表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/13

13

ある日の夕方。


西日がやわらかく差し込む部屋に、明るい声が響いた。


「お久しぶりでございます、お嬢様!」


「……ミレイユ」


リリアンは顔を上げる。


「相変わらず元気ね」


「ええ!それだけが取り柄ですもの!」


くるりと回りながら布を広げる。


色とりどりの生地が、机の上に並んでいく。


「さあさあ、本日は晩餐会用のドレス!」


「どんなお嬢様に仕上げましょうか?」


「……いつも通りでいいわ」


迷いなく答える。


「黒で任せる」


「えええ!?」


大きな声。


「お嬢様、十二歳のレディが黒一色なんて、勿体ないですわ!」


「似合うからいいのよ」


「似合うのは当然ですけど!」


身を乗り出す。


「せっかくの機会ですもの、もっと華やかなお色を!」


「……面倒ね」


小さくため息。


ミレイユはぱっと顔を輝かせた。


「でしたら!」


手を打つ。


「エヴァン様に決めていただいては?」


「……は?」


「きっと、お嬢様に一番似合う色をご存知ですわ!」


沈黙。


「……ふう」


リリアンは小さく息を吐いた。


「わかったわ」


視線を横に向ける。


「エヴァンを呼んでちょうだい」


「かしこまりました!」



扉が開く。


「お呼びでしょうか」


エヴァンが一礼する。


「ええ」


リリアンは少しだけ視線を逸らした。


「……私に似合うドレスの色は、何だと思う?」


一瞬。


空気が止まる。


「……」


エヴァンがわずかに目を見開く。


「……どうしたの」


「いえ」


すぐに表情を戻す。


「少々、意外で」


「仕立て屋が」


ちらりとミレイユを見る。


「黒以外も持っておくべきだって」


「なるほど」


エヴァンは頷く。


「私も同感です」


「……そう」


「そうですね……」


少し考える仕草。


「何色でもお似合いになるかとは思いますが」


ゆっくりと視線を上げる。


「赤、でしょうか」


「……赤?」


「はい」


静かな声。


「輝く金の髪と、白い肌」


一歩、距離を詰める。


「最も映える色かと」


リリアンは少しだけ目を伏せる。


「……じゃあ、それでいいわ」


「まあ!」


ミレイユが手を叩く。


「素敵ですわ!絶対にお似合いになります!」


「エヴァン、もういいわ」


「かしこまりました」


一礼する。


「失礼いたします」


静かに部屋を出ていく。


扉が閉まる。


少しの沈黙。


「……それで」


ミレイユが身を乗り出す。


「他にも何か?」


リリアンは少しだけ迷う。


「……ひとつ、頼みたいものがあるの」


「はい、何なりと」


「エヴァンの目の色と同じドレスも作ってちょうだい」


ミレイユが瞬きをする。


「……目の色?」


「水色よ」


小さく付け加える。


「淡い、水色」


「……!」


ミレイユの顔がぱっと明るくなる。


「まあ……!」


ぐっと両手を握る。


「お嬢様……それは……とても素敵ですわ」


リリアンは少し視線を逸らす。


「……それと」


小さく続ける。


「エヴァンでも身につけられるようなものも」


「……!」


今度は言葉を失うミレイユ。


「お嬢様……!」


感極まった声。


「きっと、お喜びになりますわ!」


「……だといいけど」


わずかに頬を染める。


「別に、深い意味はないわ」


「ええ、ええ!」


大きく頷くミレイユ。


その目は、完全に楽しんでいた。


「お任せください!」


布を抱えながら、くるりと回る。


「最高の一着をお仕立ていたします!」


夕日の中で。


淡い水色の布が、やわらかく光った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ