第23話 物語の底へ――影の手が導く場所
総集編もあるので、テンポよく読みたいかたはそちらがおすすめです。
地面に開いた黒い穴から、
無数の“影の手”が伸びてきた。
細く、長く、冷たく、
触れたものの物語を奪うような手。
リオが聖剣を構える。
「くっ……! これ、全部影の本体に繋がってるのか……!」
エイルは震える声で言った。
「はい……
“物語の底”が開き始めています……
影の本体が、恒一さんを呼んでいるのです……」
恒一は影の手を見つめ、
その奥に広がる深い闇を感じ取った。
――来い。
――つなぎ手よ。
――おまえの“終わり”を選べ。
影の声が、闇の底から響いてくる。
◆影の手が示す道
影の手は恒一に触れようとはせず、
まるで“道案内”のように、
闇の奥へと伸びていく。
「……攻撃してこない?」
リオが眉をひそめる。
エイルは静かに首を振った。
「影の本体は……恒一さんを“迎えに来ている”のです。
あなたの終わりを奪うために」
「迎えに……?」
「はい。
影はあなたの“終わり”を喰らうことで、
自分たちの物語を終わらせようとしているのです」
恒一は拳を握った。
「……終わりたいのか、影は」
「終わりたいのです。
でも、終われない。
だから“終わりを抱えた者”を求める」
影の手が、さらに深く闇を指し示す。
――来い。
――つなぎ手よ。
――おまえの終わりは、ここにある。
◆物語の底への降下
恒一は一歩、闇へ近づいた。
「恒一さん……!」
リオが慌てて腕を掴む。
「行くつもりですか!?
影の本体がいるんですよ!?
戻って来られないかもしれないんですよ!!」
恒一は微笑んだ。
「戻るよ。
お前たちがいるから」
リオは言葉を失った。
エイルがそっと恒一の手を握る。
「恒一さん。
“物語の底”は……
あなたの心の底でもあります」
「俺の……心の底……?」
「はい。
影の本体は、あなたの“終わり”だけでなく、
あなたの“恐れ”や“後悔”にも触れようとするでしょう」
恒一は深く息を吸った。
「……それでも行く。
俺は影と向き合わなきゃいけない」
リオが叫ぶ。
「俺も行きます!!
恒一さんをひとりで行かせるなんて、絶対にしない!!」
エイルも頷く。
「私も……あなたの物語を見届けます」
恒一は二人を見つめ、
ゆっくりと頷いた。
「……ありがとう。
じゃあ、行こう。
物語の底へ」
三人は影の手が示す闇へと足を踏み入れた。
◆物語の底
闇の中は、
音も、光も、時間も存在しない空間だった。
ただ、無数の“物語の断片”が漂っている。
破れたページ。
途切れたセリフ。
未完の絵。
終わらなかった戦い。
始まらなかった恋。
リオが息を呑む。
「これ……全部、誰かの物語……?」
エイルは静かに頷いた。
「はい。
“終わりを迎えられなかった物語”が、
すべてここに流れ着くのです」
恒一は胸が締めつけられた。
「……影は、これを全部背負ってるのか」
「だから影は苦しんでいるのです。
終わりを求めて……
でも終われなくて……」
そのとき――
闇の奥から巨大な気配が近づいてきた。
影の手が一斉に震え、
空間が歪む。
――来たな。
――つなぎ手よ。
闇の奥から現れたのは、
巨大な“影の塊”だった。
人の形をしているようで、
していない。
無数の物語の断片が貼り付いた、
“終わりの集合体”。
影の本体。
◆影の本体の言葉
影の本体は、
恒一を見下ろしながら囁いた。
――つなぎ手よ。
――おまえは“始まり”を越えた。
――ならば次は……
――“終わり”を選べ。
「……選ばない。
俺はまだ終わらない」
影は笑った。
――選ばねばならぬ。
――つなぎ手の終わりは、
――世界の終わりに繋がる。
「世界の……終わり……?」
影はゆっくりと手を伸ばした。
――おまえが終われば、
――世界は“終わりを迎えられる”。
――それが我らの願い。
恒一は影を睨みつけた。
「……俺の終わりで、世界を終わらせる気か」
影は頷いた。
――そうだ。
――おまえの終わりは、
――世界の終わりの“鍵”なのだ。
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