第22話・死神の鎌を持った5歳児、なぜか豊穣の女神と呼ばれる
次の日、朝食を取り終わり、支度ができると庭に集まった。
手前にはすぐに収穫して食べることの多い、トマト、胡瓜、えんどう豆。
いくつもの熟したトマトが果柄をしならせている。
先程、朝食を食べたばかりだが、そのハリのあるトマトを堪能したくなる。
「シエル、籠を取ってもらえる?」
「はい、お嬢様」
シエルは籠をメルリアに差し出した。
(二人分だから)
ダナンとタンダにあげる分だった。
上げすぎても、困るだろうから二人で足りる分を渡している。
メルリアにとっては、大きな鋏でトマトのヘタの部分を切る。
グルドフくらいの手の大きさならちょうど良いのかもしれない。
メルリアが一つ取る間にカイルがトマトを籠に二つ入れた。グルドフは三つ。
胡瓜も額の部分を切る。
えんどう豆まで終わると畑の奥に移る。
その奥の畑には玉ねぎ、人参、じゃがいもが続いている。
「グルドフ、人参は次に植えるときに多めにしましょう」
実はアルトが人参を好きなようなので、多めに収穫していた。
だが、子ども三人を乗せても有り余るほど大きいアルトは沢山食べる。
アルトにもお腹いっぱい食べさせてあげたいとメルリアは思っていた。
「えぇ、以前の三倍に増やしましょう」
そして、玉ねぎ、人参、じゃがいもの収穫に移る。
みんな根野菜のため、足元にしゃがむ必要がある。そうすると土で足だけではなく、裾も手も汚れる。
グルドフとカイルからメルリアはやんわりお断りされた。
シエルが優しくメルリアに促す。
「お嬢様、とうもろこしを採りましょう」
「そうね」
少し場所を離すと、とうもろこしが植わっている。
実ったとうもろこしを上から少し反動をつけて下に動かす。
パキッと乾いたいい音を立ててとうもろこしが採れた。
メルリアはとうもろこしを二本抱くと腕がいっぱいになってしまう。
葉の縁は少し鋭いので手や腕を切らないように気をつける。
「採れたてのとうもろこしはそのまま食べれるんですよ」
グルドフたちがやってきた。
「そうなんだ」
メルリアは期待の目をとうもろこしに向ける。
何枚か向けた緑の葉からぷりぷりとした肉厚の粒がぎゅうぎゅうに実っている。
「メルリア様、目が食べたいと仰っていますよ」
朗らかに笑いながらカイルが伝えてくる。
メルリアは恥ずかしさから、咳払いをした。
とうもろこしの外側の葉を何枚か外していくと、若葉色の細いひげが張り付いている。
それを丁寧に取っていくと、どの粒も張っている美味しそうなとうもろこしが姿を現した。
少し齧ってみると、想像以上の水分が口の中へと入ってくる。
とうもろこしの甘い汁に歯触りのよい粒が弾ける食感がなんとも言えない。
「すごく甘くて美味しいわ」
そんなメルリアを見た皆もとうもろこしを齧りつき始めた。
遠慮がちに最後に食べ始めたのはカイルだった。
「美味しいね」
「⋯⋯はい」
カイルは少し照れているようにメルリアから目を背けた。
(最近、カイルは照れ屋さんなのよね)
それが終わるとついに“あれ”が登場した。
* * *
三日月のように細い金属。
まるで死神が持っているような“あれ”。
「これは、鎌?」
「そうです、小麦の収穫は鎌で取って、端を縛って束を作ります」
メルリアの前世では牧畜の家で育った。
近所の米農家には、その時期になると支援しに行っていた。
そう入っても、トラクターで収穫していたが、やり方自体は覚えていた。
五歳のメルリアに鎌で切れる量は微々たるものだったが、麦を掴む手は馴染んでいる。
茶色く乾燥した麦畑。
いくつかを手で握るとガサガサと乾燥した感触が伝わる。
ザックザックと茎が切断される音とともに、麦を刈り取っていく。
その様子は誰が見ても手際が良い。
その様子をちらちらと横目に作業を進めるグルドフとシエルとカイル。
「豊穣の女神ね」
シエルが呟いた。
「女神だから、お嬢様は身体にそういった技術が染み付いているんですね」
グルドフも賛同した。
「豊穣の女神⋯⋯」
カイルが呟いたところで、恥ずかしさは頂点に達した。
「ち、違うわ! 女神じゃないもん」
「ウォフ」
え、犬の声?
振り返ると、なぜかニックとタンダとアルトがいた。
そこへ、ニックがタンダとアルトを畑に案内したところだった。
メルリアの言葉にならない叫びが畑中に響いた。
* * *
メルリアは麦を束にしていた。
刈り取るよりも束にする方が役に立つと考えたからだ。
ニックとタンダも加わり、総出で刈り取っていく。
アルトはその周りをウロウロと歩いているだけ。
それでもメルリアの大いなる癒しになっていた。
「終わったら、もふもふしたーい!」
ニックは刈り取り作業から先に抜けて、木の柱を組んでいる。
今日はいい天気なので、外に干しておきます。
「今日はここまで?」
麦の束をもったグルドフは組み上がった木の干し台に束を置いていく。
小さな茅葺き屋根のように木の干し台に沢山かかった麦はカサカサと乾いた音を立てている。
橙色の光が差し込んできた頃、涼しい風が吹いてきた。
「くしゅっ」
メルリアにとっては少し肌寒かった。
(風が肌寒くなってきたわ。もう秋なのね)
前からアルトが近づいてきた。
「アルト〜!」
「ウォフ!」
メルリアはご褒美を言わんばかりに、毛足の長いアルトの身体に埋もれる。アルトのお腹の毛を指で押してみると、密度の濃い毛に包まれた。
(ふわふわがたまらな〜い! ⋯⋯温かくていつまでもいたい)
もふもふに心を強く癒されたメルリアは、牛の仲間入り前に羊がいいかもと少し思い始めていた。
次回の二角的イチオシシーンは
アーノルドはわざとらしく肩を落とすと「俺に足りないのは筋肉か!」と主張するので、メルリアはえんどう豆と牛乳を勧めた。
植物性タンパク質と動物製のタンパク質の両方が取れるので、良質なプロテインだろうとメルリアは思った。
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すみませんm(__)m他にもいろんなシーンがあったんですが、ネタバレになりそうなところばかりでしたので、プロテインで勘弁してください(。ノω\。)(笑)




