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4章ー2
限界を迎えたミナを、最初の部屋の毛布の上に寝かせる。そして桐生は暗い通路へ踏み出した。
ほんの数十メートルのはずなのに、脚は鉛のように重く息が上がる。
崩落で歪んだ壁と垂れ下がった配管の間を抜け、ようやくボイラー室にたどり着いた。
破断した配管から凍てつく白煙が噴き出し、金属の軋む音が地下の闇に響く。
気温は、とうに氷点下を下回っているのだろう。吸い込むたびに、気道が引きつった。
桐生はガチガチに震える手でスパナをメインバルブに取り付けた。
「くそっ……固着してやがる……! 凍りついて動かねえ!」
指先の感覚はとうになかった。この巨大な高圧バルブを人力で回し切るなど、到底無理だと思えた。
その回答を、桐生は覆す。無理と決めつける己を嘲笑う。
「逆だろ、馬鹿野郎……! どうしたらいいか考えやがれってんだ……!」
感覚のない手先が力を伝えきれていない。ならば、と桐生はあえて手袋を脱いだ。冷気も、もはや痛みにならない。
そして素手でスパナを握り込んだ。掌に凍った金属が吸いつく。無理に離せば、手の皮がごっそり持っていかれるだろう。
桐生は更に外した手袋を紐代わりにし、スパナと掌を幾重にも縛りつける。もう握り直すことも、離すこともできない。
桐生は両足を踏ん張り、高圧バルブと正面から向き合った。




