第48話・可愛いのと、可愛いのと、可愛いの。癒されすぎて取り乱すメルリア
可愛いのと、可愛いのと、可愛いの。
メルリアの周りにはミニマが集まってくる。もふもふのミニマたちに囲まれて、メルリアは感情のバロメーターを限界突破した。
固まるメルリア。
どこを見てももふもふの可愛い世界。
ちょこちょことメルリアの脚に触れてくるミニマの毛が優しく撫でていく。
そしてほんのり温かい。
脳裏は可愛いの洪水になっている。
「ほっほっ、ミニマたちはお嬢様から餌がもらえると思ったみたいですね」
メルリアはミニマたちの行動に合点がいった。
人参が好きだというので柵の外に取りに行くという。
ダナンについていく。
小屋の近くに布袋があり、中には人参が入っている。
ロアンにその袋を持ってもらうと、ゆっくりと歩きながら外の柵へと戻る。
ミニマたちは人参に気がついたのだろうか。
メルリアたちのいる柵にくっついて、こっちを見ている。
ミニマによっては待ちきれないのか、柵をかじっている。
「可愛らしい食いしん坊さんがいるわ」
メルリアは高鳴る胸をなんとか落ち着かせながら、ミニマに近づく。
ダナンは柵の中から声を掛ける。
「お嬢様もミニマに人参をあげてみますか?」
「うん」
柵に戻るとダナンから小さな布袋をもらう。
またメルリアに集まってくるミニマ。
メルリアはそれを見て布袋を落としそうになった。
そして一匹のミニマが前足を上げてちょいちょいと上下に動かしながらメルリアの足に触れる。
(⋯⋯えっおねだりしてるの!? ⋯⋯これは心の準備が出来ていないわ⋯)
それを見た他のミニマも同じようにメルリアの足をちょいちょいと触る。
ミニマの大おねだり会が始まる。
可愛すぎて心臓が持たない。
「メルリア様におねだりしているんですかね!? これは可愛らしすぎて悶えます!」
ロアンは声を大きくする。
「うん、可愛いの。皆、可愛い〜!」
メルリアが布袋を開けると、ミニマたちが顔を袋に突っ込んでこようとしている。
「ちょっと待ってね。今あげるよ」
メルリアは一本ずつ人参を取り出す。
しゃがんでミニマの口元に持ってくる。
そのまま口で食べてしまうミニマもいれば、前足で掴もうとするミニマもいる。
とにかく全部のミニマに行き渡るように周りを見渡す。
「お嬢様、小屋の中にもミニマが残っているのであげますか?」
「もちろん」
小屋に残っている子もお腹が空いているはずだ。
ダナンの後ろについて、小屋に戻る。
小屋の中のミニマにもあげないといけない。メルリアは立ち上がると小屋の中へと移動していった。
「ダナン、小屋の中のミニマにあげる人参は手であげるの?」
「近づいた時に反応する子には手渡しであげてください。反応しない子はエサ箱に入れるとよいです」
メルリアは近くの柵に残っているミニマに近づいてみた。まん丸のもふもふの塊になっているミニマを触ってみる。
ふんわりとした毛に手が沈む。
ミニマの温かさと鼓動が直接伝わってくる。
メルリアは顔が緩みっぱなしだ。
(柔らかい⋯⋯毛が細いのかな。隣のも触ってみよう⋯⋯あぁずっと触っていたいわ⋯⋯)
布袋から人参が無くなると、手を振ってミニマと別れる。
柵にしがみつきこっちを見ているミニマが見えた。
いじらしくて身悶えしそうになる。
ミニマたちが見えなくなるまで、メルリアはずっと見送っていた。
家に戻ってくると、タンダが卵を乗せたお皿を持ってきた。
「そうだったわ。ゆで卵!」
ミニマの卵らしい。
ミニマの卵は有精卵ではないらしい。どういう経緯で産んでいるのか、ダナン自身も知らないようだ。
丸い卵を割ってみると、ムースのような少し柔らかい中身だった。
プリンのように一面が薄黄色。
そのまま食べても、きめ細かい舌触りに黄身の旨味を感じる。
「すごく濃厚ね」
マヨネーズを少しつけると、旨味が跳ね上がった。
「ん〜」
メルリアの様子を見たロアンも急いで口に入れる。
目を瞑り旨味を堪能しているようだ。
頬を上気させて、目を見開いた。
「これは美味しい!」
お土産に籠いっぱいの卯卵をもらうことになった。
ダナンとタンダにも卵サンドは好評だった。
そうして食事が終わると、チーズ作り再開である。
先程の大鍋の前に戻ってくる。
表面が固まってきているように見える。
ダナンはこの状態をカードと呼ぶのだと教えてくれる。
カードを切っていく。
キッチンベンチに、ケーキの型のような低い円柱の容器を置く。
その中に布を広げてその中にカードを入れていく。
繰り返していくと大鍋の中身がなくなった。
「ダナン、このあとは何をするの?」
「今日はこの容器の上に重しを乗せて、水を切ります。明日、水気を切った表面に塩をすり込んで、熟成庫に仕舞いますよ」
今日の作業はあと少しのようだ。
ダナンは熟成庫に連れて行ってくれるという。
(牛舎の隣に建っているのかしら?)
ダナンの後ろをついていくと、別の部屋に行くようだ。
「えっ?」
部屋かと思ったら、行き止まりにダンジョンのような地下の階段がある。
「これは代々使っている熟成庫ですよ」
土を掘って作ったのだろう。
土に囲まれた熟成庫は外気に触れていないようで、心地よかった。
冬でも一定の温度になるようだ。
そこに木の棚があり、いくつものチーズが置いてある。
ある程度、数が溜まると荷馬車で隣領に売りに行くようだ。
ダナンがチーズをくれるという。
メルリアは目についた円盤状のチーズを持ち上げる。
中身がずっしりしているのか、見た目以上に重い。
そのメルリアの様子を見たダナンは朗らかに笑った。
「ほっほっ、それは3kgくらいありますから、気をつけてください」
メルリアはロアンに助けを求める。
「ロア〜ン」
「はい、メルリア様ぁ!」
破顔しながら近づくロアンにしっかりとチーズを持ってもらった。
次回の二角的イチオシシーンは
(あぁ、シエルとミニマの組み合わせは癒しが渋滞しているわ。この瞬間を聖典の挿絵にしたいの!)
メルリアは心の中で盛大に叫んだが、ロアンとやっていることはあまり変わらなかった。




