第10話 この世界には、イケメンがたくさんいるようです
今日も勉強に鍛錬、お菓子作りと非常に充実した1日を過ごした。
ちょっと、やりすぎなくらいだ。ベッドに横になって一息つく。ちらり、と机を見るが、今日はもう、これ以上頑張る気持ちにはなれない。
引き出しに大事にしまわれているノートが、スカスカなのも、モチベーション低下の理由だ。
「……幼馴染も違う、第一王子も違うって…..私、本当に乙女ゲームだか何だかに、転生してるのかなぁ?」
ピンクの髪にアクアマリンを思わせる瞳。透き通った肌はきめ細かく、ヒロイン確定でしょ!!と思ったが、これだけ出会いがないと、流石に不安になる。
図書館にもカフェにも噴水周囲にも王城にも出会いがないなんて……一体どこに出会いは転がってるのよ……!!
「明日、マリアに聞いてみよう」
ジルフォードにそれとなーく同年代のイケメンの存在を聞いたら「知らん」の一点張りだったし。
これでマリアも知らない、となったら、出会いを求めて留学も視野に入れないと!!
ーーーーーー
「……見た目のいい同年代の男性?どういうタイプの?」
「どういうタイプでもいい!細身でも筋肉質でも!堅物でもチャラくても!!」
「…..リエラ、意外と男に節操ないタイプなのね?……それだけ守備範囲広いなら、もちろんいるわよ」
「えーーーー!!いるのーーーー!!!??」
なんてこった。なぜ今まで、マリアに聞かなかったんだ。というか、この数年、なぜマリアに出会えていなかったんだ!
お助けキャラ・ジルが全く教えてくれなかった情報を、まさかマリアが持っているなんて!!
「え、だれ!?だれ!?!?」
「うーん。私も全員と面識あるわけではありませんが、有名なのは宰相様のご子息である」
「出たーーー!!宰相の息子設定!!」
「…..リエラ、うるさい。続けていいかしら?」
「あ、すみません。どうぞ」
「……シャルナーク・スペンサー様とか」
「あとは?」
「王立騎士団団長のご子息であるエドガー・マグノス様、宮廷音楽家のご子息であるルシファー・モンテ様」
「おぉ……!!騎士の息子は予想通りだけど、音楽家の息子か。いいわね!」
「……続けるわよ?ウィンザー公爵家のご子息であるカイン様と、少し年齢的には私たちの下だけど、第二王子のミカエル様も、お美しいと噂よ」
「……めっちゃいるじゃん」
「まぁ、女性人気が高いのは、ご存知ジルフォード・ノルトラント様ですけど」
「え、知らない。有名人?」
「……あなたの隣の屋敷に住んでいる人のことですよ」
「あぁ…..ジルか。ジルは性格悪いから、別にいいや」
「ぷっ……!ジルフォード様、かわいそう!」
マリアが楽しそうに笑っているが、それどころではない。今の話だけで、ジル除きで5人もいる!これ、乙女ゲームのパッケージ作れるよ!!
「……やっぱり、私ヒロインだったわ」
「ねぇ、リエラ。そろそろ、その言葉の意味を教えてくれない?何か、小説の話をしているの?」
「いや、どっちかというと多分ゲームなんだけど……気にしないで」
「すごく気になるわ。げーむってなによ」
5人の名前を、心の中でそっと呟く。やっと出てきたキャラクター名!!
ついにこれで!!ノートにある『将来の運命の人♡候補一覧』のページが埋まるわ〜〜!!
「マリア!!ほんっとありがとう!!あなたは生涯の友よ!!」
「顔のいい男性を紹介しただけでそう言われても、全く嬉しくないんだけど」
ーーーーーー
「と言うわけで、やってきました!王立図書館!!」
「……お前、この図書館に出会いは転がってない、って前に言ってなかったか?」
「ジルのお間抜けさん!宰相の息子は、図書館に通っていると相場が決まっているのよ。今まではぐ・う・ぜ・ん出会えなかっただけ!通い詰めれば、絶対に会えるわ」
「……マリア嬢、なぜシャルのことをこいつに話した」
「もう、ジルフォード様のお間抜けさん!面白いからに決まってるじゃないですか!」
「……リエラの真似すんなよ」
「まぁ、ジルフォード様は間抜けというより、爪が甘いですよね」
今日もジルとマリアは仲良しさんだ。
「で?どこにいるんだろう、イケメンメガネ」
「……メガネ、ってスペンサー様のことを言ってますか?私、会ったことないですけど、メガネなんですか?」
「宰相の息子はメガネで細身でガリ勉が鉄板でしょ」
「…..細身ではあるが、シャルはメガネかけてないぞ。あと、勉強は普通だ」
「え?そうなの!?……まぁいいわ。探すわよ」
本を見るふりをしつつ、ゆっくりと図書館内を回る。
「リエラ、歩き方は綺麗なのに、目は本気ね」
「当たり前よ、人生かかってるんだから……って、今日はいなさそうね」
「……シャルなら、だいぶ前にお前、通りすぎてたぞ」
「え!?!?」
ジルを振り返ると、彼は仕方なさそうに、1人勉強している少年を顎で示す。
顔はまだ見えないが……濡れたような艶のある黒髪をもつ少年が、そこにはいた。
(しまったーー!!黒髪って、つい前世からのアレで身近だったけど……乙女ゲームの定番色じゃん!なぜ気づかなかったんだ!!)
思わず、小走りで彼の元に向かっていくと、彼の勉強している机の足に引っかかり、盛大に転んでしまった。
静かな図書館に、ビターン!と大きな音が響く。
「あ、いたたた……やっちゃった」
額を抑えて、そっと目を上げると、黒髪の少年が私を見ていた。
ルビーのような、綺麗な赤色の瞳が、私を射抜く。
(あ、運命の出会い、いただきました)
これから、私のヒロイン人生が始まるのだ!!
本日、多くの方からアクセスいただいているようで嬉しかったのでストック出しちゃいました笑
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