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さて、今回はリリアンお嬢様とガレス(レオンハルト・アルヴェイン付き)の1週間です!

「――帰るわよ」


王宮の階段を下りながら、リリアンは小さく息を吐いた。


長時間の晩餐会。


慣れているとはいえ、気疲れはする。


その後ろを、大柄な男が静かについてくる。


「はい、お嬢様」


ガレスだった。


アルヴェイン家執事。


軍属らしい隙のない立ち姿に、リリアンはまだ少し慣れない。


王宮の外へ出た、そのときだった。


「地面は危険ですので」


「……え?」


「運ばせていただきます。失礼します」


次の瞬間。


ふわりと身体が浮いた。


「ちょっ――!?」


ガレスが当然のようにリリアンを抱き上げていた。


「なっ、あなた!?」


周囲の使用人たちがぎょっとした顔をする。


リリアンは顔を真っ赤にした。


「降ろしなさい!」


「危険ですので」


「地面よ!? 普通の地面よ!?」


ガレスは真顔だった。


「レオンハルト様より、“リリアン嬢に危険が及ばぬよう細心の注意を払え”と命じられております」


「だからって!」


馬車へ向かって歩きながら、ガレスは淡々と続ける。


「夜道ですので」


「危険はあります」


「ないわよ!!」


「あります」


「あなた、絶対面白がってるでしょう!?」


ぴく、とガレスの口元が動く。


「……ふふ」


「笑った!!」


「いえ」


まったく悪びれない。


「さあ、参りますよお嬢様」


「もうっ……!!」


結局そのまま馬車へ運ばれることになり、リリアンは恥ずかしさで顔を覆った。



屋敷へ戻った後。


侍女たちが就寝準備を進めていく。


「お嬢様、本日はお疲れ様でした」


「ええ」


淡い水色のドレスを脱ぎ、夜着へ着替える。


鏡の前。


リリアンはぼんやりと自分を見つめた。


静かだ。


いつもなら。


「お嬢様、本日は冷えますのでこちらを」


「紅茶をお持ちしました」


そんな声が聞こえる時間。


そして寝るまで、エヴァンが部屋にいる。


本を読んでいる日もあれば、チェスをしている日もある。


特別なことは何もない。


けれど、それが当たり前だった。


「……」


今日はそれがない。


妙に落ち着かなかった。


疲れているはずなのに、眠気が来ない。


それどころか、少し苛立っている自分に気づく。


(……こんなに感情的になるなんて)


いつ以来だろう。


両親が亡くなってから。


リリアンは“弱さ”を外に出さないようにしてきた。


なのに今日は、ずっと調子が狂っている。


そのとき。


――コンコン。


扉が叩かれた。


「お嬢様、よろしいでしょうか」


ガレスの声。


「……ええ」


扉が開く。


「失礼いたします」


深く一礼するガレス。


「お疲れのところ申し訳ございません」


「何かしら」


「エヴァン様から業務を引き継ぐ時間がありませんでしたので」


ガレスは手帳を開いた。


「いくつか、お伺いしたいことが」


「……それもそうね」


リリアンは椅子へ腰掛ける。


「まず、朝食ですが」


「紅茶と軽食のみよ」


「軽食とは?」


「フルーツやスコーンを少し」


「食べない日もあるわ」


ガレスの眉がぴくりと動く。


「……少ないですね」


「問題ないわ」


「そうですか」


手帳へ書き込む。


「では、今後一週間のご予定を」


「午前は講義、午後は仕事よ」


「仕事?」


「ほとんど書類整理かしら」


「なるほど」


ガレスは真面目に頷く。


「では、夜は?」


「……夜?」


「どのようにお過ごしに」


リリアンは少し考える。


「特に何も」


「エヴァンとチェスをしたり、お茶をしたり……そのくらいかしら」


「ふむ」


ガレスは腕を組んだ。


「なるほど」


「……?」


「かしこまりました」


手帳を閉じる。


「では明日からも、そのように」


「ええ」


「お疲れのところ失礼いたしました」


一礼。


そのまま部屋を出ていく。


扉が閉まる。


静寂。


「……嵐みたいな人ね」


ぽつりと呟く。


その瞬間。


どっと疲れが押し寄せた。


ベッドへ倒れ込む。


静かな天井を見上げながら、リリアンは小さく目を閉じた。

ここまで読んでくださり誠にありがとうございます!

少しでも良いと思ってくださった際には、評価やブックマークお願いします^_^

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