第38話・ロアン、いじられる/領民たちがやってくる
「皆さん、人使いが荒いっすよ」
ロアンはこってり絞られていた。
いや、みっちり手伝いをさせられていた。
口数はとても多く、一つ言うと、三つくらい返ってくる。
それでも仕事はきっちり返してくるのだ。
見た目の印象と違うことをアーノルドは伝えると、「使えるものは全部使いますよ。この見た目も必要なら使うだけっすよ」と簡単に言ってのけた。
綺麗に結ってある髪は艶やかに光る。
長いまつ毛に薄灰色の瞳。
それは大自然に囲まれたクアココットでも浮いた存在に思える。
メルリアは使ったことあるのかなと気になった。
周りの視線に意図を汲み取ったのか、「あっ、皆さんひどいなぁ。私はまだそういうことに使ってないですよ!」と少し怖い顔をした。
「だが、変な令嬢には気に入られるなよ」
アーノルドは冗談めいて言っていたはずが、ちゃんと想像してみたようだ。
本気で心配している。
「アーノルド様も若かりし頃、未亡人となった子爵夫人に誘拐されそうになったんですよね?」
アーノルドは反発できずにいる。
心の底から驚いているのか、狼狽えている様子がはっきりと分かった。
顔を真っ赤にしたアーノルドはバルドを睨みつける。
メルリアは開いた口が塞がらなかった。
アーノルド少年はどれほど可愛らしかったのだろうか。
「バルド、それはどこから聞いたんだ!?」
「バルディーニ子爵夫人から聞きました」
「バルド、それはリカルドお兄様だ。俺は軟禁なだけだ」
物騒な言葉が聞こえる。
カイルが固まっている。
慌ててメルリアは間に割って入る。
「どちらも犯罪です!」
「⋯⋯ロアン、お前も気をつけろよ!」
アーノルドは口惜しそうにすると、ロアンに矛先を向けた。
「は、はい! じゃあ顔を髪で少し隠すとかどうですかね?」
ロアンは急いで結った髪を緩める。
曲線を描いた髪がロアンのまつ毛と頬にかかる。
なんだかロアンの背景に薔薇の花弁が舞っているように見える。
「色気が増しただけー!」
メルリアの悲しい叫びが虚しく響いた。
カイルは無言でメルリアの前に立ち、ロアンの色気からメルリアを守ろうとした。
そんなことがありながら一週間が過ぎた。
今日は領民になる人たちがやってくる。
部屋の修繕は予定の五部屋が終わっている。
そうはいっても仮住まいとなるため、家の準備は進めないといけない。
食糧や薪は屋敷の方で準備をして、家ができたら分けることを考えている。
人数が多くなった分、洗濯や畑の開墾、薪割りや料理の下準備などは役割分担しないといけないだろう。
五軒の内、一軒はベルン。
残りの領民も荷馬車でやってきた。
農民の老夫婦。
牧畜をしていた家族。子どももいる。
若い農民の夫婦。
大衆食堂で働いていた兄と服飾店で働いていた未亡人の妹。
どの人もガルドの知り合いのようだ。
畑が駄目になってしまったり、家畜が流されたり、複雑な理由を抱えていたり⋯⋯ガルドからは簡単に事情を聞いている。
特に牧畜をしていた家族には九歳になるアイーダという女の子がいた。
茶色のストレートの髪はさらさらと風になびいている。
元気いっぱいの彼女にメルリアは喜んだ。
「お姉ちゃんができたみたい!」
前世では一人っ子だったので、兄姉や妹弟に興味があるのだ。
カイルのことも家族だと思っていたが、お姉ちゃんは初めて。
メルリアはアイーダに駆け寄ると小さな手で握手した。
「私はメルリアよ。よろしくね」
「可愛い〜! 領主様のところの方ですね! メルリア様、よろしくお願いします」
はつらつとした話し方にすっかり懐いたメルリア。
アイーダの手を引いて、シエル、カイル、アーノルド⋯⋯と順番に紹介する。
特にシエルは朗らかに微笑んでいた。
メルリアは屋敷とその周りを紹介したかったが、荷降ろしがあるようだったので、荷解きが終わってからになった。
まずは屋敷の食堂やキッチン、保管室、談話室、トイレなど共用で使っている部分を案内する。メルリアたちは一階部分を使っている。
もちろん修繕していない空き部屋は一階、二階共にある。
二階は客室を修繕していた。
一時的とは言え、採光のない部屋だと生活しづらいので窓枠に木の観音開き戸をつけている。
カーテンをつけて寒さ対策はしている。
修繕にはベルンも加わったため、簡易的な木枠のベッドも各部屋に入れた。
部屋の広さによって領民を割り振っている。
おそらく身の回りのリネンや服、食器あたりは持ってきていると予想している。
ガルドは荷馬車の中身を説明する。
ベルンとニックから頼まれていた木材と、追加の布などが積まれているらしい。
領民たちが各々の荷物を部屋に運んでいる間にガルドは木材の説明をしている。
家の方に使う木材は未確定のため、修繕に使えそうな木材や、家具にできそうな木材などを注文通りに持ってきていた。
その後、ガルドは皆を談話室に呼び、大きな鞄を持って入ってきた。
「シエルさん、いただいたリボンについてですが、価値がまだ分かりませんので、代わりの品をお持ちいたしました」
皆の視線が鞄に集中する。
ガルドはシエルの方を見た。
「私の家内がかなり興奮していましてね⋯⋯大荷物になりました」
次回の二角的イチオシシーンは
「それは私たちができますよ」
荷解きをしている領民たちが声を聞きつけて談話室の外に集まっていた。
皆⋯⋯それはもう七人ではない。
もっと沢山の人がいて、できることが増えていくのだ。
今は屋敷に住んでいるが、家が出来れば領地で出来ることは増える。
「皆、よろしくね!」
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なんだか、最終回みたいな雰囲気を出しちゃいましたが、まだまだ続きます!(ㆁωㆁ)




