第14話・屋根の次は窓と床!? ボロ屋敷の修繕はまだまだ終わりません
何事も準備が八割』とはよく言ったものだ。
まさか、その言葉をこんなところで思い知ることになるなんて、メルリアは考えてもいなかった。
朝から木に金属が打ち付けられる規則的な音がする。
ニックが仮止めを外して位置を再度確認しながら、釘を打ちつけていく。
メルリアの視線に気が付いたニックは注意する。
「お嬢様、板を打ちつけると部屋が真っ暗になりますから気をつけてくださいね」
暗くなった部屋では、ニックの足元にある手燭の炎だけが周りを明るくする。
その部屋が終わるとニックが部屋の出口まで歩いてきた。
「ニック、他の部屋も暗くするの?」
「するにはするんですが⋯⋯」
ニックが物置に行くというのでついていく。今日は朝からカイルに手を握られている。
ニックの修繕を見ると言ったら、カイルがついてきた。
窓を塞ぐと見えなくなるのに、暗い部屋で二回も躓いたらカイルに手を握られてしまった。
メルリアはカイルの手を解く言い訳を、今のところ見つけられていない。
物置に行くとニックが板を選んでいる。
平たい大きなものを見ている。
「この物置には本当にいろんなものがあって便利ね」
「私が作りましたからね」
「ニックが作ったの?」
意外な言葉にオウム返しするメルリア。
「元男爵殿は修繕に興味がなかったんです。だから予算を割り当ててくれませんでした。仕方ないので、近くの木を切って物置を作って保管していました」
メルリアはニックの言葉を聞きながら、辺りを見回した。
綺麗な木材がたくさん並んでいるなと思っていたが、ニックが全部作ったとは思ってもみなかった。
「すごいわ、ニック」
アーノルドがニックに軽口を叩いて信頼する理由が少しだけ分かった気がした。
「ニック、床用の板はあったか?」
物置にアーノルドが顔を出した。
「旦那、こっちの板はどうでしょうか?」
ニックはアーノルドを手招きした。
アーノルドは板に触れる。
「綺麗な板だな。表面が滑らかだ」
アーノルドはニックが作ったものだとは知らないのかもしれない。
ニックは緩んだ顔を手で隠したのをメルリアは見逃さなかった。
おそらくニックは嬉しいはずだ。
メルリアはニックに向かって笑顔を投げかけた。
それにしても──。
屋根は応急処置。
窓は枠にはめ込むクリスタルが高価なため、板で塞ぐ。
床はどうなのだろうか。
元父の部屋以外は、早急に変える必要はないとのこと。
他の部屋はニックが歩いて確認し、怪しいところは金槌で叩いたようだ。
そうなると元父の部屋に、また皆は集まった。
なぜだか分からないがこの部屋だけは問題だらけなのだ。
昨晩、アーノルドが踏み抜いた床から遠い床を、ニックは金槌で床を優しく叩き始めた。
コンコンと乾いた板の音がする。
すべての床をしっかり確認すると、アーノルドが踏み抜いた床の隣も念のため変えることになった。
床板を剥がすと、大引きの太い木材に十字を書くように根太が乗っかっている。
ニックは根太も金槌で確認した。
規則的な乾いた音がしている。
ゴッ──。
金槌の先が少しめり込むような鈍い音がした。
めり込んだ根太と同じようにニックも顔を歪める。
周りの根太を調べる。
「一本で済んだな」
「⋯⋯はい」
青ざめたニックは手で顔を撫でた。
息を長く吐いている。
結果的に床板を三枚と根太を一本変えることになった。
その様子を部屋の外からメルリアたちは眺めていた。
「アーノルド様もニックもすごいわよね。こんなことができるなんて」
メルリアは思ったことをそのまま口にしてみた。
「たぶんですが、それもこれもメルリア様に喜んでほしくてやっているんですよ」
メルリアは目が点になった。
「なんで?」
「なんでと言われましても、皆そうなんです」
メルリアは難しい顔をして、唸りながら考えたが、カイルの言葉は分からなかった。
(私のためなんて言いすぎじゃないのかしら)
夕方には床の修繕が終わった。
食堂で夕食を食べている時、アーノルドから意外な提案をされた。
「メルリア、明日は屋敷の周りを散策するか?」
メルリアはパンを飲み込むと、賛同する。
「お散歩良いですね」
「散歩というよりは、領地を見てみようと思って」
メルリアは持っていたスプーンの手を止めた。
「はい」
この時、メルリアは全く分かっていなかった。そしてとんでもないことが起こることを知らなかった。
次回の二角的イチオシシーンは
「もしかして敷地って屋敷の周りだけじゃないのですか?」
「地図がないから分からないが、確かあの森の奥までクアココット領だ」




