クリスマスの思い出
クリスマスということで、この作品の1年前、登場人物たちはいったい何をして過ごしていたのかを描きました。
軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。
登場人物紹介
白井雪月 本作の主人公。詳しくは本編をご覧ください。
湊 雪月の幼馴染の親友。いつも行動を共にしていた。
咲良 上と同じく
クリスマス番外編→https://ncode.syosetu.com/n3821el/10/
第一話 →https://ncode.syosetu.com/n3821el/1/
番外編 クリスマスの思い出
クリスマスの特別編です。作中の約1年前のことを描いています。
軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。
(雪月の場合)
雪が降っていた。クリスマスに雪とはなんとロマンチックなのだろうか。
今日は朝から雪乃と家でのパーティーをしていた。といっても雪乃はサンタクロースからもらったプレゼントに夢中で、飾りつけなどをやったのはほとんど父と僕だったが。
それを午前中に終わらせた雪月は約束の場所へ向かっていた。
「雪月かい、少し遅いじゃないか。」
「少し寒いよ、雪まで降ってきたんだから。」
待ち合わせ場所にいたのは同じ部活の咲良と湊だった。
「ごめん、家のクリスマスの準備にすこし手間取っちゃって。」
「あぁ、また雪乃ちゃんがプレゼントで遊んで邪魔しちゃったんでしょ。まったく可愛いなぁ。」
咲良と湊は何度もうちに訪れたこともあり、特に咲良は雪乃にとても懐かれており、来るたびにいつも遊んでいた。
「今日はどこへ行くんだい。」
そう雪月が尋ねると、湊は少し間を空けていう。
「今日は子供たちを襲撃に行くんだよ。」
児童館に着く。
「さぁ、じゃあ入るぞ。」
一瞬さっき襲撃ときいたので、ねじが外れたのかと思ったが、ただクリスマスプレゼントになにもらったのかを調査するだけなそうな。湊は小説の読み過ぎなところがあるな。
「湊の子供好きってちょっと度が過ぎないと思わない。」
そう言われても、咲良の雪乃愛もかなりの愛だと思うが。こんなこと口に出したらひどい目にあうので、心にしまっておく。
だが確かに咲良の言うとおり、湊は昔から子供が大好きである。面倒見のいい彼だからきっといいお兄さんになれるのだろう。子供からもものすごく人気だ。
「これ別に今日来なくてもよかったよね。」
そういうと咲良は言う。
「まぁ、最近頑張っていたし、ご褒美ってことでいいんじゃない。」
本当に児童館で過ごして2時間たってしまった。
「いやごめん雪月、咲良、時間とらせちゃって。」
「本当よ、クリスマスにこんなことして終わるなんて。」
そういう咲良が途中からめちゃくちゃはしゃいでいたのは黙っておこう。なんだかんだいって一番子供好きなのでは。
「少しそこの喫茶店で話さない。せっかくだしさ。」
「そうだね、雪月時間は大丈夫かい。」
6時までには帰っておけばいいだろう。うん、大丈夫と答える。
「じゃあ、そこの喫茶店で。」
自分はカフェオレ、咲良はホットレモンティー、湊はブラックコーヒーを頼む。
「今日は本当に疲れたわ。」
「お疲れ様。今日はありがとう二人とも。」
「なんだかんだありながらも自分も楽しかったよ。」
「私もね。今日が三人で過ごせる最後のクリスマスかもしれないしね。」
この時点で咲良、湊はすでに地元の高校への推薦が決まっており、自分が引っ越す先の高校は秋に試験があり、合格が決まっていた。
「まさか引越してしまうなんてね、本当にさみしくなるなぁ。」
「そうだね、三人で一緒の高校に行けるものだと思っていたから、自分も引っ越すなんてあまり信じられなかったな。」
三人は沈黙する。この15年間ずっと一緒にいたのだ。別れというのはなかなか受け入れがたいものだ。
「く、クリスマスにそんな辛気臭い話やめようよ。」
咲良は目に涙を浮かべていた。もういまにもあふれそうだ。
「本当に涙もろいな、咲良。はい、ハンカチ。」
「ありがとう、湊。ちょっとトイレ行ってくるね。」
化粧室に向かう咲良の背を見ながら、こんな日常を過ごせるのもあと3カ月かと改めて痛感する。引っ越しなんてなければよいのに。
「雪月。」
「湊、なんだい。」
湊の方を向くと、湊は今まで見たことないような不思議な表情をしていた。悲しいのだろうか。
「どうしてもいかねばならないのか。僕たちの学校には寮もある。それではだめなのか。」
「ごめん。」
咲良の前では弱音を吐かない湊。やはり彼の中にもこの日常を壊したくない気持ちがあったのだろう。
「わかってる、わかってるんだ。お前も妹の雪乃ちゃんを大切にしたい気持ちがあることも、お前なりにこのことを受け入れていることも。わかっているんだ。だけど。やっぱり受け入れにくいよ。」
湊の目から涙が流れるのを見える。
「湊。ごめん。今日は先に帰るよ。」
雪月、と咲良が呼ぶ声が後ろから聞こえる。けれど雪月には振り返ることができなかった。
「おかえり、お兄ちゃん。」
「あぁ、雪乃ただいま。」
家では家族が待っていた。
「今日は楽しめたかい。」
親に尋ねられるも、答える気が起きなかった。
「ごめん、母さん。少し一人にしてもらってもいいかい。」
「…わかったわ。おなかがすいたら下りてきなさい。」
こういう時、自分の気持ちをすぐ理解してくれる親がいるのはうれしいことだ。もっとも親の事情で引越しさえなければ…いやこんなことを考えるのは間違っている。少し眠ろう。
起こされたのは、夜10時だった。
「雪月、雪月ってば。友達が来てるようだよ。」
この時間にか。いったい誰だろう。とりあえず下に降りなければ。
玄関に行くといたのは咲良と湊だった。
「どうしたの、二人とも。」
「あの、さっき渡せなくて。」
そういうと咲良はクリスマスプレゼント用のラッピングに包まれたものを渡しててきた。
「一日遅れだけどね、これ受け取って。」
咲良が少し無理して笑顔を浮かべているのがわかる。
「ありがとう、わざわざ家まで来させちゃってごめんね。大切にするよ。」
それじゃあといって咲良は出る。
「湊もありがとう。」
湊の方に向き直りそういうと湊は一冊の文庫本を差し出してきた。
「まだ三カ月あるが、餞別でもあり、クリスマスプレゼントでもある。悲しくなったら読むように。」
そういってまたねと言って出て行った。
「いい友達がいてよかったね。」
後ろで母が見ていたようだ。
「本当にね。」
自分の部屋でプレゼントをあけると、咲良の中身は空色の手袋だった。湊の方の文庫本も開けようとすると、よくみたらシールで封がされている。
「なんだこれ。」
シールには来年の4月まで開封禁止、と書いてある。まったくまめなやつだ。これなら卒業して別れる際に渡せばよいのに。
「よかったね、お兄ちゃん仲直りできて。」
いつの間にか雪乃が隣にいた。
「別に喧嘩なんかしてないさ。それより早く寝なさい。」
「いいの、今日はサンタさんがいるのか起きなきゃならないの。」
「それなら風邪をひかないようにしないとね。」
まったくうちの親は昨日プレゼントを置こうとしたら、起きてたせいでおけなかったといっていたがどうしたものか。
「なんにしろ、いいクリスマスだったかな。」
まだ別れの季節には早い。残り3カ月大切に、思い出を作れることができればな。
雪が舞う。雪乃は昨日の徹夜のせいか、このまま眠ってしまったせいで仕方なく床で眠る。
ふと目をあけると、サンタクロースの格好をした何者かが雪乃の枕元にプレゼントを置いているようだ。うちに一日遅れのクリスマスが訪れるようだ。
これにてクリスマス番外編は終わりです。
登場人物のちょっとした過去をしってもらえたら幸いです。
みなさんはどんなクリスマスをおくられましたか?




