クリスマスの思い出
クリスマスということで、この作品の1年前、登場人物たちはいったい何をして過ごしていたのかを描きました。
軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。
秋月美香 生徒会長になってまだ3カ月目。2学期では大胆な改革を何個も行う。
ハル 生徒会長の幼馴染。広報部所属。面倒見がいいが、鈍感??
番外編 クリスマスの思い出
クリスマスの特別編です。作中の約1年前のことを描いています。
軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。
(ハルと秋月美香の場合)
「ハル、ハル、こっち。こっちだってば。」
美香は朝からものすごく張り切っている。今日は12月25日。世間でいうクリスマス当日だ。
「わかった、わかったから。もう少しだけ待ってて。」
「もうなんで二週間前から言ってるのに、支度に手間取るのさ。」
「まったく、元気な奴だな。」
デートに行くカップルでもあるまいし。
5分経って玄関をでると、むすっとした顔の美香の姿があった。
「遅いよ、女の子を待たせるってどういうつもりなの。」
「もう女の子っていうのは似合わないぞ。あと周りに誰もいないからってその甘えモードをするな。」
美香とは子供の時からの付き合いのせいか、僕と二人きりの時はいつもこのようになる。
「いいじゃん、いつもあんな堅いの作っていると疲れてしまうんだよ。」
確かに美香の言い分ももっともである。生徒会長に任命されてわずか3カ月。その3カ月の間に美香がしたことは大変なものであり、その期間美香が休む姿を見たものは誰もいなかった。
そんなことを思いながら、無意識のうちに美香の頭をなでていると
「子供扱いはするな。」
との声がする。いやはやいったいどうすればいいのやら。
とりあえず僕たちは電車に乗った。今回の計画役は美香だ。僕は美香にひたすらついていくのみ。時々
「美香、いったいどこに向かっているのさ。」
と聞くけれど、彼女は、
「秘密だよ。こんなところでいったって面白くないだろう。知りたきゃ君の得意な推理でもするんだね。」
と答えるだけだ。仕方ない、今日まで頑張ったご褒美だからな。黙ってついていこう。
電車を乗り継いで1時間半。行き先を言わないにしても不自然ではないか。
「美香、そろそろ教えてくれ、、ない、、か。」
美香はスマートフォンで調べ物をしているかと思っていたら、下を向いて寝ていただけだった。いやいや計画役が寝てどうするんだよ。美香らしいと言えば、美香らしいが。
「おーい、美香。美香。」
肩を揺り動かすと、むにゃ。という声が聞こえる。
「あ、ハル。。えっ、ここどこ。」
「ここは○○駅だよ。」
うわぁ、という声が聞こえると思っていたのだが、予想と反していたようで、目的地は次の駅だったようだ。
「最近の疲れからか、爆睡してしまったようだ。ハルがいるおかげでよく眠れた。」
僕は快眠まくらなのだろうか。美香が眠りながら僕の肩にもたれかかってきて、よだれを垂らしていたのは伏せておこう。
目的地に着く。この駅は有名な神社があるというところとしてよく知られていた。
「今日の目的は、来年の生徒会運営の安全祈願。あと学業上達かな。」
「いや、美香それならここじゃなく、、。」
「ハル、早く行こう。日没までに帰れなくなっちゃうよ。」
美香はどんどん前へ進んでいく。人が多いのだからはぐれないように早く着いていかねば。
賽銭箱までには長い行列があった。
「ハルが遅かったせいでこんな列になってしまったよ。」
いや、まさか5分遅れたせいで30分も待たねばならなくなるとは思わなかった。本当に申し訳ない。
「これは20分くらいかかるかな。あとで温かい飲み物でも奢ってもらわなきゃな。」
「はい、本当に申し訳ないです。あとで買ってきます。」
そんな会話をして15分。もうそろそろで賽銭箱かなと背伸びで確認していると、少し前で、並んでいたカップルといかにも悪そうな若者がなにかもめごとがしているのが見えた。意識をそちらにむけてみると、どうやら若者がそのカップルがいるところを横入りしようとしていたらしい。まったく、マナーを守らない人はどうして減らないのだろうか。
「なんだか急に動かなくなったね。ハル何が起きてるか見える。」
「うーん。よく見えないな。すぐ動くと思うよ。」
美香にこういうことを言ってはいけない。美香はすぐこういうことに首をつっこみたがるものだから。
「私ちょっと見てくるね。ハルちょっと待ってて。」
あーあ。駄目だ、どっち動いてもこうなるってこと、もう何年も一緒に過ごしているというのに。
急いで美香の後を追わねば。
「どうして、守らないんですか。みんな守っているんですよ。列に並んでいるのにあなたたちだけが横入りしてしまったら、不公平になるじゃないですか。」
「なんなんだこいつは。偉そうに、子供のくせに。」
「子供かどうかは関係ありません。あなたたちは今確実に間違っていることをしているから周りの大人に代わって注意しているだけです。なんですかそれとも、なにか言い返せることがあるのなら言ってみなさい。」
あーもう。本当にいつもいつも美香は。危ないことにいい加減気づいてくれ。ここからでも明らかに若者たちの目がどんどん険しくなっているのが見て取れる。
「このガキ、痛い目あいたいようだな。ちょうどいい、美人だからついてこい。」
「痛い。やめて。すぐ暴力にはしって、これだから理性のかけらもない人は。」
「うるせえ、こっち向け。」
「やめてくれるかい。その子は僕の彼女だよ。それとも痛い目あいたいのかい。」
若者は歯ぎしりをしてその場を去っていく。ほんと間一髪抑えることができた。
「ハル、、、。ありがとう。」
「美香、危ないから駄目だろう。いつも君は先走りしてしまうんだから。なにか人を説得したいときはしっかり相手の目を見ろ。」
つい強い口調になってしまっているのを感じる。美香は今にも泣き出しそうな顔をして下を向いたままだ。
「美香が無事ならよかったさ。これからどうする。」
あいにく助けるために列を抜け出してしまったので、並びなおさなくてはならず、振り返ると来た時の3~4倍ほどの人がいるのが見て取れる。
「時間もないし、かえろっか。いいかい、美香。」
美香は下を向きながらこくっとうなずく。
「ふぅ、やっと着いた。」
ようやく自分の町に帰ってきたのは午後6時だった。
「なんだかんだいって、楽しかったよ。明日からまた頑張ろう、美香。」
美香はあれから落ち込んだままだ。本当に高2とは思えないくらいの精神の弱さだ。そんなことを考えていると、
「今日は私のリラックスもそうだけど、本当はハルともっといろいろなことがしたかったの。ハルもいろいろ手伝ってもらったせいで疲れてるだろうし。それを癒したくて。でもこんなことになっちゃって。」
ごめんね、と美香は言う。
「大丈夫、大丈夫だって。美香と一緒にいただけで楽しかったしね。」
そうなの、それならよかった、と言いながら、美香はこちらのほうへ向きなおる。
喜ぶ様子もまだまだ子供みたいだな。
「それにあの神社って生徒会の安全祈願とか学力向上とか祈るとこじゃなくて恋愛成就の場所だよ。だからカップル多かっただろう。本当に美香はお茶目だなぁ。」
そういうと美香の顔は見る見る真っ赤になり、僕を殴って帰って行った。あれ、美香のパンチってこんな強かったっけ、これなら若者に負けることなかったな。
次からはあまり心配しなくてもよさそうだなぁ。と考えながら、まぁこれも一つの収穫かと思いながら家に帰るハルなのであった。
ハルはいったい鈍感なのか??
楽しめていただけたのなら幸いです 穂村




