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【連載版】没落貴族に置き去りにされた庶子(幼女)ですが、使用人たちと楽しく屋敷を立て直します  作者: 二角ゆう
第一章・メルリア 決意編

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第12話・やっぱりこの屋敷、ぶち壊そう

 屋根が直ったと思ったら、今度は屋敷が人を食べた。

もちろん、本当に食べたわけではない。



 メルリアは夕食を食べているとふと気がついた。


「最近、屋敷が快適になったと思うの。屋根もついたし、涼しい風が屋敷にも吹いているみたいなのよね」


 メルリアはグルドフの作ったコーンたっぷりのポトフを口に運ぶ。

 屋敷は屋根が修繕されてようやく落ち着いた生活が始まった⋯⋯はずなのに。

 アーノルドの様子がおかしい。


「それは隙間風があるってことじゃないか?」


「なるほど、アーノルド様、鋭いです!」


 皆が食べ終わると、シエルは手燭《しゅしょく》を用意した。


 手燭に刺さる蝋燭の炎は食堂でも元気に揺れている。


 誰も何も言わなかったが、自然と二階へ向かう。


 階段から一番近い部屋はもちろん元父の部屋だ。


 アーノルドは入ると窓に真っ先に向かった。

 アーノルドは窓のそばまでやってくると、大きく頭を下げた。

 良くない予想が的中したようだ。


「あー⋯⋯アーノルド様?」


 メルリアはアーノルドに一応、声をかける。


「俺としたことが気が付かなかったなんて⋯⋯」


 窓には金属でてきた細い枠がありその中にガラスがはまっていた。


 中には何箇所も金属の枠だけでガラスがはまっていないところが多い。

 もちろんカーテンもなし。


 他の部屋で割れていないガラスが残っているのは二箇所だけだった。


 二階部分は相当ひどいようだ。


「なぜこの屋敷の窓の金属の枠に穴が空いているんだ?」


「この前、風はひどかったですしね」


「あんな風で取れるくらいなら、ストームが来たら吹き飛ぶぞ!」


(たぶん、吹き飛ぶと思う)


 メルリアの目が座っている。

 他の人を見ると、同じような顔をしている気がした。


「でもアーノルド様、ガラスってお高いんでしょう?」


 昔のガラスは高かったと聞く、前世の記憶だけど。


「何言っているんだ? はめるなら水晶《クリスタル》だろう」


 かろうじて割れていないところにはまっていたのは、ガラスではなくクリスタルがはまっていたということか。


 この世界にはガラスの存在はないようだ。


 メルリアはクリスタルと聞いただけでも、あまりにも高価なものだと感じた。


 結局、板を打ち付けて、窓を塞いだ。


 でもキッチンでは外が見えていたはずなのに⋯⋯もしかしてクリスタルがはめ込まれていないものなのか。


「夜なんで仮止めしますよ」


 ニックの疲れた声がした。


 アーノルドとニックは板に釘を打って隙間を埋めることにした。


 そしてアーノルドが端を通って、外の物置へと向かう。


 ミシッ──!


 すると鋭利な亀裂音。


「ぐわぁっ!!」

 アーノルドの悲鳴。


 さらに木が割れる音がいくつも重なる。


 アーノルドの片足は床に飲み込まれた。


 膝から下が消えた。


 メルリアは何が起こっているのか頭が追いつかなかった。


「アーノルド様!!」


 端を歩いていたはずなのに⋯⋯木が割れて⋯⋯床が落ちた。

 少しばかりの静寂が、気まずさを助長する。


「あ、昨日の雨漏りが原因ですね」


 ニックは冷静に思い出してアーノルドに告げる。


 元父の部屋は被害が一番大きく、下の階まで雨漏りしていたことを思い出した。


 アーノルドは床に挟まったまま、悔しそうに拳で床を叩く。


「やっぱりこの屋敷、ぶち壊そう」


 肩を上下させて怒っているアーノルド。


(このままだと、アーノルド様のお屋敷に連れていかれちゃうわ)


 メルリアは無理やり笑顔を作ってアーノルドに近寄った。


「だ、大丈夫ですよ。皆で修繕しましょう!」


 もちろん次の日に屋敷のさらなる修繕が決まった。


 窓と床である。


「旦那、明日床の様子は見てみます」


 いつからかニックのアーノルドに対する呼び方が変わっていた。

 屋根の一件で仲良くなったのだろうかとメルリアは思った。


「あぁ、床だけでなく、屋敷全体の確認を頼む」


 ニックとグルドフはアーノルドを引っ張り上げて床から助けた。


「ニック、グルドフ、助かった。まさか、床が抜ける屋敷だなんて⋯⋯はぁ、俺は疲れたから寝る」


 アーノルドはおぼつかない足取りで部屋から出ていった。


 メルリアはそれを見て焦った。


(さすがに明日起きたら馬車の中だったら⋯⋯なんてことはないわよね?)


 アーノルドは絶対に怒っている。

 メルリアはなんとか回避する方法を捻り出そうとしていた。


(退路断たれりゃ、なんのそのよ)


 メルリアはあることを思いついた。

 朝にあることを実行しようと心に決めた。


 メルリアはグルドフの側に行くと、袖を引っ張り、小声で『グルドフ、あのね』と話始めたのだった。

【補足〜ガラスについて】

窓ガラスに使うような大きくて平たいガラスが大量生産され始めたのは、この時代よりも後になります。

この頃のガラスはあまり質が良くなく、向こう側が見えない・ぼやけるようなものだったそうです。また大きなものが作れない。

大聖堂などで見かけるステンドグラスは、そういった時代背景があったからかなぁなんて思うとまた違って見えますよね。

こちらの世界では窓にガラスを使うことはないようです。

その代わりに使われたのが水晶。

もう少し近代で見てみると、実際に眼鏡は水晶で作られていたものもあります。

おそらく現代の窓ガラスのように一枚では難しいとおもいますので、ステンドグラス同様に金属の細かい枠があってそこに水晶がはめ込まれているのでしょう。

メルリアが感じたように、水晶もおそらく“お高いんでしょう”ね、


次回の二角的イチオシシーンは

今日のメルリアの朝は早い。

外か暗いうちに、ベッドを下りる。

眠たい頭をもたげながらキッチンへと向かう。

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すきま風の原因は窓でしたか〜! それに床も! アーノルド怒る!! やばい! でも少しずつみんなとも仲良くなっていってるおかげもあって、怒りはおさまったかな? 窓はガラスでなくてクリスタルなんですね…
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