6. それは中々の手合い違いで
アホみたいな俺の提案に、「だ、脱衣将棋?!」と驚きつつ赤面する羽生飛鳥。
身体の前で組んだ腕によって大きい胸が強調されていて、ちょっとエロい。形の良いアーモンド型をした瞳の上で現在困ったように八の字になった眉は嗜虐心をそそり、なんかちょっといけない事をしている様な気分になってくる。
「勿論、きちんとハンデはつける。けど、嫌ならやめてもいいよ。強制するものでもないし」
「……ううん、やる。やってみる」
マジか……
言い出しっぺの俺が言うのもなんだけど、大丈夫かなこの子。将来、悪い男に騙されてダブルピース案件にならないかちょっと心配……いやまあ、元々俺を騙そうとしてきたのは彼女の方であり、しかもそれって現在進行形なんだけどね。
「じゃあ、ルールを決めようか」
パチパチと駒を並べてから時計を確認すると、昼休み終了の予鈴までちょうど20分程だった。
お互い一手10秒以内に指す『10秒将棋』を提案し、羽生飛鳥が了承。これなら二局はできそうだ。
「で、勝った側が二枚ずつ脱がせる衣服を指定する様にしようか」
「え?」
驚いた顔をされた。
まあ、そりゃそうだろう。
仮に俺が2連勝してブレザー、シャツ、キャミソール、ブラと指定すれば、大きなお山が初日の出なのだから。
当然、普通に考えたら拒否される案件なので彼女が何か言う前に一見向こうが有利になる様な条件を叩き込む。
「で、手合いは六枚落ちにしよう」
「ろ、六枚!?」
驚くのも無理はない。最強の駒である飛車と角に加えて両端を守っている香車と桂馬まで抜いた重大なハンデなのだから。
そんなにハンデをもらっていいの?といった感じで羽生飛鳥がこちらを見てくる。律儀な事だ。
「羽生さんのお父さんが凄く強いことは分かっているよ」
娘に駒落ちで将棋を教えていたあたり、彼女の父親はきっとかなりの将棋ガチ勢なのだろう。もしかしたらアマチュアの県大会で上位に入る有段者クラスなのかもしれない。
「でも、たぶん俺の方が少しだけ強いからね」
善人を装い、安心させる様に言う。
後戻り出来ない罠へと誘い込む為に。
「でも今回は、羽生さんにとっては初めてのプレッシャーがかかった大勝負になるわけだろ。なら、それくらいのハンデをつけても丁度いいくらいだと思うんだよね。代わりに俺は本気で指すから、君も脱がされ無い様に本気でやりなよ」
僅かに逡巡する様子を見せた羽生飛鳥だったが、舐められていると思ったのか決意を固めた顔になる。
「……分かった。じゃあ、よろしくお願いします」
よし、かかった!
内心でほくそ笑む。
なにせ、俺はプロだ。
先程、羽生飛鳥は父親に二枚落ちでなかなか勝てないと言っていた。アマ有段者相手にその程度の棋力なら、俺は六枚落ちでもまず負けない。期待勝率は80〜90%と言ったところだろう。
まあ、これも人生勉強だと思ってくれ。世の中には汚い大人が沢山いるんだ。なーに、武士の情けでパンツを脱がせるのだけは勘弁してあげるからさ。
ちなみに、時間切れなんて結末にはならないと明言しておく。こちらが一手3秒以内にさせば、予鈴まで5分以上時間は余るはずだ。
さあ、盛り上がってまいりました。
***
そして15分後、上半身裸になり机に突っ伏す雑魚がそこにはいた。
上着だけでは枚数が足らず、現在パンツ一丁だ。
「ま、負けました……」
「あの、深浦くんは凄く強かったよ?私もちょっと危なかったもん」
そう、2連敗を喫したのは俺である。
なんだよコイツ、余裕でアマ有段者クラスの実力じゃねーか!多分、棋力的には俺が二枚落ちでガチ勝負してトントンな位だとおもう。お父さん何者だよ。
「やっぱりプロ棋士って凄いんだね」
「な?!」
成程……どうやら彼女は相当将棋に精通した人間であり、俺はまんまと騙されていたらしい。清純そうな顔してとんだ女狐じゃないか。
と、そこで予鈴が鳴った。
「今日は付き合ってくれてありがとう。負けられない真剣勝負ってこんな感じなんだね、凄くドキドキしたよ」
そう言って笑顔を見せる羽生飛鳥。
めっちゃ煽ってくるじゃん……




