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それから一週間後。


「お嬢様ーー!!完成いたしましたわ!!」


屋敷中に響きそうな声と共に、ミレイユが大きな箱を抱えて現れた。


「……朝から騒がしいわね」


リリアンは本を閉じる。


「だって、最高傑作なんですもの!」


ミレイユは興奮した様子で布を広げた。


深い赤。


薔薇を思わせる艶やかな色。


「まずはこちらを!」


侍女たちが慌ただしく動く。


「お嬢様、こちらへ」


「ええ」


数分後。


カーテンが開く。


「……どうかしら」


その瞬間。


部屋の空気が止まった。


深紅のドレス。


細い肩から流れる生地が、白い肌をより際立たせている。


金色の髪は光を受けて輝き、まるで絵画の中の令嬢のようだった。


「まあ……!」


侍女たちから感嘆の声が漏れる。


「素敵ですわ……!」


ミレイユは胸の前で手を組んだ。


「完璧……!」


リリアンは少し落ち着かないように視線を逸らす。


「……大袈裟よ」


そのとき。


「失礼いたします」


扉が開く。


エヴァンが部屋へ入ってきた。


そして――止まる。


「……」


珍しく言葉が出てこない。


リリアンがちらりと彼を見る。


「……何?」


「いえ」


一拍。


「大変、お似合いです」


穏やかな笑み。


だが、少しだけ目を見開いている。


ミレイユがにやりと笑った。


「ふふふ、まだ終わりではありませんよ!」


「……まだあるの?」


「もちろんです!」


ぱっと箱を開ける。


そこにあったのは――


淡い水色のドレス。


朝靄のような、透き通った色。


「……」


リリアンの指先が、わずかに止まる。


「こちらも、ぜひ」



再び着替え終え、カーテンが開く。


その瞬間。


誰も、声を出せなかった。


水色の布が、柔らかく揺れる。


白い肌。


金の髪。


その色彩が溶け合い、まるで冬の朝の光みたいだった。


どこか儚く。


けれど目を離せない。


静かな美しさ。


「……っ」


ミレイユが口元を押さえる。


「お、お嬢様……」


侍女たちも見惚れている。


エヴァンだけが、静かに立ち尽くしていた。


淡い水色。


自分の瞳と同じ色。


その事実を理解した瞬間、胸が強く締め付けられる。


「……エヴァン」


リリアンが少しだけ首を傾ける。


「さっきのドレスと、どっちがいい?」


問われる。


エヴァンはしばらく黙っていた。


やがて、静かに口を開く。


「……どちらも素敵です」


一歩、近づく。


「ですが」


視線を向ける。


「私は、こちらのほうが好きです」


「……理由は?」


「個人的な好みですが」


わずかに目を細める。


「お嬢様によくお似合いかと」


「……そう」


リリアンは小さく視線を落とした。


「なら、これで国王主催の晩餐会に出るわ」


「御意」


「それと」


リリアンがミレイユを見る。


「例のものを」


「はい!」


ミレイユが嬉しそうに箱を取り出す。


中には――


淡い水色のリボンタイ。


銀糸でグラナート家の紋章が刺繍されている。


執事服にも自然に馴染む、上品な細工。


「……お嬢様、これは」


エヴァンが目を見開く。


リリアンは少しだけ目を逸らした。


「あなたにも身につけてもらうわ」


静かな声。


「私の執事である証として」


「……」


「いつもそばにいてくれてありがとう」


一瞬。


ほんの少しだけ、表情が柔らかくなる。


「この先も、離れることは許さないわ」


沈黙。


エヴァンの喉が小さく動く。


「……っ」


耐えるように、手で口元を覆う。


下を向く。


肩がわずかに震えていた。


「エヴァン?」


リリアンが不思議そうに呼ぶ。


数秒後。


ゆっくり顔を上げる。


その水色の瞳は、少しだけ潤んでいた。


「……御意」


深く頭を下げる。


周囲から、小さな笑い声が漏れた。


「ふふ」


「本当に仲がよろしいですわね」


ミレイユも侍女たちも、どこか嬉しそうに笑っている。


その中心で。


リリアンは少しだけ恥ずかしそうに目を逸らした。

ここまで読んでくださり誠にありがとうございます!

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