第9話 GW旅行 in来ノ﨑 with広報部と生徒会(?)
今回からGWの旅行編スタートです。
雪月は先輩達と旅行を通じて、どんな話を聞くのでしょうか。
第9話 ゴールデンウィーク旅行
「どうして広報部がゴールデンウィークに温泉の観光地である来ノ﨑市にきているんですか。」
ここは今言った通り、温泉観光地で有名な来ノ﨑市。前回ハル先輩が旅行と言っていたがまさか本当に来ることになるとは。
「いいじゃないか。まぁ、いわば雪月くん入部歓迎会とクラス制作の調査お疲れ様会を兼ねたものだよ。」
「そうそう、ゆっきーくんたくさん頑張っていたから、ここで疲れをいやしちゃおう。」
なるほどなるほど。百歩譲ってハル先輩の説明には納得するとしよう。でもどうして生徒会長の秋月先輩と生徒会の時沢先輩がいるのだ。というか時沢先輩のゆっきーくんっていう呼び方も…。
「あの、生徒会の二人はどうしてきているんですか。」
そう聞くと、
「理由なんて旅行いくのにいらないでしょう。人数は多ければ多いほど旅行ってものは楽しくなるのよ。」
と一蹴された。生徒会長は強い。
「まぁ、3泊4日だ。ゆっくりしていこうじゃないか。」
***********************************************
事の発端は5月1日まで戻る。
「雪月くん、この前の話覚えているかい。」
自分が書いた文章の校正と総仕上げをしている隣で、ハル先輩はルービックキューブをいじっていた。
「先輩、少しは暇なら手伝ってくれてもいいんじゃないんですか。」
忙しさのあまり、多少語調に怒気が含まれるがこの先輩だから別に気にすること必要もない。
「それも社会経験だよ、雪月くん。2学期から広報部が君のものだよ。君が経験を積んでなくて、誰がこの広報部を運用するんだい。」
元はといえばこの先輩が高2から生徒を取らなかったせいである。まったくこの人は。
「そんなことよりも、雪月くんってば。週末話した件覚えているかい。」
「そんなことってなんですか、そんなことって。今日この原稿出さないと発行間に合わないんですよ。無茶言わないでください。」
もう先輩なんか知りませんといって、広報部のドアを腹いせに蹴って閉じて出てきた。
「ハル先輩は少し痛い目にあってほしいけど。まぁ仕方ない、とりあえず図書室でも行こうか。」
うちの学校は校内、休み時間など授業中以外は基本何を使ってても怒られないのでこういう時に便利だ。
階段を下り、図書室前の廊下を歩いていると、目の前から時沢先輩が歩いてきているのが見えた。会釈をしておくと、時沢先輩はこちらに向かってきて、
「あら、雪月くんじゃないか。いったいどうしたんだい。」
と聞いてくる。愚痴を少し言いたい気分でもあったので、広報部でのハル先輩とのやりとりを話し、そして今から図書室で作業をするという旨を言うと、
「それなら図書室じゃなくてもっといいところがあるさ。」
と言って、案内してもらうことになった。
「わかるよ、雪月くんの気持ち。ハルくんは美香とまったく対照的で、自分から物事をとりくもうとしないものね。去年同じクラスだった時は大変だったもの。」
あの先輩、同級生にまで迷惑かけているのか。
「でもね、ハルくんって頭はものすごくキレているから、裏方としては最高の適任者なのよね。」
「………。」
確かに今回の件に関して、自分はハル先輩に少しリードしてもらったところがあったような…。
「はい、着いたよ、雪月くん。」
「え。」
ここはクラス制作の時に初めて入った生徒会室ではないか。
「あ、あの一応生徒会に入ってないんですけど。」
おそるおそる尋ねると、時沢先輩は肩を押しながら、
「いいからいいから、入ってどうぞ。」
と言ってくる。こうなりゃ腹を括るしかない。
「生徒会役員でもないのに無理やりいれてくる時沢先輩もどこかハル先輩と似ているのではないかと少し感じた。さしずめそんなとこかな。」
目線を上げると生徒会長の席に秋月先輩が座っていた。
「いや別に、そんなこと全然考えてないですよ。」
内心完全に読み取られたことにすこし焦る自分がいたからか、しどろもどろになってしまう。
「わかりやすいな。どうせハルが邪魔ばっかするからここで仕事をしようっていうことでしょう。その机を使うといいよ。」
会長が指す方向には書記用の机があった。
「これ本当に使っていいんですか。」
「あたりまえだ。もともとそれは広報部の机なのだ。」
おそらく机の再利用なのだろう。とはいえ広報部にある机の方がやや古くてなにやらおかしな気もするが。
「はいはい、雪月くん。早くお仕事しないと今日中に終わりませんよ。」
と言われ、時沢先輩に強制的に座らされる。あと少し身長があれば抵抗できるのに……。
「はい、ハーブティーです。締め切りまで頑張ってくださいね。」
時沢先輩はそう言い、再び生徒会室を出て行った。
(ここまでされたら、先に片付けるしかないか。)
自分の眼鏡ケースから眼鏡をとりだし、雪月は集中を始めた。
「ふぅ。やっと終わった。」
窓を見ると、日がもう少しで落ちようとしているところだった。
「お疲れ様。さすがだね。集中力も人一倍のようだし。」
ふと机を見ると何回か、時沢先輩がチョコなどの差し入れを置いて行ってくれてたことが分かる。
「さすがにまったく気付かなかったものだから、初めは集中しているふりでもしているのかと思っていたけど。」
「すみません、集中すると周りが見えなくなる性質なので……。」
そう言いながら、せっかくいただいたチョコを頬張る。ここまですると脳が糖分を欲していたことがすぐに分かり、甘さが口いっぱいにひろがりほっと安らぐ。
「失礼。雪月くんの原稿は終わったかい。」
「ハル先輩……。」
待っていてくれたのだろうか。よくよく考えてみればさっき自分に話しかけようとしていた最中に、出て行ってしまったのだっけ。失礼なことをしてしまったようだ。
「先輩、さっきは話途中に出て行ってしまってすいません。原稿終わるまで待っててくれてありがとうございます。」
「え、あ、うん。そうだね。全然気にしてないよ。原稿終わって本当によかった。そっか、さっきなんか話そうとして出て行っちゃったね。うーんと、なんだっけか。ちょっと待って、時間かけたら思い出すから。」
この先輩…やっぱりだめじゃないか。
「あ、そうそう。この前週末にゴールデンウィークに広報部でどこか旅行に行くという話をしただろう。その計画が完成したから、雪月君にも話そうと思って。ちょうどいい、理香も時沢さんもきくといいさ。」
「旅行……、あっあれか。」
そういえばどこ行くのか秘密とか言って立ち去って行ったような忌々しい記憶が…。
「今回は温泉観光地の来ノ﨑に行くことに決定。時間は5月3日の9時に駅前で。じゃあまた。」
「え、あの先輩。」
そういった時には先輩はすでに姿を消していて、廊下からはバイビー、よい休日を、と先輩がすれ違う生徒に行っている声が聞こえる。
「大丈夫、君もいずれ馴れるさ、ハルは面白いやつだから。」
「あんまり馴れてもほしくないんだけどね…。ハルくん特殊だから。」
この二人はどれほど迷惑を被ってきたのだろうか。顔を見るとなんとなくだが苦労が読み取れた。
*************************************************
そして今に戻る。
「生徒会室にいたから連れてくるっていうハル先輩もハル先輩だけど。」
前には高校生ながらも子供のように、はしゃぐ女子二人…。
「まぁ楽しめればいいかな。」
「そうそう。楽しもう。」
少しずつハル先輩に慣れていかなければな、というかこの機会に慣れてしまわねば。と決心する雪月なのであった。




