第21話・野菜でいっぱい
アーノルドが自分の屋敷に戻っている頃、メルリアたちには問題が起きていた。
「ニック、新しい穀物庫を作ってくれないか?」
グルドフからの依頼だった。
難しい顔をするニックをグルドフは穀物庫庫まで連れて行く。
ニックはきまり悪そうな顔に変わった。
メルリアとカイルはその横から穀物庫の中を覗いた。
「野菜でいっぱい」
「落ちてきそうですね」
収穫した野菜や小麦をとにかく詰めた結果、いっぱいになった。
屋敷の中の保存室はすぐに使う少量とピクルスなどが入っている保存用の瓶で隙間がないようだ。
「そしたら前回諦めた古い穀物庫を修理でもいいか?」
「大丈夫だ、すぐにできると助かる」
ニックは苦虫を噛み潰したような顔をした。
メルリアは初耳だった。
ニックについて行くとキッチン近くの裏口からいつもと反対方向に向かう。
草が伸びているところを少し歩いていくと、古い建物が見えた。
建物の周りを背の高い雑草が囲んでいた。
その草をかき分けて、近くで見ると小屋の下には石の足があった。
「石で底上げしているのね」
「はい、ネズミや虫が来ないよう、小屋を高くしています」
その時メルリアは、はっと気がついた。
(ネズミや虫除けって、前世の世界史の教科書で見た高床式倉庫ってやつかしら)
梯子を担いできたニックは屋根を確認した。
「良かった。屋根は大丈夫そうですね」
メルリアは心の中で盛大に両手を上げて喜んだ。
屋敷の屋根の修繕は大変そうだった。
いつも元気なニックも何度かため息混じりの息を吐いていた。それでも穏やかな笑みを浮かべている。
そして穀物庫に入った。
古い藁の欠片など、床は埃っぽい。
ニックは扉を閉めて、中を歩いているようだ。
メルリアたちは外で待っていたが、時折、木がみしりと軋む音が中から聞こえる。
その度にメルリアはカイルと顔を見合わせた。
ようやくニックが扉を開けると、修繕が必要なところを教えてくれる。
穀物庫の床板の一部と壁の穴。
「ニック、私たちも手伝うわ」
メルリアたちは手燭を壁の穴の方へ近づけた。
そこへニックが手際よく釘を打ちつけた。
コンコンと乾いた金槌の音が響く。
「ねえニック、この後は何をするの?」
床板を直した後は、野菜や小麦を置く木箱が必要となるようだった。
ニックが床板を直し終わったところで、お昼となった。
お昼にはパンに目玉焼きとトマト、お皿の上には胡瓜のピクルス、それから──。
「お嬢様のリクエストでマッシュポテトをつけました」
マッシュポテトには粗挽き胡椒⋯⋯と言いたいところだが、この屋敷にはない。
牛乳で少しのばして、塩で味をつけてある。
ホクホクとしたじゃがいもにほんのり甘い牛乳の香りが広がり、塩味が全体的な味をまとめている。
そしてすぐに胡瓜のピクルスを口にする。
ツンとした酸味でじゅわっと涎が溢れる。
コリコリとした歯切れのよい食感と共に口の中で味わう。
ひとしきりメルリアは昼食を楽しんだ後、午後の予定を決めることにした。
食物保存庫の整理、そして畑で収穫をして修繕したばかりの食物保存庫に野菜と小麦をしまうことにした。
根野菜以外はそのまま保存は難しい。
シエルが何かを抱えて食堂に入ってきた。
メルリアが何か分かる前に、ニックが嬉しそうに声を上げた。
「さすがシエル!」
「麻布を用意しておいたわ」
ゴワゴワと硬い繊維で作られた袋。
通気性も良く保存に便利とのことでよく使われるようだ。
「これだけあれば整理と保存が楽になるな」
ニックは跳ねるような声を出した。
それにしても袋が沢山ある。
メルリアはそんなに使うのかなと不思議に思っていたが、すぐに解決されることになる。
一代目穀物庫を開けた皆は乱雑に積まれた野菜を種類ごとに分け始めた。
そしてそれぞれを麻袋に入れていく。
じゃがいもが入った麻袋を見て、メルリアは前世の既視感を覚えた。
(たしか、根野菜はこんな感じで保存していた気がするわ。皆やっている方法だったのね!)
棚には麻袋が置かれ、野菜の行き先が決まった。
すると野菜で溢れていた穀物庫に隙間ができた。そう入っても人が二人くらい入れるだけなので、野菜を取りに来た人が立って作業が出来るくらいだった。
その一代目穀物庫の中をまじまじと見ている。
「修繕した穀物庫の中はどうしますか?」
一代目穀物庫のように棚が置いてある。
シエルが用意してくれた麻袋にじゃがいも、人参など、種類ごとに分けて入れてある。
メルリアは口を尖らせて思案していた。
「これから冬に向けて、できるだけ多くの野菜や小麦を作って収穫するのよね。小麦とか、一つの種類を沢山置けるほうがいいんじゃないかしら」
小麦を粉にして、パンを作る。
主食として必要なので、一番量が多くなるだろう。
「そうしたら、いっそ木箱に小麦は入れてしまいましょう」
屋敷の保存室の麻袋、外の穀物庫の麻袋、木箱の順に使えば問題ない。
ニックが木箱を作ってくれることになった。
「お嬢様、もうそろそろ野菜と小麦が実る頃です。そしたら収穫しますか?」
「いいわね! 沢山できてたらアーノルド様に自慢しちゃうわ」
すでに得意満面のメルリアだった。
メルリアを見たニック、グルドフ、カイル、シエルから微笑ましい笑いが起こったのだった。
次回の二角的イチオシシーンは
とうもろこしの外側の葉を何枚か外していくと、若葉色の細いひげが張り付いている。
それを丁寧に取っていくと、どの粒も張っている美味しそうなとうもろこしが姿を現した。
少し齧ってみると、想像以上の水分が口の中に入ってくる。
とうもろこしの甘い汁に歯触りのよい粒が弾ける食感がなんとも言えない。
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やっぱり食レポか!(笑)




