第42話 現在の影との対峙と、“自分のための選択”
総集編もあるので、テンポよく読みたいかたはそちらがおすすめです。
現在の影が歩み寄るたび、
世界がわずかに揺れた。
それは敵意ではなく――
揺らぎそのものだった。
恒一の“今”の迷いが形になった存在。
だからこそ、
その一歩一歩が恒一の胸に重く響く。
「つなぎ手。
おまえは過去を救い、未来を語った。
だが――
“今の自分”を選んだことはない。」
現在の影の声は、
恒一自身の声と同じ響きを持ちながら、
どこか冷たかった。
リオが叫ぶ。
「恒一さんは……
いつだって俺たちのために選んでくれた!
それの何が悪いんだよ!」
現在の影は首を振る。
「悪くはない。
だが“自分のために選ばない”者は、
いつか自分を見失う。」
影が低く呟く。
「……確かに……
恒一はいつも誰かのために選んでた……
でもそれは……
お前が優しいからだろ……!」
ナギは静かに言った。
「優しさは力になる。
でも……
“自分を犠牲にする優しさ”は、
いつか壊れてしまう。」
エイルは涙を浮かべながら続ける。
「恒一さん……
あなたが“あなた自身のために選ぶ今”を……
私は見たい……!」
残響は静かに頷いた。
「恒一。
お前は“終わりを抱えて進む”と言った。
なら――
“今を抱えて進む”こともできるはずだ。」
◆現在の影の問い
現在の影は恒一の目の前に立ち、
静かに問いかけた。
「つなぎ手。
おまえは――
今、何を望む?
誰のためでもなく。
世界のためでもなく。
おまえ自身のために。」
恒一は息を呑んだ。
自分のために望むこと。
それは、
これまで考えたことがなかった問いだった。
少女を助けたのも、
影を救ったのも、
ナギに名前を与えたのも、
未来を選ぼうとしたのも――
全部、誰かのため。
自分のために選んだことは、
ほとんどなかった。
胸の奥が痛む。
だがその痛みは、
“今の自分”が確かに存在している証だった。
◆恒一の答え
恒一はゆっくりと顔を上げた。
「……俺は……
“進みたい”。
誰かのためじゃなくて――
俺自身が、進みたい。」
現在の影の瞳が揺れた。
「進みたい……?
それが、おまえの“今”か。」
「そうだ。
俺は……
この物語を最後まで見たい。
影と、リオと、エイルと、ナギと、残響と――
みんなと一緒に進みたい。
それが……
俺の“今”だ。」
その瞬間、
現在の影の身体が光に包まれた。
黒い線がほどけ、
影の輪郭が揺らぎ、
やがて――
穏やかな表情へと変わっていく。
「……そうか……
それが……
おまえの“今”か……」
現在の影は微笑んだ。
「ならば――
未来を選ぶ資格は、おまえにある。」
光が弾け、
現在の影は静かに消えていった。
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