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攻略対象、探しています〜イケメン幼馴染は毒舌なので対象外です〜  作者: 白波美夜
第2章 恋探し編

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13/14

第13話 友達が病気なので、ヒロイン活動はお休みします

日間ランク入り、ありがとうございます!

木剣がぶつかり合う音が、庭に響く。


「っはぁ……!」

「くっ……」


ジルの木剣が、私の一撃を受け止めきれずに軽く弾かれた。だいぶ私も腕を上げたわね!ジルを押し始めたわ!


「……君たちはすごいな」


見学していたシャルナーク様が、感心したように声をあげる。


「そんな、この程度のことで…..恥ずかしいです」


私はわざとらしく頬に手を当てて俯く。ヒロインって感じでしょう?


「……こいつ、女とは思えない腕力だからな。シャルも手合わせするなら、気をつけた方がいいぞ」

「ちょっと!言い方!私の日々の努力の賜物でしょが!っていうか、ジルが貧弱なのよ!」

「俺のどこが貧弱だ!最近は体力も腕力もついてきてるだろうが!同世代と変わらないぞ!」

「でも最近、私に抜かされ始めてるじゃない!」

「……だからそれはお前がおかしいんだろうが」


いつものやり取りに、シャルナーク様が苦笑している。


「……2人は本当に仲がいいね」

「え、そんなことないですよ……?」

「アーヴィング嬢は、ジルフォードと一緒の時が一番楽しそうだよ……ところで、リュクス嬢は今日は来ないのか?」

「そういえば、マリア遅いですね」


いつもならとっくに顔を出している時間なのに、今日はマリアの姿が見えない。ジルを見ると、彼も不思議そうな顔をしていた。


「そのうち来るだろう、一回休憩にしないか」

「そうね、じゃあ、今日は私特製ドリンクを飲んでみない?運動後に効果抜群!ビタミンとミネラル、塩分たっぷりよ」

「……アーヴィング嬢は、ドリンクまで作るのか……」

「はい、淑女の嗜みですわ」


私は、ヒロインさながらの笑みでシャルナーク様に微笑んだ。ふっ!これでまた、好感度アップね!

心の中で頷いていると、後ろから「バーカ」という悪口が聞こえる。


「ちょっと、ジル!誰がバカよ!」

「お前だ、間抜け。淑女ってのは、マリア嬢みたいなのを言うんだよ」

「……そうだね、リュクス嬢は淑女の鏡のような方だと思うよ」


あれ?シャルナーク様がマリアに思いを馳せてるんだけど、なんで?ヒロイン、私ですからね?

いまいち納得はいかないが、とりあえずドリンクの準備をする。手元で材料をまぜなら、さりげなくシャルナーク様に質問を投げかけた。


「ところで、スペンサー様はなぜ騎士を目指しているのですか?」

「僕は宰相の息子だろう?だから、周囲もそれを継ぐことを期待しているが、宰相がそんなに素晴らしい役目だと思えないんだ」

「と、言いますと?」

「父上がやっていることは、結局政治を円滑に回すための根回しや謀略……くだらないと思わないかい?それでは、大切な人は誰も守れない。僕は、守りたい人ができた時、直接それを守れるようになりたいんだ。だから、知識より力が欲しい」


シャルナーク様が空を見上げる様が美しい。その守りたい人って、つまり私ですね!わかります!!


「素晴らしいですわ、スペンサー様!応援してます!!」

「そ、そうかな!?」

「はい!ジルもそう思うでしょ!」


ジルを振り返ると、彼は微妙な顔をしていた。何よ、何が不満なわけ?


「どうかな」

「ジルは、公爵家を継ぐんだろう?君は勤勉だし、僕のこの考えを、逃げだと思うか?」

「……逃げとは思わないが、視野が……。大切な人を守りたいなら、知識も力も、大事だと俺は思う。直接的にしか守れないのは、危ういぞ」


ジルの言葉が、私の心に沁みた。何よ、ジル。お助けキャラなのに、すごいいいこと言うじゃない。

シャルナーク様も、少し戸惑うように瞳が揺れている。なんか、変な空気になっちゃったわね。

誤魔化すように手元の作業を進めると、侍女が手紙を持ってやってきた。マリアからだ。急いで封を開けると、あら大変!マリアは具合が悪いらしい!!


「ジル!!私特製ドリンクは今日は振る舞えないわ!ごめん!!」

「……別に期待してないが、何かあったのか?」

「マリアが寝込んでいるみたい。心配だから、今日は訓練と勉強はここまでにしましょう、私、お見舞い行ってくるわ」


急いで木剣の片付けをしていると、シャルナーク様が「僕もいく!」と声をあげる。


「え、でも男性が訪問するのは流石に……」

「お前だって、友人だけどリュクス家と懇意なわけではないだろう。俺は親戚だからな、4人でいくぞ。急いで先ぶれを出しておけ。馬車はうちで用意する」

「了解!」


友情活動の方がヒロイン活動より大事だからね!今日のヒロインに向けたスキルアップはここまでよ!


ーーーーーー


「マリアー!!大丈夫!?お願い、死なないでーー!!」


私がマリアの部屋に飛び込むと、マリアはベッドに横になっていた。私の後ろには、ジルとシャルナーク様がいる。


「……ちょっと、勝手に殺さないでよ」

「顔色悪い!線も細い!大変!!」

「線が細いのは、体型キープしてるからよ……さっきお医者様が来たわ。体のいろんなところに蕁麻疹が出て……ストレスですって」

「ストレス溜まってるの!?何か大変なことある!?相談乗るよ!?」

「……お前と関わるようになったのがストレスなんじゃないか?」

「ちょっと!そんなわけないでしょう!私とマリアは親友よ!ね!?」

「そうですわ、ジルフォード様。私にリエラを取られて面白くないからって、引き離そうとしないでください」

「あー、はいはい、すみませんね、2人が仲良さそうで何よりだよ」


面倒そうに言いながらも、ジルはテキパキとリュクス家の侍女に細かい指示を出している。さすがサポートキャラ!気がきくわ。侍女が来客用の椅子と茶菓子を部屋に用意してくれた。


「うわ〜、美味しそう」

「ちょっと、リエラ。私のお見舞いに来てくれたんじゃないの?」

「あ、そうだった。お菓子が美味しそうでつい」

「全く……仕方ない子ね」


マリアが苦笑いしているが、その瞳が楽しげなの、私はわかってますからね!

マリアの容態が蕁麻疹で安心したのか、ジルとシャルナーク様も、少しリラックスしている。


「みんなで食べよう〜、桃のタルト、美味しそうね!なかなか手に入らないけど、リュクス家は領地で栽培しているの?」

「いえ、先日たまたま来客があって、いただいたの。すぐに痛む果物ですし、生で食べれるのは貴重よね」


みんなで出てきたタルトをいただくが、香り豊かで、ジューシーで、とっても美味しい。ちらり、とみんなを見れば、ジル以外は幸せそうに顔を綻ばせている。ジルは普通の顔をしているが、わかるぞ、ジル。甘さが足りないって思ってるんでしょう!でも、このフルーツタルトに砂糖を足すのはNGよ!

紅茶をいただきながら、今日の訓練の話をマリアにすると、マリアは楽しそうにそれを聞いてくれる。いつもの4人の空気にホッとする。


「まぁ!リエラに負けるなんて、ジルフォード様、男性としてまずいのではなくて?」

「こいつが怪力なんだ、俺は弱くない」

「頼りないわね」

「…..リュクス嬢は、やはり強い男性が好きなのか?」


話が気づけばマリアの好みのタイプに移るが、マリアはそれを「いえ、最低限護身術程度は、と思いますが、そこまで力に興味はないです」と一刀両断する。「どちらかといえば、私は知的な男性のほうが好きですね」と呟くと、だんだんシャルナーク様の元気がなくなっていく。おかしいな、今日はマリアのお見舞いに来たんだけど。


そんな話をしながらも、マリアが喉のあたりを何度も撫でる。次第に、彼女の喉が赤く色づき始めた。


「ねぇ、マリア。喉大丈夫?痛いの?」

「まぁ!すみません、はしたないですね……少し、痒くて。無意識に触ってました」

「いや、そんな気を使ってくれなくていいんだけど……」


そう言いながらも喉元を見れば、だんだんと、発疹が浮き上がってくる。

……蕁麻疹だ。


ちらり、とジルを見ると彼も気付いたようで、マリアの喉と、袖口から除く手元を見ていた。シャルナーク様は、美味しそうに桃のタルトを頬張っている。大人びた顔の男性が、頬をほころばせているの素敵!!でも、今はそれどころではない。


マリアの蕁麻疹は、ストレスじゃないかもしれない。


「ねぇ、ジルとマリアって親戚なんでしょ?ジルは体調悪くないの?」

「俺は大丈夫だが……お前にしては、勘が冴えてるじゃないか。家系的には、バラ科、ヒットする人間もいるぞ」

「ヒロインってのは、天啓が降りるように出来てるの!……であれば、可能性あるわね」


2人でこそこそ話していると、マリアが苦しそうに目を閉じている。体が痒くて仕方なさそうだ。


「……みなさん、ごめんなさい。まだ体調すぐれないみたい。本日はもうお帰りいただいて……」

「その前にマリア、教えて欲しいんだけど、昨日も桃を食べた?」

「……何よ、今それどころじゃないんだけど。食べたわ」

「今までも何度か、食べたことある?」

「あるわよ」


私が黙り込むのを、ジルが引き継ぐ。


「普段食べるのは、生でなのか?」

「ジルフォード様まで何ですか?欲しいのなら、まだ余ってるから差し上げますよ」

「真面目に答えろ」

「…..いちいち覚えてないけど、生を食べることはなかなかないわ。貴重な果物じゃない」


その言葉に、私とジルは顔を見合わせる。

確信はない。だけど、マリアはきっと、桃アレルギーだ。

話についていけないシャルナーク様が、そんな私たちを見て、置いて行かれた子供のような瞳をしていたのを、その時の私は気づかなかった。

ランク入りが嬉しくて、2日連続投稿しちゃいました。

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