人として。















カノープスがルブリンに着いた時、街はまだ空襲から残っていた。仕事は前線でのものではなかったのが、不幸中の幸いだ。補給や輸送、そんなところで、まだ中佐じゃなかった。こんなふうに、彼の母国を訪れるつもりではなかったのだが。



着任からまもなく、僕は中佐になった。

階級を上げると、ある程度自由が利くようになる。

彼と再会するのにはほとんど苦労しなかった。

用紙の職員欄に名前を書けばいいだけだったから。

ポラリス・ビャウィ、現地協力、通訳。


紙切れ1枚が彼の命の代わりだと思うと、僕はやはり、祖国の盲目的なイデオロギーには傾倒できない。

それでも、今は仮初でいい。正当な理由があれば、この戦火から彼を守れる。

また会える。













扉が開いて、音を立てて閉じた。

白髪の美しい容姿をした青年が立っている。

以前よりも随分痩せていたが、表情は変わっていないと思う。電話の向こうのいつも通りの彼で。

赤い目が僕を見据える。




カノープスは、外の部下にも聞こえるような声で言う、

「通訳だな。」

それから表情を緩ませ、声を落とした。

「貴方にまた会えて嬉しい。」

「君こそ。変わらなくて。」

「ここに僕たちがいるなんて。信じられないだろう?」

「君が本当の軍人の顔付きにでもなっていたら、どうしようかと⋯」




最初の数十分は、互いの仕事をこなした。

彼の手際の良さに驚いた。

そういえば、電話が途切れてしまったあの夏から、彼はどうやって生活してきたのだろう。



一段落すると、また彼と話し始めた。

「これから、貴方はここで働くことになる。」

「以前の私たちとは違う。分かるな。」

「僕は、貴方がいるだけでいい。」

「もし見つかったら⋯」

「貴方も僕も上手くやるさ。」



ポラリスは顔を少し曇らせたが、最後にはその顔を緩めてくれた。僕はあからさまに、微笑んでいただろうな。


「ここではあれだが、外は、僕らは他人で居なくちゃならない。」

「仕方がないことだ。君のためでも、私のためでもある。」

「疑われないようにね。」

「そう上手くいくか。」

カノープスは書類から顔を上げて、ポラリスの目をまっすぐ見つめた。





「ラース。電話の時から変わりないようで、安心したよ。」

ポラリスは立ち上がって、扉の方を見つめて、動かない。

「彼らが来てから、全部変わってしまった。私は不安なんだ。その内に君が入っていることも⋯」





扉がまた、音を立てて、閉まった。











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