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【連載版】没落貴族に置き去りにされた庶子(幼女)ですが、使用人たちと楽しく屋敷を立て直します  作者: 二角ゆう
第二章・クアココット領 始動〜ニック編

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第36話・初対面のガルドの息子に仮面がすぐに外れるメルリア

「ロアン、よろしくね」


 メルリアは笑みを投げかける。

 その笑みは初対面の作りもの。


 目の前にやってきたロアンはかなりの長身だ。

 柔らかい雰囲気は吟遊詩人のよう。


(この美しさで何人もの女性のハートをグッサグサと刺しまわしているのかしら?)


 女たらしには厳しいメルリアである。

 それにしてもガルドの息子は、ガルドと正反対のようだ。


 ロアンは両手でメルリアの手を固く握った。


「メルリア様の提案した“試食会”は驚愕いたしました! 反響がとてもありましたよ。オランにある三割ほどの大衆食堂の店主を招いて、野菜スティックにマヨネーズをつけて試食してもらったのです。

 しかし、非常に気に入った店主たちからマヨネーズを巡って、暴動が起こるところでした。ご覧ください、野菜の売れた先を示した表です。こちらはマヨネーズが購入できる場合、いくらでどれくらい欲しいかまとめた表になります」


 メルリアは握手と反対の手で頭を押さえた。


 メルリアの仮面の端がめくれた。


 情報量が多すぎる。

 それに変わっている。


 チャラいイケメンなんて決めつけて、よくなかった。


 根っからの商人だ。


 前回別れ際に、メルリアがガルドへ試食してもらいマヨネーズの反応を見てほしいと告げていたのだ。


(この人は私の発想が気に入ったのね。それなら話は別よ。それにこの話の展開の速さ、嫌いじゃないわ! 表にまとめてくるなんて、有能ね!)


「素晴らしいですわ。私は表が大好きです」


 その言葉に電気が灯りそうなほど明るい笑顔だった。


「良かった、それでしたらこの野菜が一番売れたところとマヨネーズの──」


 また見切り発車で爆走をしかけるロアン。


「ちょっと待って。私はまだ何も追いついていないわ」


 その後もメルリアの発言の端々で着火し暴走しそうになる。

 止めてもロアンは話し始めるのだ。


 話を聞いてみると、試食を提案しただけなのだが、なぜか大試食会が開催されていた。

 町の三割の大衆食堂が参加したというのは、異例中の異例だとガルドが教えてくれた。


 それほどまでにロアンには人を集める力があるのだろう。


 それにただの試食で終わらず、持っていってもらった野菜は当日に完売。


 試食会の開催ほどしかなかったマヨネーズ。

 それを次回の購入に繋げてきている。


 それぞれの店主に一瓶の希望価格を調査。

 また欲しい量まで聞いているので、そのアンケート通りの量を用意してもすべて売れる可能性が高い。


 調味ソースというのは一般的に店が各々で作るそうだ。

 砂糖や塩、油などは問屋で買うが、ドレッシングや調味ソースとなると、その店の秘伝となる。


 だが、“このグルドフ製のマヨネーズは、お金を払ってでも欲しい”というのだ。


 グルドフにレシピは聞いていないのだが、マヨネーズと言ったら、卵黄、植物油、マスタードを混ぜてできるはず。

 でもマスタードがなかったら、お酢で代用できそうだ。


「グルドフ、マヨネーズは作れそうかしら?」

「少し時間がかかるかもしれません。ソースを作る材料があまり採れないのです」


「そうなのね」


 たしかマヨネーズは卵と油とマスタードで作ったことがあるわ。

 卵と油はありそうだからマスタードになるものがないのかもしれないわね。


(今度、グルドフに聞いてみよう)


「あの、不躾なお願いで申し訳ありませんが、ロアンをこちらに置いていってもよろしいでしょうか?」


 皆の目が点になった。


 ロアンは真っ先にアーノルドの前に礼儀正しく立った。


「私、体力はありますので、こき使ってください。じゃがいもの皮むきから、野菜の収穫、荷物持ち、洗濯までなんでも手伝いができます。食費や生活費以上の働きをいたします。メルリア様のために!」


 この長髪美形、体力があるらしい。

 体力と言ったら、皆筋力にかけてはかなりある方だとメルリアは思っている。


 この“なんでもやる”体質は好印象だった。

 メルリアがアーノルドをちらりと見ると、“面白い玩具”でも見つけたかのような嬉しそうな顔をしている。


 それにしても一言多い。


「メルリアのためだってさ」


 アーノルドは楽しそうにメルリアの反応を見ている。

 メルリアは頬を膨らませてアーノルドに対抗する。


「私はいいと思いますよ。この資料好きですし」


 ロアンは公園にやってきた子犬のように面白いものを探したくて、しょうがないようだ。


「ロアン、早速グルドフの手伝いをしてもらおうか。グルドフ、なんでも手伝わせろ」


「はい、グルドフさんお願いします!」


「⋯⋯じゃあ早速そこの麻袋持ってくれないか?」


 ロアンは麻袋を持ち上げる。

 重たいのか袋の端は伸びるが、下から持ち上がらない。


「ぐ⋯⋯重たい⋯⋯」


「ロアン、グルドフはその袋を一度に三つは持つぞ。頑張れ」


 ロアンは悲鳴を上げながら、グルドフの後ろを覚束ない足取りでついていった。


 皆は二人を笑顔で見送る。


「それから領民になってもらう人で大工がおりましたので、先に連れてきました。腕は確かです」


 ガルドの後ろから出てきたのは初老の男。

 大柄で体幹がしっかりしている。


 硬い表情で強面。

 “頑固親父”という言葉がピッタリくる。

 

 ニックがその男に近づいてきた。


「ベルン師匠!」


 その言葉にメルリアは目を丸くした。

次回の二角的イチオシシーンは

「アーノルド様、強力な助っ人が現れましたね」

「ニックの師匠ということは、相当な腕の持ち主だろう」


「私の家もベルンさんに建ててもらったんです」

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