11.それは棋士として恋と言えなくもない状態で
ーー以上、回想おわり。
「ねえ、その倒したい相手ってもしかして『小手指アリス』さんのこと?」
「ん、ああ、そうだよ。昔悔しい負け方をしちゃってね、それからよく夢に出てくるんだ」
「ふ、ふーん……」
どうやら最大の仮想敵になっているらしくてな。よく夢の中にも出てきて練習対局……即ちスパーリングをするんだが、毎回ボコボコにされ、ぶっ飛ばされる所で目が覚める。
最後の三段リーグの間はそんな事なかったんだが、プロ入り後その夢を毎日みる様になった。
今後対戦する可能性があるからだろう。今後安眠のためにも、早めに勝ってトラウマを払拭しておきたい。
「向こうは俺のことを歯牙にもかけてないみたいだけど、俺は負けず嫌いらしくてね。毎日彼女に勝つことを考えているんだ」
ちなみに今度、とある非公式戦で当たる予定。
向こうは多忙で準備も不十分であろうそこで、まず一つ勝っていずれ相まみえるであろう公式戦への弾みにしたい。
そんなことを考えていると
「もしかして、私の夢も見たりする?」
窺うようにこちらを見ながら問いかけてくる羽生飛鳥。
あー、最近は俺、ずっと君に負けてるもんね。勝手に夢に登場させられるのが嫌なのだろう。でも安心してくれ。
「え?羽生さんの夢は見ないけど」
「……ちなみに、私に勝つことは?」
「勿論考えているよ。なーに、君の差し回しは覚えてきたし、そろそろ勝たせてもらうつもりさ」
そうして始まったこの日の2局目、どう言った訳か羽生飛鳥の差し回しは、今までのどの対局よりもキレっキレに冴えていた。
優勢な局面からコチラには何もさせず、じわじわと締め殺すような今までに無い指し回しである。
そして何故かその日以降、夢の中に出てくる相手が二人になった。
盤を二つ使っての、いわゆる二面指しである。
すなわち小手指アリスと羽生飛鳥の両方からボコボコにされる夢だ。




