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あああああああああぁ、命の水がああああああああああぁ。
「おっと、まちがえました」
俺がない首を90度曲げて落ち込んでいると、少女がそう言いながら戻ってきた。
「汚ねえ墓だから通り過ぎてしまうところでした」
(は?)
「ほれ、水だ」
少女は俺の真上で水桶をひっくり返すと、満杯の水を俺にぶっかけた。
(いや、柄杓使わないのかい!)
そしてそのまま空の水桶に柄杓をスポンと入れた。ゴミ箱にゴミを突っ込むような感じだ。バチ当たるぞ、まじで。
「ちーん。なむなむ。ざまあ」
(いま、ざまあって言ったよな?)
「いってません」
(言っただろ! ていうか、あれ? 聞こえてる?)
「きこえてません」
(いや、聞こえているだろ、絶対!)
「ちっ、バレましたか。うるさい、墓石だな」
少女は柄杓で俺の頭(墓石上部)をポンポンと叩いた。もうバチ当たれよ、こいつ。
「墓石は墓石らしく、しめやかにしていればいいんです」
(できるかぁ! てかお前、先祖に対して失礼だろ!)
「先祖じゃありません。誰がこんな汚ねえ墓石に入るやつの末裔ですか」
(汚いだと?! 末裔じゃないなら、お前は何者なんだよ?)
「うーん……、天使ですかね?」
(……悪魔の間違いだろ)
「てへっ。そうかもしれません」
(どういうことだよ)
「あなたがそう思うなら、天使(悪魔)ということにしてやってもいいです」
(はあ?)
「天使とか悪魔とか、そんなくだらない単純な善悪の関係は私にはないのです。私は墓石どもを見守る管理人みたいなものです」
(墓石の管理人?)
「そうです。あなたたちはこの私に管理されているんですよ。ばーか」
(つくづくむかつくやつだな……。じゃあここは何なんだよ?)
「ここは『墓の墓場』ですかね。人間が墓を作り過ぎたせいで、墓が余っているんですよ。ほら、おバカな人間は死んだらみんな墓に入ると思っていますよね? でも本当は半分くらいの魂が異世界とかに転生するんです。だから墓が余って、墓専用の墓場ができたというわけです」
(ほうほう。で、俺はなんで墓になっているんだ?)
「あなたみたいなザコ魂は、みんな墓に転生させられるんです。どうせ異世界に転生しても何の役にもたちませんからね」
(ハァ?!)
俺はない口から音のない怒声を響かせた。
「だってあなたザコで無能でしょう。墓石のほうがお似合いなんですよ、ばーか」
この天使(悪魔)、絶対わかせてやる!




