↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】没落貴族に置き去りにされた庶子(幼女)ですが、使用人たちと楽しく屋敷を立て直します  作者: 二角ゆう
第二章・クアココット領 始動〜ニック編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/53

第43話・ニックの華々しい決着(前編)

 馬車を一日走らせた。

 三回馬を変えて、ようやく目的地に近づいてきた。


 ニックの運命が左右される日になるかもしれない。それは誰も口には出さなかったが、アーノルドとバルドとニックの間には、いつもより空気が張り詰めていた。


 リコルディ男爵家のあるアセンディア入りした。

 平らな石畳はそれまでの道とは、比べものにならないほど、揺れない。

 整然と敷き詰められた床石のおかげだろう。


 それまで通ってきたどの街よりも広い。

 街中も空気が澄んでいて、クリーム色の城壁と窓際に飾ってある赤い薔薇のコントラストが綺麗だ。


 街中も城壁が張り巡らされており、区画が分かれているようだった。


 各区画にいる門番に、アーノルドはバルディーニ子爵家の家紋が入ったマントを見せる。


 確認が終わると門番は直立して礼をする。


 何回かそうしているとお屋敷に入った。


 近づく度にニックの顔から笑顔が消え、肩に力が入っていく。

 無理もない。人生を台無しにされたところだ。

 都合よくリコルディ男爵に招集されてきたのだから、誰だってそうなる。


 玄関を抜け、廊下を歩く。


「よく見ると両脇の扉の装飾はニックの作品か?」

「えぇ、全部」

「本当に凄いな⋯⋯メルリアが見たら、大興奮しそうだ」


 それは言い過ぎではない。

 男爵はニックの作品を気に入っていたのだろう。

 屋敷の中はニックの作品で溢れかえっていた。

 階段の手すりから扉。

 花瓶を置く台まで。


 繊細で緻密な作品は、ここでずっと丁寧に使われているようだ。


 ニックが前回はたどり着かなかった応接室にやってきた。


 応接室の扉ももちろんニックの作品。

 華やかな薔薇や百合があしらわれた扉だ。


 応接室の中にはすでに人がいた。


「ニック、久しぶりだな。あの件は私の使用人が迷惑をかけた」


 リコルディ男爵はクルンとまるまる蜂蜜色の髪で下腹を蓄えていた。

 彼はゆっくりとニックに頭を下げた。


「い、いえ⋯⋯」


 ニックも頭を下げる。


 あの事件があった後、男爵は不審に思ったようだ。ニックの人柄は知っている。だが、それを証明できるものはない。


 そうしているうちに、暴力の常習性があったとか、突然、側近に殴りかかったという話になって、たまたま居合わせた王室の書記官は正式な調書を作成した。


 なぜかっとなって殴ってしまったニックと側近の近くに、たまたま王室の書記官が居合わせるのだろうか。

 しかも爵位授与の前日に。


 話がうまくいき過ぎている。


 男爵はニックの事件で証言した家具職人と側近の身辺を洗った。


 すると、家具職人と側近は繋がっていた。

 それに他の使用人に聞き取り調査をしたところ、ニックに常習的に暴言を吐いていたのは側近の方だった。


 そこから類推するに、家具職人と側近はニックの爵位を邪魔したかったのではないだろうか。


 それから書類が見つかった。

 ニックの家具の代金のほとんどを中抜きした内容が書かれている。

 家具職人と側近が不当に大金を得ていた。


 それが分かり、家具職人と側近を警備隊に引き渡した。


 側近は西側にあるカーター男爵家の傍系の次男だった。リコルディ男爵は側近が不当に得た日付、金額や内容を纏めた書類と共に、側近の父とカーター男爵に直接会った。


 側近の父は信じられないといった驚きの表情を浮かべている。


 一方、カーター男爵の瞳には怒りが込み上げる。


 リコルディ男爵は極めて感情を込めないよう、事実を読み上げる。


 二年にも及ぶ不正。

 得た金額は側近の年収を遥かに超える。


 側近の父は息子に甘いのだろう。

 終始、庇うような言葉が聞こえる。


 カーター男爵は誠実な人物と名高い。

 側近の父を一喝すると、リコルディ男爵に謝罪をした。


 警備隊から引き戻された後は、厳しく罰すると約束してくれた。


 リコルディ男爵は馬車に乗って戻ってきた。


 屋敷の少し手前の大通りには、側近と口裏を合わせて、ニックの売上を勝手に抜き取っていた家具職人の店がある。


 看板には金箔の枠が貼ってあり、格式高い店構えをしていた。


 その店の中には何も残っていない。


 看板を吊り下げていた金属の輪が掛けた。


 大きく傾いた看板は錆から耳障りな金属音を出して、虚しく揺れていた。


 男爵は爵位管轄部に掛け合ったが、答えは良いものではなかった。


 リコルディ男爵の努力も虚しく、ニックの爵位取消を変えることはできなかった。


 そしてニック本人も消えた。

 あれ以来、所在が掴めていなかった。


「人を使って、ずっと君を探していたんだ。すると、あるときこれが見つかってね」


 男爵は応接室の扉を触った。


「何でも没落したお屋敷にあったものだと聞く。クアココット男爵家から出てきたと。私は確信したよ。君の作品だとね。ようやく君にたどり着いたんだ」


 あの扉は売られて、いろんなところに流れ着いたようだ。


 そしてついにリコルディ男爵の手元に回ってきた。

 これだけニックが手掛けた作品を所有する男爵ならすぐに誰の扉か分かるだろう。


「あの家具職人も側近にしていた男ももういない。ここで一緒に住まないか? 部屋は用意してある。好きなだけ家具を作ってくれるだけでいい」


 ここにはニックの家具が溢れている。

 家具職人として作るのは、ニックにとって一番いいのかもしれない。

長かったので、前編と後編に分けました。

バルドはニックの話を聞くにつれて、「やっぱりリコルディ男爵の元側近と意地悪な家具職人は自分たちで懲らしめましょう」と提案するのをなんとか我慢した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆*:.。. 二角ゆうの作品.。.:*☆
総合ポイントの高い順
最新掲載順
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。