第25話 未完の終わりと、つなぎ手の選択の扉
総集編もあるので、テンポよく読みたいかたはそちらがおすすめです。
影の本体が広げた闇の中から、
無数の“物語の声”が押し寄せた。
――助けて
――続きを
――終わらせて
――どうして
――ここで止まったの
――まだ言えてない
――まだ届いてない
――まだ終わってない
その声の奔流に飲み込まれ、
恒一の視界は白く染まった。
次の瞬間――
恒一は“ひとつの光景”の前に立っていた。
◆もうひとつの終わり
そこは、見覚えのある病室だった。
白い壁。
消毒液の匂い。
静まり返った空気。
ベッドの上には――
自分自身が横たわっていた。
心電図は、
ゆっくりと、しかし確実に弱まっている。
「……これ……俺の……?」
恒一は息を呑んだ。
影の声が響く。
――そうだ。
――これは“おまえのもうひとつの終わり”。
――少女を助けたあと、
――病院で息を引き取った未来。
「そんな未来……あったのか……」
影は静かに囁く。
――つなぎ手は“終わりを抱えた存在”。
――おまえの終わりはひとつではない。
――無数に分岐し、無数に存在する。
恒一はベッドの自分を見つめた。
その顔は穏やかで、
どこか満足しているようにも見えた。
「……この俺は……後悔してないのか?」
影は答えない。
だが、病室の空気が静かに語っていた。
――この終わりは“救い”だったのだと。
◆影の本体の問い
影の本体の声が、
病室全体に響き渡る。
――つなぎ手よ。
――おまえは“終わりを抱えて進む”と言った。
――ならば問おう。
影の声は、
恒一の心の奥底を抉るように響いた。
――おまえは“どの終わり”を抱えて進む?
「……どの終わり……?」
影は続ける。
――病室で静かに終わったおまえ。
――少女を救って死んだおまえ。
――誰も救えず生き残ったおまえ。
――つなぎ手として消えたおまえ。
――物語の外へ消えたおまえ。
影の声が重く響く。
――おまえは“どの終わり”を背負って進む?
恒一は言葉を失った。
◆残響の介入
そのとき、
病室の扉が開き、残響が入ってきた。
「恒一。
影の問いに答える必要はない」
「……残響……?」
残響はベッドの恒一を見つめ、
静かに言った。
「終わりは“選ぶもの”じゃない。
抱えるものだ。
どれかひとつを選ぶ必要なんてない」
影の本体が揺れる。
――選ばねば……
――終わりは定まらぬ……
「定めなくていいんだよ」
残響は影を睨んだ。
「恒一は“全部の終わり”を抱えて進む。
それが“第四の終わり”だ」
影の本体が震えた。
――全部……抱える……?
――そんなこと……できるはずが……
「できるさ」
残響は微笑んだ。
「だって俺たちは“恒一”だからな」
◆つなぎ手の決意
恒一はベッドの自分に近づき、
そっと手を伸ばした。
その手は触れられない。
だが、確かに“そこにある”。
「……俺は……全部抱えるよ」
影の本体が揺れる。
――全部……?
「助けた俺も、助けなかった俺も。
死んだ俺も、生き残った俺も。
つなぎ手として終わった俺も。
全部、俺だ」
恒一は影を見据えた。
「だから――
俺は終わらない。
終わりを抱えて進む。
それが俺の“第四の終わり”だ」
影の本体は震え、
空間が大きく揺れた。
――つなぎ手よ……
――おまえは……
――我らの“終わり”を……
――どうする……?
恒一は静かに答えた。
「お前たちの終わりも――
俺が抱えて進む」
◆影の本体の崩壊
影の本体は、
まるで泣いているように震えた。
――そんな……終わり方……
――聞いたことがない……
「だから新しいんだよ」
残響が言った。
「“第四の終わり”は、
お前たち影にも救いを与える終わりだ」
影の本体はゆっくりと崩れ始めた。
闇が光に変わり、
無数の声が静かに消えていく。
――つなぎ手よ……
――ありがとう……
影の本体は、
光の粒となって消えた。
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