# 第二話 ## 「逃げても消えない夢」
# 第二話
## 「逃げても消えない夢」
翌朝。
湊は何度もスマホの画面を見ていた。
昨夜届いた一通のメール。
そこにはこう書かれていた。
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**「あなたの作品を拝見しました。よろしければ一度お話しできませんか?」**
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送り主は小さな出版社だった。
有名ではない。
だけど確かに出版社だった。
湊の手は震えていた。
「なんで今さら……」
三年前。
湊は小説家になる夢を諦めた。
何十回も新人賞に応募した。
結果は全て落選。
周りの友人は結婚し、就職し、前へ進んでいった。
自分だけが立ち止まっている気がした。
だから諦めた。
原稿も押し入れにしまった。
夢ごと閉じ込めた。
はずだった。
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「どうする……」
机の前で悩む。
期待したくない。
また傷つきたくない。
どうせ駄目かもしれない。
そんな言葉が頭を埋め尽くす。
その時だった。
窓の外から声が聞こえた。
「悩んでる顔してるね」
「え?」
ベランダの向こう。
昨日の少女が立っていた。
「なんでいるんだよ!?」
「通りすがり」
「絶対嘘だろ!」
少女は楽しそうに笑った。
そして言う。
「夢のこと?」
湊は驚いた。
「なんで分かる」
「顔に書いてある」
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少女は窓越しに言った。
「ねえ湊」
「名前教えてないのに」
「昨日聞こえた」
「盗み聞きかよ」
「違うよ。偶然」
絶対嘘だ。
だが不思議と嫌ではなかった。
少女は真剣な顔になる。
「怖い?」
「……怖い」
湊は認めた。
「また失敗するのが怖い」
「期待するのが怖い」
「笑われるのが怖い」
「もう傷つきたくない」
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少女は静かに頷いた。
「そうだよね」
責めなかった。
否定もしなかった。
ただ受け止めた。
「でもさ」
彼女は微笑む。
「夢って逃げても追いかけてくるよ」
「……」
「本当に諦めたなら、そのメール見た時に心は動かない」
その言葉に。
湊は何も言えなかった。
図星だった。
昨夜。
メールを見た瞬間。
胸が高鳴った。
忘れたはずの熱が戻ってきた。
それが答えだった。
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少女は立ち上がる。
「やるだけやってみたら?」
「失敗したら?」
「その時は泣けばいい」
「成功したら?」
「笑えばいい」
あまりにも簡単そうに言う。
だけど。
その言葉が不思議と心に残った。
「大事なのはね」
少女は振り返る。
「後悔しないこと」
「挑戦しなかった後悔は長いよ」
風が吹く。
白い髪が揺れた。
「じゃあまたね」
「待て!」
湊は呼び止める。
「名前」
少女は少しだけ考えた。
そして笑った。
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「陽菜」
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初めて教えてくれた名前。
太陽のような笑顔だった。
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その日の夜。
湊はメールを開く。
何度も書いては消した返信。
そして最後に送信ボタンを押した。
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**「ぜひお話しさせてください」**
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送信完了。
その瞬間。
胸の奥で何かが動いた。
怖い。
不安だ。
苦しい。
だけど。
少しだけ楽しみだった。
夢はまだ。
終わっていなかった。
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## 次回予告
### 第三話
**「最初の一歩」**
出版社との面談当日。
緊張で震える湊。
しかしそこで告げられたのは、
思いもよらない厳しい現実だった――。
「才能だけじゃ届かない」
夢と現実の間で揺れる湊。
それでも彼は前を向けるのか。
そして陽菜の正体にも少しずつ迫っていく――。




